ロームのSiCパワー半導体

自動車業界

ロームはパワー半導体の研究・開発に注力しており、特にSiCパワー半導体の強みを持って競合他社との競争に勝っています。また、東芝との共同生産や経済産業省による支援など、パワー半導体事業の拡大に取り組んでいます。

本記事では、ロームのSiCパワー半導体事業について解説します。

ロームのSiCパワー半導体戦略

SiCウェハ(ロームのパンフレットより)

ロームは、電気自動車(EV)に使用されるパワー半導体の研究・開発に注力しています。ロームは特に車載向けのSiC半導体に強く、現在主流のシリコンではなく、今後普及が期待されるSiCに強みを持つ日本企業として注目を集めています。

2021年時点でのSiCパワー半導体の市場シェア(Yole Group調査結果をもとに当サイト作成)

ロームのSiCパワー半導体のシェアは10%と高く、世界で第四位に位置しています。

ロームは2027年までの7年間で、SiC事業に5100億円を投資する計画です。目標は、SiC製パワー半導体の売り上げを2027年において前年度比で9倍の2700億円に増やすことです。

SiCパワー半導体は、オン抵抗が低く、高温・高周波・高電圧環境での性能が優れています。次世代の低損失半導体として注目されており、特にEVでの電力変換(インバータなどのEVの駆動装置)に用いられることが期待されます。

SiCパワー半導体を垂直統合で生産

ロームは垂直統合型の生産体制で品質を担保する
  • ウェハ製造
    SiCtystal(独)

  • ウェハ
    プロセス
    ローム・アポロ(福岡・宮崎)
  • パッケージング
    ローム本社、ローム韓国

ロームはSiCパワー半導体の開発に、垂直統合型の生産体制を採用しています。SiCのウェハはグループ会社であるSiCrystal(ドイツ)から調達しており、プロセスからパッケージングまでのすべての工程を自社で手の内に収めています。

技術を手の内で収めることで、ウエハの供給を安定させ、問題が発生した箇所を解析して、ウェハ生産段階までさかのぼり対策することができます。

ソフトウェア関係にも強み

ロームのシミュレーションツール(ROHM 企業Youtubeより)

ロームは、評価用ボードやシミュレーション用モデル(ROHM Solution Simulator)を提供し、効率的な技術の蓄積をサポートしています。

パワー半導体の製造・販売だけでなく、顧客での製品設計活用にまで入り込み付加価値を付けることで、特に日本でのシェアを拡大しています。

ロームは東芝とパワー半導体の共同生産を始める

東芝とロームは2023年秋、パワー半導体の共同生産を始めると発表しました。東芝のシリコンパワー半導体と、ロームのSiCパワー半導体製品の強みを持ちより、技術協力や拡販によってお互いの強みを最大限に活かすことを目指しています。ロームが製造したSiC製のパワー半導体を、東芝ブランドで顧客に販売することを計画しています。

共同生産には、東芝のシリコンを使用するパワー半導体の生産を予定。具体的な供給開始時期は、シリコン製のパワー半導体は2025年3月から、SiCパワー半導体は2026年4月から開始する予定。材料のSiCウエハーについても、年間71万枚分を国内で生産する予定です。東芝は2024年度までに生産能力を2.5倍に、ロームは2030年度までに生産能力を35倍に引き上げる計画です。

ロームは7月に東芝の非上場化に対して3000億円を拠出することも発表しており、両社はパワー半導体事業における連携を検討していたことが分かります。

経済産業省も注目する

順位企業シェア
1インフィニオンドイツ21.4%
2オンセミコンダクター米国10.1%
3STマイクロエレクトロニクススイス8.5%
4三菱電機日本5.2%
5富士電機日本4.7%
6ビシェイ・インターテクノロジー米国4.1%
7東芝日本3.7%
8ネクスぺリアオランダ3.2%
9ローム日本3.2%
10アルファ&オメガ・セミコンダクター米国2.6%
パワー半導体の2022年世界シェア(英オムディア調査より当サイト作成)

経済産業省は、経済安全保障推進法に基づく基金から、ロームと東芝の協業に資金を提供しました。パワー半導体の国内生産基盤強化が狙いです。

パワー半導体の生産は両社の工場が分担する予定であり、プロジェクトには総額3883億円の費用がかかります。経済産業省は最大で1294億円の補助金を提供する予定です。

政府の支援額が明らかにされたことで、市場は好感を示し、株価も上昇しています。経済産業省もこの取り組みに注目しています。

ロームと東芝が事業統合する?

ロームと東芝のパワー半導体事業について、経済産業省の幹部は今後両社の協業や統合の可能性があるとみている、と報じられています。特に経産省は、国内の複数の企業の連携・再編を行うことで、競争力を向上したい意向を示しており、経産省の出資の目的も「霞が関の声を通しやすくる」ことにも繋がりそうです。

ロームの収益は減速気味も、楽観的な見方が優勢

ロームの半導体(LSI)の収益は下がっています。その主な要因は、家電や産業機器向けの大規模集積回路(LSI)の販売低迷で、ロームは2024年3月期に減益が予想されています。

また、株価も株式分割を考慮した後の7月の高値である3500円台後半から下落基調です。2023年は半導体産業全体で減速の兆しが見られますが、生成AIのブームやEV増加によるパワー半導体の需要増によって、長期的には楽観的な見方が優勢です。

まとめ

ロームと東芝の共同生産により、パワー半導体の生産基盤が強化され、国内産業の競争力が高まることが期待されています。この動きは経産省による支援を受けており、市場からも好意的に評価されています。ただし、ロームの収益減少と株価の下落には課題もありますが、半導体需要の回復と具体的な協業計画の提示が株価上昇につながる可能性があります。

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