ANSYS Fluentで多孔質体を含む流体計算をしてみる

シミュレーション

これまで、Fluentで簡単な計算をしてみました。

今回は、複数部品で構成された計算をしてみました。特に、今回は多孔質体を含むガス流れ計算をやってみます。

多孔質体とは?

多孔質体についてGoogleで検索すると

多孔質体とは内部に孔(空隙)を持つ個体の総称である. 私たちは日常生活において,台所で使用される発泡ポリウ レタン(ウレタンフォーム),こん包材に使用される発泡 スチロール,化粧用パフ,木材,活性炭,れんが,紙,食 パン,凍り豆腐等の多孔質体を目にすることができる.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/88/8/88_297/_pdf

といった説明が出てきます。イメージは以下のようなモノです。

私は、「穴の空いたもの」とか「フワッフワのもの」とかいうイメージを持っています。

穴、すなわち空隙の中は空気が含まれますので、周囲からの流れがあれば、それがそのまま流入します。

Fluentでの流体解析の設定は、こちらで紹介していますので、ご参照下さい。

今回は、多孔質体の設定と、部品が複数になった場合に設定すべき項目に絞って紹介します。

メッシング時の設定

メッシングは、基本的に単一の部品での切り方と同じです。

1点だけ設定すべき項目が、Describe Geometryの設定内にあります。

Describe GeometryのGEometry Typeにて、「 The geometry consists of both fluid and solid regions and/or voids」を選択します。

これは、領域に多孔質体が含まれる可能性がある、という指定です。

他の全ての設定をデフォルトにしてメッシュを作成するとこのようになりました。

Fluentのメッシングモードから、Solutionモードに切り替えます。Questionが表示されますが、無視して進みましょう。

多孔質の粘性抵抗の設定

多孔質体の粘性抵抗と空隙率を設定します。

Cell Zone Condtionsにて、porusをダブルクリックして設定ウインドウを開きます。

粘性抵抗はViscous Resistanceに入力します。粘性抵抗は、1e+10[m2]としました。

粘性抵抗は、Permeabilityの逆数です。日本語ではガスの浸透率や透過係数とも呼ばれます。

Permeabilityはあまり聞き慣れない単語ですが、石油産業などでは孔質体から石油を取り出す際に、どの程度圧力をかけると取り出せるのか、などの研究に用いられる有名な指標です。

Permeabilityの値は文献を調べるとたくさん出てきます。一例を示すとこのような値です。

出典:SiCスポンジを用いたガソリン車用フィルタの開発 名古屋大学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaeronbun/50/4/50_20194560/_pdf

繰り返しですが、Fluentへの入力値はPermeabilityの逆数です。

流入流速の設定



今回の境界条件は上記画像のように設定します。といっても、設定する必要があるのはinletのみです。

流入流速は、Boundary Conditionsのinletをダブルクリックして入力します。

流速は1[m/s]としました。これも適当な値を入れています。

計算の実行

計算を実施しました。500iteration程度で収束します。

計算時間は4並列で5分程度でした。


計算結果を保存しておきます。Write>Case&Dataでファイル名を指定して保存します。

このガス流路で発生する圧力損失を求めます。要は、この多孔質を流すのにどれだけの圧力をかける必要があるか、という事です。

Report > Surface Integrals をダブルクリックしてウインドウを開きます。

上記のように設定して計算すると、以下のような結果がれられます。

Area-Weighted Average
Static Pressure [Pa]
——————————– ——————–
inlet 3455.7144
outlet 0
 —————- ——————–
Net 1727.8572

Outletの圧力は、デフォルトの境界条件設定で0Paとしているので、結果も0Paとなっています。これは妥当な結果です。

inletの圧力は3455Paでした。つまり、この多孔質を含む流路をガスが流れるのに、約3.5kPaが必要なようです。

コンター図を用いて可視化してみます。上記のような設定でコンター図を書いてみると、

表面の圧力が表示されました。

ただ、表面より内部の圧力を見たいので、断面を作成してみます。

断面作成は、Surface > Create > Planeで簡単に作成できます。

Plane Surface ウインドウのMethodにて、任意の断面方向を選択し、断面を作成(create)します。

断面の圧力を表示すると、このようになりました。

表示する方向を切り替える場合には、コンター図のウインドウ近くのこのボタンから変更できます。

コンター図を、「パース表示」とするのかどうかで、見え方が変わってきます。

二次元コンター図ではわかりにくいですが、パース表示とすると「かっこいい」可視化ができます。一方で、値の正確な把握はしにくくなります。

結果の概要把握のためのコンター図はパース表示でよいと思いますが、詳細に分析する場合、私はパース表示をオフにするようにしています。

このように、多孔質を含むガス流れの計算を実施しました。多孔質体の長さや流路の長さ、粘性抵抗を変化させてパラスタすると面白い結果が得られれそうなので、また試してみたいと思います。

Images used courtesy of ANSYS, Inc.

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