多孔質体内の二相流のモデリング【論文ウォッチ】

論文ウォッチ

興味のある論文を読んで、感想を述べる論文ウォッチ。今回は以下の論文を題材にします。

論文

Modeling of Two Phase Flow in a Hydrophobic Porous Medium Interacting with a Hydrophilic Structure

親水性構造体と相互作用する疎水性多孔質体内二相流のモデリング

概要

ロバートボッシュが2022年に公開した論文です。掲載はTransport in Porous Media。

固体高分子形燃料電池における水の輸送に着目。ここでは、特に余分な水を除去しなければならないカソード側での水の輸送メカニズムを理解することを目的にしています。FCの最適な運転条件や、セル全体の性能を向上させるために極めて重要な課題です。

fig1 From: Modeling of Two Phase Flow in a Hydrophobic Porous Medium Interacting with a Hydrophilic Structure

特に、PEM燃料電池のGDLとガス分配器の界面におけるプロセスをモデル化するためには、材料の異なる濡れ挙動の影響を捉える必要があります。疎水性のGDLを通過する流体(水と空気)は、親水性の流路の表面と相互作用します(図1参照)。

本コンセプトは、図 1 の左赤丸で示した GDL と流路の界面の一部を捉えています。GDLと流路の接触線における相互作用を考慮し、疎水性のGDLからの水の取り込みに着目しています

開発したコンセプトの基礎と言葉の定義、モデル化における仮定は以下の通りです。

コンセプト
・ポアネットワークモデルを用いる
・界面における混合-湿潤相互作用のモデリングを可能にするよう拡張

言葉の定義
・疎水性多孔質媒体(ドメインI):GDL(疎水性)
・親水性構造(ドメインII):流路=親水性チャンネルランド構造

仮定
・GDLはポアネットワークモデルで表現できる。
・ガスチャンネルにおいて、GDLと流路の間の界面から水が効率的に除去され、水の飽和がゼロに近い状態を維持し、結果として局所毛管圧が界面の気相の圧力に等しくなる。
・GDLと流路の間の界面における水の相互作用の時間を特定するために、局所飽和閾値を定義することが可能である。飽和閾値は、境界孔の連結性に依存しない。細孔とスロート構造(流路のくびれ)の記述から、解析的な閾値の公式を導き出すことができる。

Fig. 22 From: Modeling of Two Phase Flow in a Hydrophobic Porous Medium Interacting with a Hydrophilic Structure

GDL構造に埋め込まれた立方体の細孔体を持つ細孔ネットワークの一部で、ネットワークはPoreSpy(Gostick 2017)を使って抽出されています。(6976個のporeと31,774個のthroatsが含まれる)。

・灰色の部分はLand部、無流動境界条件が適用されている
・赤い部分は、疎水性GDL(ドメインI)と親水性チャネルランド構造(ドメインII)の間の相互作用条件が適用されている
・開いている部分が流路

ディリクレ圧力境界条件(境界面の値を直接指定する条件)を適用し、相の流出を許容しています。

このモデルは、多孔質材料(ドメインI)の比較的単純な表現に界面効果を含めることを可能にし、進行中のプロセスとその相互作用の挙動を理解するのに役立っています。開発したモデルは、混合湿潤界面が境界孔だけでなく、隣接孔や疎水性ネットワーク全体の流れ(ドメインI)にも及ぼす影響を捉えています。

PDMS

流体相互作用の開始と終了を定義する飽和の閾値など、選択しなければならない仮定がいくつかある。これらの仮定を克服するためには、さらなる実験と数値的な調査が必要である。

現在進行中のプロセスをよりよく理解するために、PDMS(微小な流路を持つ流路)を用いた実験的調査を行うことができる。

fig25 From: Modeling of Two Phase Flow in a Hydrophobic Porous Medium Interacting with a Hydrophilic Structure

FC性能を調べ、水管理を改善するために、図25に示すような界面(ランド部、チャンネル内の自由流れ、チャンネル壁での濡れ)にも、今回提示したmixed-wet interfaceの概念を展開できると考えられます。同様に、動的な細孔流れにも活用できます。

【所感】
Pore-scale modeling(ポアスケールモデル)による、GDL内の液水輸送を計算するモデル化を検討しており、非常に興味深い内容でした。
PoreSpyというpythonモジュールで細孔構造の分析ができることも理解でき、収穫も大きかったです。
GDLを完全な疎水(撥水)として定義しているようですが、本当に正しいのか疑問が沸きます。
DeepLで日本語に翻訳して読んだのですが、意味が全く分からず、英語そのままで読んだ方がまだ理解が追い付きました。細孔中のくびれ(throats)を喉仏と訳したりします。専門用語は原文そのまま読むのがいいですね。

論文ウォッチ
この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

Montenegro Hasimotoをフォローする
シェアする
橋本総研.com

コメント

タイトルとURLをコピーしました