ANSYS Fluentで、混相流の計算をしてみました。
水と空気など、気体・液体が混合するような混相流の計算。
複雑で難しいとされる混相流を、汎用流体ソフトANSYS Fluentでどの程度模擬することが出来るのか、やってみました。
混相流の概要
混相流とは

https://www.cradle.co.jp/media/column/a326
混相流は、気相、固相、液相のいずれかの組み合わせからなる流れの事で、CFDでは各相を連続体と見なして相ごとに基礎方程式を解きます。
単相流 | 混相流 | |
流れを表現するもの | ・流速 ・圧力 ・温度 | ・流速 ・圧力 ・温度 ・混合状態 ・質量 ・エネルギー |

気体-液体

気体-固体

液体-固体
混相流のイメージはこのようなもの。
今回は、気体-液体の混相流を解くことにします。
混相流を計算する手法
混相流を解く手法は主に下の4つで、今回は最も簡単なVOFを用いる事にします。
VOF法(Volume of Fluid)
気液界面を追跡する、表面張力や接触角を定義して計算する。気液ともに連続的な流れであることが前提。
Mixture
気泡・液滴などの粒が水などの中に分散している様子を計算する。ただ、粒と水は同じ方向へ運動していることを前提とする。
Eulerian
Mixtureと同じであるが、粒と水が異なる運動をする前提を置く。
DPM(Discrete Phase Model)
粒子ひとつひとつを追う計算をする。インジェクターなどの軌道計算に使われる。一般的に計算負荷を考え代表粒子によるモデル化を行う場合も多い。Eulerian Wall Filmと併用し、液膜と飛散粒子の動きを可視化するために用いられたりもする。
計算する形状

計算する形状として、閉流路内に円柱が立っている空間を考えます。
ここに、流速1[m/s]の水が流れ込む場合を考えます。(重力は無視)

定常状態の流れを解くとこのようになります。
定常流れの計算方法はこちら→ANSYS Fluentで流体解析をやってみる
この流れに対して、入り口から液水が流入するように変更していきます。
要素分割

このように要素分割しました。
要素分割の手順はこちら→ANSYS workbench & Fluentでメッシュを切る
VOFモデルの設定

通常の流体解析に、VOFモデルを追加していきます。

VOFを選択し、体積力の式に「陰的体積力」を選択します。
英語だと「Implicit Body Force」です。
Warning: Level Set model is not supported for mesh containing polyhedral cells. Disabling..
レベルセット法は、ポリヘドラルメッシュでは利用できないようです。

プライマリの流体に、セカンダリの流体が流入します。
そのため、Phase1とPhase2は以下のような関係としました。
相 | material |
Phase1 (Primary) | air (空気) |
Phase2 (Secondary) | water-liquid (水) |
境界条件

速度入口には流速を設定します。今回は1[m/s]としました。

phase-2では、流入流体の体積分率を指定できます。
0-1の値を入力する。安定させるために1としました。
計算の実行

計算設定は、自動的に非定常になります。

計算ステップは0.005刻み、時間ステップを30としました。
1時間ステップ当たり500回計算。
1ステップ当たりの計算回数は大切で、これが短いと途中で計算が発散したりします。

残差プロットはこのようになります。
500iterationごとに次のステップに進み、その際に残差が増大します。
計算収束性は非常に悪いです。
計算結果の可視化

結果可視化のためにコンター図を表示します。表示の最大・最小は見栄えが良くなるように調整が必要です。
上図のように設定し、「カラーマップオプション」を押下します。

カラーマップの表示の際に、blue-lightを選択すると、水っぽい青色でコンター図を表示できます。

計算結果のコンター図を表示するとこのようになります。
液体部分のみを表示するようにしたところ、それっぽい絵になりました。
まとめ
ANSYS FluentのVOFで混相流を解いてみました。
ただ、計算時間が長いのと収束性が悪いためにかなり苦労しました。
特に、計算する流路形状が収束性に大きく影響するようなので、
・なるべくシンプルな構造で
・まず定常流れ計算が解けるか確認
・タイムステップ当たりの繰り返し計算回数を大きく
などの工夫が必要そうです。
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