ANSYS Flentで燃料電池の発電計算してみた

シミュレーション

年末年始もコロナですね。おかげさまで、暇です。

暇すぎたので、ANSYS studentを使って、燃料電池の性能を予測するシミュレーションをやってみました。

アウトプットイメージ

polarization curves
豊田中央研究所 R&D レビュー(1994)に掲載されていたIVカーブです。

こんな感じのIVカーブ[1]が描ければ嬉しいなぁくらいの軽い気持ちで、ANSYS studentのFluentを使って計算しました。

モデル形状

mesh
不連続のメッシュではうまく計算できませんでした

モデルはSCDM(AnsysSpaceClaim)で作成。正直、SCDMの使い方があまり分かってないので適当に作りました。

構成部品としては、セパレータ、流路、ガス拡散層、撥水層、触媒層がアノードカソードそれぞれあり、触媒層間に電解質があるモデルで、厚みは適当です(ナフィオン膜の厚み[2]は調べてそれっぽい厚みにしてあります)。

ANSYS meshでメッシュを作成、電解質や電極(所謂セルに相当する部分)は、厚さ方向に3層切ってあります。不連続メッシュで一度計算してみたのですが、やはりうまく計算できず。

連続メッシュに切りなおして無事に計算できました。

Fluentでの計算設定

Fluent2020R1

ANSYS 2020R1をインストールしたら、GUIがナウでヤングな感じに改良されてて笑顔になりました。

インストール手順:自宅でANSYS製品使ってみた【環境構築編】

Fluentには、燃料電池の発電計算モジュールがデフォルトで搭載されているので、これを使います。

PEM Fuel Cell Modelを有効にして、アノード、カソード、電解質などの領域を選ぶと、Materialに勝手にfc-mixtureが追加され、Species Transportのモデルも自動的に有効になるようです。

Fuel CEll Modelの使い方については、Youtubeに公式の解説動画があったので参考にしました。ただ、この手順は結構適当でいろいろ試行錯誤が必要でした…

FCモジュールの物性値や設定などは、ひとまずデフォルトで計算してみます。界面の接触抵抗も特に定義せずやります。

その他、メモ的に設定したことを書くと
・領域はセパレータ以外は全てFluidに変更(ガスが流入する領域なので)
・セパレータの集電部を発電計算モジュールのUIで指定(External Contact Interfaceがセパレータにあたる)
・層流モデルを利用
・流量入り口はmass-flow-inletでnormal to boundaryに設定、流量は[3]を参照
・O2の緩和係数(under-relaxation)を0.99
・300iteration計算

計算結果

PEM_IV_curve

IVカーブと、電解質近傍の酸素濃度を同じプロットにとってみた結果がこちら。

たった0.4[A/cm2]の負荷で酸素濃度がほぼ0になりました。

test03_o2

酸素濃度のコンター図を見てみると、セパレータのリブ付近で酸素ガス濃度が低下する結果(画像の青い部分が接触部、色が明るい方からガスが流れる)。

デフォルトの物性値では、カソード側のガス供給能力が不十分のようで、思っていた(豊田中研の論文)よりもガス枯れが早く起きたようです。

リブ下での液水

こういった液水蓄積によるガス濃度低下は、NEDOのFCV課題共有フォーラム[4]でも報告されているので、実物と似たような挙動が再現できているのだろうと、うっすら感じられる結果です。

F3001fig8

セパレータと膜の接触部の液水が溜まって、拡散層中のガス流路が閉塞される現象は、米アルゴンヌ国立研究所の論文[5]でも計算によって示されています。

これはMorphologyに粘性力を加えたもので計算していますが、Fluentでもこういった計算はできるのでしょうかね。気液二層流とかやれるのだろうか。調べてみます。

まとめ

とりあえず計算はできるようになったので、市販品の燃料電池実験キットみたいなのを模したモデルでIVカーブの合わせこみをやったりとか、物性値をいろいろ変えて性能がどう変わるかとか、遊んでみようと思います。

参考文献
[1] 高分子電解質型燃料電池 豊田中央研究所 R&D レビュー Vol. 29 No. 4 ( 1994. 12 )
https://www.tytlabs.com/japanese/review/rev294pdf/294_013_kawahara.pdf

[2] 代替エネルギー材料ナフィオン(Nafion)https://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/alternative/nafion.html

[3] 固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電に必要な燃料ガス流量は? 東陽テクニカ
https://www.toyo.co.jp/material/faq/detail/id=3767

[4] FCV用燃料電池の現状と課題 NEDO FCV課題共有フォーラム
https://www.nedo.go.jp/content/100888577.pdf

[5] Direct Simulations of Pore-Scale Water Transport through Diffusion Media
https://iopscience.iop.org/article/10.1149/2.0011907jes

画像提供:ANSYS.inc

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