CAEでは、設計寸法や物性値について、複数の水準を計算するパラメトリックスタディ(パラスタ)を行うことが非常に多いです。
今回は、ANSYS workbenchとANSYS Fluentを用いて、多孔質体の粘性抵抗の複数水準を計算してみました。
計算の概要

粘性抵抗を持つ多孔質体にガスを流します。
多孔質体はスポンジのような構造で、その構造によってガスの流れにくさ(粘性抵抗)が異なります。

今回のモデルは、入力変数に粘性抵抗、出力変数として圧力損失を求めます。
入力変数である粘性抵抗を3水準振って、それぞれの圧力損失を計算をしてみます。
WorkbenchでFluentファイルを読み込む

workbenchのコンポーネントシステムから「Fluent」を選択、プロジェクト概念図にドラッグアンドドロップします。
セットアップを右クリックし、データを参照します。

ANSYS Fluentで多孔質体を含む流体計算をしてみるで計算したFluentファイルを読み込みます。

Data Interpolation option is enabled for the Fluent Workbench system. Would you like to create the interpolation file now? If you choose No, the IP file will be created the next time the solution is updated.
ワーニングが表示されますが、「はい」を選択します。
Fluentでパラメータを設定する

セットアップを右クリックし、編集を押下します。
Fluentを起動し、パラメータを選択します。

Selecting Edit from Setup cell loads mesh and settings and not the current case/data files or the initial data file. If you want to load current or initial data files, select Edit from the Solution cell instead. Do you want to continue editing? MDon’t show this message again
またワーニングが出ますが、無視して進みます。

Fluentを起動します。

多孔質体である「porus」をダブルクリックします。

「多孔質ゾーン」タブの、粘性抵抗の入力にて、New Input Parameterを選択します。

パラメータの式の名前を「porous_resist」とします。
ここで作成したパラメータは、workbenchで値を変更できます。

同じパラメータをすべての方向の粘性抵抗に対して定義します。

「適用」を押下して閉じます。
計算実行

初期化画面にて初期化します。
計算作業>計算実行

反復回数を指定し、計算を実行します。
パラスタをする前に、基準となる条件で計算が流れるかを確認しておきます。

計算が終了したら、目的変数のパラメータを指定しておきます。
inletの平均圧力のレポートを作成し、「出力パラメータを保存」を押下します。

出力パラメータの名称は「inlet_pressure」とします。
圧力損失(inletとoutletの圧力差)を求めることが目的ですが、今回はoutletが相対圧力0Paとして定義されていますので、inletの圧力を求めることが圧力損失を求めることと同義となります。

一通り設定が終わりましたので、Fluentを閉じます。
ワーニングが出ますので、
Use settings changes for current and future calculations
を選択します。
パラスタ水準の決定

workbenchの画面に戻ると、パラメータセットが追加されています。
パラメータセットをダブルクリックします。

パラメータセットタブの右側「テーブル設計ポイント」に、計算したいパラメータを入力します。
今回は、粘性抵抗に1e+10, 2e+10, 3e+10 を入力します。
⚡マークの部分は計算が完了していないものです。
これらをすべて実行します。

プロジェクト概念図に戻り、「すべての設計ポイントを更新」を押下します。
⚡マークがついていた設計案が全て計算さ、パラスタが実行できます。
このまま放置しましょう。

「施行状況を非表示」をクリックすると、計算の進捗状況を確認できます。

全てのパラスタが完了すると、進捗ゲージが満タンになります。

途中経過を確認しましょう。
計算実行されたものから、アウトプットの「inlet_puressure」が埋まっていきます。
結果の確認

計算が完了しました。
粘性抵抗と、圧力損失の関係をエクセルでグラフを描いて可視化しました。

今回の構造では、粘性抵抗と圧力損失が線形の関係にあることがわかりました。
粘性抵抗が2倍になると、圧力損失も約2倍になっています。
このように、パラスタを自動化することで、複数水準を計算することに抵抗がなくなり、業務効率も改善します。
また、自動で複数水準を計算してデータを貯めておくことは、今後AI活用の時代においても必須のスキルとなると思います。
2回以上同じ計算をする場合は自動化してしまう、という意気込みで自動化を進めていくと良いと思います。
Images used courtesy of ANSYS, Inc.
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