燃料電池技術は、環境にやさしい持続可能なエネルギー源として、エネルギーの未来を担う技術の一つです。
この記事では、固体高分子型燃料電池および固体酸化物型燃料電池の国内特許数について調査し、今後の燃料電池の展開について考察します。
燃料電池 特許数ランキング

まず、固体高分子型燃料電池の国内特許数を調べたところ、トヨタ自動車が圧倒的な数の特許を持っていることがわかりました。トヨタ自動車は、燃料電池自動車「MIRAI」を開発しているだけでなく、固体高分子型燃料電池の研究開発にも力を入れていることが背景にあります。
パナソニックは家庭用エネファームに特化した特許を保有している傾向があります。エネファームは、燃料電池を活用して、家庭で発電・暖房・給湯を行うシステムです。
注目すべき個別企業
以下の企業も気になる存在です。
アイシン
アイシンは自動車部品メーカーとして知られていますが、家庭用燃料電池エネファームのモジュールを開発している企業でもあります。
同社の技術力は高く評価されており、エネファームの性能向上やコスト低減に寄与しています。
大阪ガス
大阪ガスは、エネファームの販売を手掛けている企業であり、家庭用燃料電池システムの普及を支えています。
同社は、エネファームの性能や信頼性を高めるためのフィードバックをメーカーに提供することで、製品の改善に貢献しています。
東レ
東レは繊維・化学メーカーとして広く知られていますが、燃料電池材料全般で競争力があり、材料メーカーとしての技術力が高い企業です。
同社は、燃料電池の性能向上や効率化に欠かせない、電極触媒やセパレーターなどの材料開発に注力しています。
固体酸化物型燃料電池(SOFC)の特許数ランキング
燃料電池の中でも、家庭用や大規模発電用として利用が期待されるSOFCの特許数ランキングを示します。

SOFCの主要技術はセラミックであるため、セラミックメーカーがいくつかランクインしています。
次に、固体酸化物型燃料電池の国内特許数を調べたところ、トヨタ自動車が一強を形成していることがわかりました。
正直なところ、固体酸化物型燃料電池が車載に利用されることはあまり考えられていませんが、トヨタ自動車は周辺技術の特許を含めて、燃料電池全体に対する研究開発に取り組んでいる可能性があります。
ホンダやパナソニックは、家庭用エネファームとして固体酸化物型燃料電池の開発に注力していると考えられます。
注目すべき個別企業
以下の企業も注目です。
京セラ
京セラは、国内で唯一、固体酸化物型燃料電池(SOFC)を世に送り出した企業であり、その技術力と経営理念が高く評価されています。同社は、燃料電池の高効率化や耐久性向上を目指し、セラミック技術を活用した電極や電解質の開発に力を入れています。また、分散型エネルギーシステムやスマートグリッドとの連携を通じて、燃料電池の新たな価値創出を目指しています。
日本ガイシ
日本ガイシは、セラミック関係のメーカーであり、燃料電池分野でも活躍しています。同社は、独自のセラミック技術を活用して、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の材料開発やシステム構築に取り組んでいます。
森村SOFCテクノロジー
森村SOFCテクノロジーズは、森村グループ4社の共同で設立された企業で、セラミック技術を活用した燃料電池分野での研究開発を行っています。同社は、SOFCのシステム開発や運用技術の確立に取り組み、高い効率と環境性能を実現することを目指しています。

SOFC関連特許出願数の推移をみると、各社精力的に特許出願を進めていることが分かります。
燃料電池とは
燃料電池は、化学反応を通じて燃料から電気を作り出すデバイスで、化石燃料による発電と比べて、高い効率性や環境負荷の低減を実現することができます。現在、燃料電池は自動車や家庭用電源などのエネルギー需要に対応するために、様々な種類が開発されています。
燃料電池は主要な2種類の形式があります。PEFC(プロトン交換膜燃料電池)とSOFC(固体酸化物燃料電池)です。
PEFC
PEFCは、水素やメタノールなどの燃料を使用して発電する燃料電池の一種です。PEFCは、プロトン交換膜と呼ばれる膜を使用して、水素イオンを通過させ、電気を生成します。PEFCは、低温下で動作し、素早く反応するため、高い出力密度を持ちます。PEFCの応用分野として、自動車、船舶、家庭用発電、ポータブル電源などがあります。
PEFCの主な利点は、高い効率性、クリーンエネルギー、低い騒音、低い振動、環境負荷の低減などが挙げられます。ただし、PEFCは、高価なプラチナなどの希少金属を使用することが必要であり、燃料の取り扱いや安全性の面での課題もあります。
SOFC
SOFCは、高温で動作する燃料電池の一種で、水素、炭化水素、石炭、バイオマスなどの燃料を使用して発電することができます。SOFCは、固体酸化物と呼ばれる電解質を使用して、酸素イオンと燃料の化学反応によって電気を生成します。SOFCは、高温下で動作するため、反応速度が遅く、出力密度が低いという課題があります。しかし、SOFCは、発電時に熱エネルギーを余熱
利用することができ、二次エネルギーの利用効率を高めることができます。SOFCの応用分野として、大規模な発電所、産業用プロセス、再生可能エネルギー発電、船舶などがあります。
SOFCの主な利点は、高い効率性、環境負荷の低減、長寿命、多様な燃料の使用が可能などが挙げられます。ただし、SOFCは、高温で動作するため、耐久性に問題があり、製造コストが高いという課題があります。
燃料電池の今後
燃料電池市場は拡大傾向にあります。2025年までに、PEFCは3億ドル、SOFCは2.2億ドルの市場に成長するとされています。
自動車分野での燃料電池の普及のためには、インフラ整備との兼ね合いが重要となります。水素ステーションの設置や整備が進むことで、燃料電池自動車の普及が加速するでしょう。また、政策面での支援や、自動車メーカー間の連携が今後の展開において鍵となります。
家庭用燃料電池については、コスト低下が目下の課題となっています。技術革新によるコスト削減や、補助金制度の拡充が進むことで、家庭用燃料電池の普及が促進されるでしょう。また、スマートグリッドとの連携や、再生可能エネルギーとの組み合わせによるエネルギーマネジメントが、家庭用燃料電池の付加価値を高めることが期待されます。
まとめ
まとめとして、燃料電池技術はエネルギー分野で大きな可能性を秘めており、国内の主要企業が特許を保有して競争を繰り広げています。
今後の技術革新や、政策面での支援が燃料電池の普及を促進し、持続可能なエネルギー供給の一翼を担うことが期待されます。
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