ANSYS Fluentにて、物体間の熱抵抗を加味して計算する方法を試してみました。
構造の作成

2つのブロックを重ねた構造を計算対象とします。
上のブロックと下のブロックの間に、界面熱抵抗があるものと考えて計算します。

構造を作成したら「共有」ボタンで界面のトポロジー共有を行います。
SpaceClaimを用いた構造の作成方法については以下も参照ください。
参考:ANSYS SpaceClaimで複数の部品を組み合わせた3D構造を描く
メッシュ作成

Fluent Meshingでメッシュを作成します。
メッシュの作成方法については、以下も参照ください。
参考:ANSYS workbench & Fluentでメッシュを切る
参考
壁に設定した名称と、領域に設定した名称が同じ場合、Fluent Meshingで以下のようなWarningが表示されました。
—- Warning— One or more Name Selections ‘(ground)’ has the same name as a body. It is recommended to change either the Named Selections or the body name to avoid incorrect selections in some downstream tasks.
Boundaryと
境界条件を設定

まず、Energyのモデルを有効にします。
上面を500K、底面を300Kに設定し、計算を行います。
結果の確認

結果を確認するために、断面(ISO-surface)を作成します。

上面を500K、底面を300Kとし、界面に熱抵抗を与えずに計算した結果がこちらです。綺麗なグラデーションになります。

値を取得するために、Lineを作成します。

温度の値は、底面から上面に向かって線形に上昇します。
界面抵抗を設定する

界面の熱抵抗に適用する物性を定義します。
ここでは、熱伝導率が0.05[W/mK]の材料が界面に存在すると仮定しています。
熱伝導率0.05[W/mK]は、空気の熱伝導率に近い値です。(空気は0.02[W/mK]なのでもう少し低いですが)
かなり断熱性の高い物性値が入っている、という認識でよいと思います。つまり、熱抵抗が大きいということです。

2つのブロックの間の界面(wall)にて、Shell Conductionを有効にします。
厚みを1mm、物性値をheat_resist(さきほど定義したもの)とします。

上記の熱抵抗を加味して計算すると、コンター図は上図のようになり、2つの物体の温度はまるで違うものになります。
静止した空気の層が1mm入るだけで、驚異の断熱性があることがわかります。

温度をプロットしてみると、ステップ関数のように温度が変化することがわかります。
次に、熱伝導率を100[W/mK]と仮定して計算します。

グラデーションの中に、熱抵抗による温度変化が見られます。

界面の熱伝導率ごとの温度分布は上記の通りです。
まとめ
熱抵抗を加味した計算方法を試してみました。
熱抵抗は、界面の厚みと、界面の熱伝導率を定義することで考慮できます。
実務では、熱抵抗を実測することは難しく、計算と実験結果を比較しながら、どの程度の厚み、熱伝導率を考慮すると実測と一致するか、から抵抗を決めることがほとんどです。
一方で、界面抵抗は物体の接触状態によって大きく変わりますので、実験のばらつき(実施者、実施方法)によっても変わってきます。(奥の深い学問です)
そのため、熱抵抗を加味する場合には、実験込みでの検証を忘れないようにしたいところです。
Images used courtesy of ANSYS, Inc.
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