芯联集成(UNT)のSiCパワー半導体

パワー半導体

芯联集成(United Nova Technology)は、中国の半導体企業です。特に車載のパワー半導体やSiC分野で成長著しい企業で、中国ではSiCパワー半導体の大手に続いてシェア6位に位置しています。

本稿では、United Nova Technologyの技術と、2018年の創業からどのようにして現在の位置に上り詰めたのかを解説します。

UNT (United Nova Technology)とは

ユナイテッドノバテクノロジーについて ユナイテッド・ノヴァ・テクノロジー社(United Nova Technology Co. )は、パワー半導体、センサー、接続分野におけるウエハー製造、モジュールを製造する企業です。、中国の大手半導体製造会社であるSMIC(中芯国際)から分離して独立した企業で、2018年に創業されました。

UNTは自動車、新エネルギー、産業制御、家電などの分野にパワー半導体を提供しています。車載用のIGBT/SiCチップと、モジュールの最大規模のファウンドリーです。

2023年、BYD NEV(新エネルギー車)コアサプライヤー大会で「特別貢献賞」を得ている

UNTは、3つのウェーハ工場と1つのモジュール工場を建設。同社の主力製品である車載用IGBTチップを月に8万個生産しています。

これまで多くの自動車メーカーがUNTのチップを採用しており、例えばBYDはUNTの製造したチップを大量に使用しています。また、XpengのG6モデルではモジュールのパッケージ化にUNTを選んでいます。

UNTは半導体不足の時期に成長した

2022年末ごろ、半導体の供給不足は主に自動車向けのアナログ半導体およびパワー半導体だった(当時の日経新聞より)

2022年頃、半導体危機の中で特に不足していたのは、最新の製造プロセスを使用したCPUやGPUではなく、「車載用途」のアナログチップでした。これらのチップは主に車載エレクトロニクスや駆動システムに使用されており、比較的容易に設計と製造ができました。

2018年に創業したUNTは、この時期(2022年頃)に大きく飛躍。2023年、SiCデバイスのシェアにUNT (United Nova Technology)が割って入り参入し、中国国内でのシェア6位となりました。(上位5社はSTマイクロエレクトロニクス、インフィニオン、ウルフスピード、オン・セミコンダクター、ロームです。)

UNTはなぜ成長できたのか?

中国のファウンドリ、UNT (United Nova Technology)は、半導体不足の中で成長を続けました。なぜ、2018年に設立された企業が、ここまで早く製品を世に送り出すことができるのでしょうか。

一つは、UNTの戦略にあります。既存の半導体チップメーカーは、自社設計の利益率の高い標準品を重視し、製造と販売には慎重な姿勢を示しています。自社設計の標準化製品を販売することで利益を上げており、ワンオフやパーツ売りは好みません。

一方で、UNTは自動車メーカーが独自設計したチップを生産するOEMとして動いています。半導体不足の渦中、UNT は日本を訪れ、三菱、ルネサス、日立などの企業を訪問、その後はヨーロッパに移り、ボッシュ、ZF、コンチネンタルなどを訪問しました。

これらのパワー半導体デバイスメーカーは、自動車メーカーの需要変動に対応するために、一部のチップの生産を外部のファウンドリに委託しています。UNTは「需要変動」時の受け皿(委託先)となることで、UNTは日本や欧州の製造要件や品質基準を学び、問題解決の過程で世界クラスのアナログチップメーカーとして、高品質な製品を生産するための工場とプロセスが確立されました。

SiC事業は分社化

UNTは、SiC事業を分社化し資金を調達しています。炭化ケイ素デバイスの生産能力を拡大するには設備投資が必要であり、OEM生産だけでは不十分です。UNTはSiCプロジェクトを分社化し新会社を設立し、株式の51%を保有、袁峰氏が会長に就任しました。Xpeng Star Capital、SAIC Shanqi Capital、Bosch Capitalといった経験豊富な投資家の協力も得ながら、SiC事業を推進しています。

SiCデバイスは供給過剰へ

多くの業界関係者は、2024年以降、SiCパワー半導体デバイスは、過剰生産に向かうだろうと考えています。

自動車メーカーによる800Vの高電圧プラットフォームへの切り替えが進行してるため、SiCパワー半導体メーカーは生産能力を迅速に拡大していくものと考えられ、供給過剰に陥るとの見方が強いです。

一方で、高品質なSiC製品の生産能力は常に不足していると考えられています。今後は、より高品質なSiCパワー半導体デバイスを開発・生産することが求められ、それができなければ安値で買い叩かれることになります。

最近の大規模な投資により、業界は価格競争に突入しています。チップ製造企業はコストを削減し、歩留まりを向上させる必要がありますが、同時に自動車ブランドのニーズにも迅速に対応する必要があります。

また、近年、800Vの高電圧での急速充電技術がEVにとってのトレンド要素となっています。炭化ケイ素チップを導入することで、従来のシリコンベースのIGBTに比べて充電効率が向上し、800Vの高電圧でも効率を担保できるようになるとされています。

利益は出ていない

財務報告書によると、2022年には16億元(320億円)の損失、2023年の第3四半期には13億6000万元(272億円)の損失が形状視されています。赤字はUNTが生産設備を急速に減価償却する会計方針を採用したことによるもので、5年間は生産設備の投資分により赤字が続くことになります。

まとめ

自動車業界への半導体不足の影響は大きかったが、中国のファウンドリ、UNT (United Nova Technology)が成長し、自動車メーカーに対してSiCチップを提供することで需要に応え、シェアを拡大しています。

UNTは自動車業界の需要変動に対応し高品質な製品を生産し、品質と歩留まりを高める努力を続けています。

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この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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