NIOが採用する中国WeLionの固体電池の実力と構成は?

車載電池

Beijing WeLion New Energy Technology(WeLion)は、中国に拠点を置く電池技術企業です。WeLionは、中国の新興EV企業NIOと共に、固体電池(実際は半固体電池)を開発していることで知られており、注目を集めています。

この記事では、WeLionが開発する半固体電池について紹介します。

WeLionの半固体電池

NIOが搭載するWeLionの電池

NIOは、WeLionと共に「固体電池」を開発していると知られています。ただ、その内容は全固体電池と呼べるものではなく、「半固体」電池に近いものです。

電解質の名称が意味するところ

NIO DAY 2021より、半固体電池の発表情報

Welionの全固体電池で最も注目すべきなのが電解質材料です。

2021年にNIOの固体電池のお披露目では、電解質について「in-situ solidification hybrid electrolyte(in-situ固化ハイブリッド電解質)」という名称アピールされています。

in-situは「その場で」といった意味で、材料分野の観察技術でよく用いられる用語です。その全容は明らかになっていませんが、必要に応じて固体と液体を使い分ける「半固体」電池なのではないかとされています。

液体と固体の中間と言うと、ゲルのような状態が該当します。電解質をゲルにすることで、正極・負極との界面の抵抗を減らしているものと考えられます。

技術の内容はさておき、電池の性能として高いエネルギー密度を実現していることは注目に値します。トヨタが2027-28年に実用化するとされる全固体電池に対して、2023年には車載されるとされる半固体電池は、全固体電池実現を待たずして、EVの航続距離問題を解決する可能性があります。

正極・負極は正常進化品

正極と負極の構成についても、同様に発表されています。

発表時の表記であった「Nickel-Ultrarich」は、正極のニッケル量を増やしてエネルギー密度上げていることを意味しています。通常のリチウムイオン電池に用いられる「三元系(NMC)正極」に用いられるニッケルの比率を上げることで、性能が向上することが知られており(デメリットとしてコストが上がる)、各社ハイエンドのリチウムイオン電池の正極は、ニッケル量を増やすことで対応しています。

負極には、シリコンとカーボンを用いたコンポジット(複合材料)を用いています。負極は通常黒鉛(カーボン)が用いられ、電池容量を上げるために少量のシリコンが添加されます。このシリコン量が多くなるほど容量が大きくなるため、各社シリコンを使った負極の研究に邁進しています(背反として、充放電時のシリコンの膨張収縮で電池が劣化しやすくなります)。

正極・負極共に特別な技術を導入してるわけではなく、正常進化品だという認識です。

エネルギー密度は300Wh/kgを超える

以下に、WeLionの電池と、他社の電池の重量エネルギー密度を比較します。

各社発表情報を基に当サイト作成

NIOが2021年に発表したWeLionの半固体電池は、360Wh/kgのエネルギー密度を持つとされており、テスラなど使用する最新のリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を誇っています。

他社も半固体電池で高いエネルギー密度を実現する

近年、全固体電池と液系のリチウムイオン電池の中間の材料として注目されている「半固体電池」は、CATLやTalent New Energyなどの中国企業がこぞって新製品を投入しており、エネルギー密度も300Wh/kgを超える高い性能を実現しているものが多いです。

特に、CATLのCondensed battery(凝集態電池)は、500Wh/kgという高いエネルギー密度を実現しており、これらの電池の投入でEVの航続距離の問題はほぼ解決すると考えられています。

NIOは半固体電池を車載する

WeLionのパウチ型バッテリー(WeLionHPより)

NIOは、固体電池を2022年Q4に車載にすると発表。クラウドで温度管理まで行うと言い、冷却系もスマートになると考えられます。NIOは2023年5月、WeLionの半固体電池を搭載した車両NIO ET7を、7月末までに投入するとしていますが、その後の続報はありません。

NIOの全固体電池は電解質の一部がゲルで完全な固体ではありません。ここが、固体のみを扱うquantumscapeやトヨタとの違いで、NIOが早期に全固体電池を商用化に結び付けることのできた要因の一つとして挙げられます。このように、完全に固体でない電解質を用いる電池を「半固体電池(Semi-Solid State Batteries)」とも呼ぶようになっています。

半固体電池のデメリットは?

半固体電池のデメリットとして考えられるのは、安全性と耐久性です。

全固体電池は、発火しやすい電解液を固体にすることで安全性を担保するという思想です。半固体の電池は、液体を含んでいるため、全固体電池と比較すると発火のリスクは残ります。

また、耐久性にも課題が残るものと考えられます。全固体電池と異なり、液体電解質を用いるため、電解質の濃度差による劣化は変わらず生じるものと考えられ、全固体のように長寿命とはならない可能性が高いです。

全固体に比べれば早期に実現する半固体電池は、全固体電池と液系リチウムイオン電池の「中間的立ち位置」にあるということになります。

WeLionとは

Beijing WeLion New Energy Technology、通称WeLionは、車載リチウムイオン電池の開発を行う中国新興企業です。WeLionは2025年までに新規株式公開(IPO)を開始する計画を明らかにしており、2025年までには、年間生産能力を現在の6GWhから30GWhに増やすとも表明しています。

これに向けて、中国国内に4つの新工場を建設する予定です。このビジョンは壮大であり、2025年までに年間売上高を20倍の約2兆1500億円に増やすことが目標とされています。最新の民間資金調達ラウンドでは、同社の評価額は約3兆2240億円に達したとのことで、勢いのある新興電池企業です。

米国のQuantumScape、SolidPower、SolidEnergy Systemsや、台湾のプロロジウムテクノロジー(輝能科技)と同様に、次世代電池を開発する新興企業として今後も注目すべきです。

NIO以外のOEMへの供給も視野に

WeLionはNIOとのパートナーシップが注目されますが、契約は独占的なものではありません。WeLion湖州工場のゼネラルマネジャー、Tian Qiyou氏によると、WeLionは「今後の量産が計画通り着実に進む」ようにと、主要な国際自動車メーカーとの協力も模索しているとされています。ただし、具体的な自動車メーカー名は明らかにされていません。

まとめ

WeLionは360Wh/kgという非常に高いエネルギー密度を実現する電池を2022年末から生産開始しています。この電池が中国製EVに搭載され、航続距離が改善されていくと、EVの商品性がより高まるものと考えられます。

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