CFRPなどの複合材は、方向によって材料物性が異なります。これを異方性と呼びます。
異方性を持った材料物性は、ANSYSでも設定できるようなので試してみました。
異方性材料とは

異方性は、方向によって材料の物性値が異なることを言います。
実務でよく出てくる異方性材料は複合材がほとんどで、カーボンファイバーを含んだ樹脂(CFRP)などが身近な例です。
ジオメトリ作成

ANSYS workbenchを開いて、静的構造解析のスタンドアロンシステムを作成します。

SpaceClaimでジオメトリを作成します。

今回の計算用に、引張試験片を模擬したジオメトリを作成しました。
※実際の引張試験片はJISで規定された寸法です。この形状は適当です。
材料物性値の定義

この引張試験片は樹脂製で、樹脂のなかにカーボンファイバーが埋め込まれていると想定します。
Y方向が繊維の方向となり、Y方向のみ強化され、引張に強くな物性値を入力します。

エンジニアリングデータ>編集 にて、エンジニアリングデータタブを開きます。

「仮想材料」という名称の材料を新しく定義します。

仮想材料に「直交異方性弾性」の物性定義をします。

異方性物性を入力します。(今回の値は適当に入れてます)
カーボンファイバーがY方向に向いているCFRPの板1層を想定した物性値が入力されています。
※私の環境では、この物性入力中にANSYSが何度か落ちました。

workbenchのプロジェクト概念図に戻り、セットアップをクリックします。
メッシュの作成

メッシュを作成します。
今回の計算では、引張試験片の曲線部を十分に細かく分割するために、要素の分解能を5まで上げます。

メッシュを更新して、要素分割します。

このような分割度で計算してみます。
境界条件の設定

底面を固定し、上面から上方向に200Nの荷重をかけます。

得たい結果として、相当応力を定義します。この際、変形量も同様に定義しておくと、結果の考察がはかどります。

計算を実行します。
結果比較

異方性材料物性を定義した計算結果がこちら。
これだけだと違いが分からないので、等方性材料の計算結果と比較してみます。

違いが出ていることがわかります。
異方性材料の相当応力の最大値は10.7MPa、等方性は7.3MPaでした。
変形量は、異方性材料は0.86μm、等方性材料は6.4μmです。
異方性材料のほうが、引張に対して強く、変形量が小さいことが確認できます。
参考ですが、今回の検討中に、以下のようなエラーが表示されました。
変形がモデルのバウンディングボックスに比べて、大きくなっています。 境界条件の設定を見直すか、大変形オプションの設定をオンにしてください。 詳細は、ヘルプシステムのトラブルシューティングを参照してください。
材料物性値の入力(特に単位)に誤りがある場合に、変形量が大きくなりすぎて表示されるエラーです。同様のエラーが表示されたら、物性値や荷重の見直しをお勧めします。
まとめ
異方性材料物性を適用して、等方性の結果と比較しました。
最近の製品は複合材料を使ったものも多く、物性が異方性であることもよくあります。
異方性材料の考え方に親しんでおくと、実務でも役に立つと思います。
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