富士電機のパワー半導体事業はなぜ強いのか?

パワー半導体

富士電機は、主に重電系事業で知られる伝統的な企業ですが、パワー半導体分野においても強い存在感を示しています。発電所や変電所、産業用大型機械など、インフラ系を含む幅広い製品と事業を展開しており、特にパワー半導体に注力していることが特徴です。

2022年の世界シェアでは5位に位置し、インフィニオンやオンセミ、STマイクロなどのグローバル企業に次ぐ地位を確立しています。

この記事では、「なぜ富士電機がパワー半導体分野で強みを持っているのか」を解説します。

富士電機はパワー半導体で世界シェア5位につける

富士電機は主に発電所、変電所、産業用大型機械などの重電系事業を展開していることで有名です。しかし実際には、インフラ系を含む幅広い事業内容と製品を扱っている企業です。

富士電機が注力している半導体事業はパワー半導体分野であり、パワー半導体は大電流を扱えることから、工場の生産設備や、電気自動車のインバータなどに搭載されています。

パワー半導体の2022年世界シェアにおいて、富士電機は5.2%のシェアで世界5位につける(英オムディア調査より当サイト作成)

パワー半導体製品はファクトリーオートメーションやカーボンニュートラルなどの需要の増加に伴って世界的に需要が増えています。富士電機はパワー半導体シェアで世界5位につけるメーカーで、インフィニオンやオンセミ、STマイクロなどの世界的企業に続く高シェアの企業として知られています。

パワー半導体は、半導体全体から見るとニッチな分野でもあり、競合他社のいないところで戦うという戦略も見え隠れします。

富士電機のパワー半導体はなぜ強いか

パワー半導体の出力密度の推移、富士電機HP「富士電機レポート2022 セグメント別概況 半導体」より引用

一言で言うと、富士電機のパワー半導体が強い理由は「長年にわたる技術の蓄積」です。

富士電機の歴史は長く、パワー半導体の研究開発は20年以上続けられています。車載用パワー半導体の生産の歴史も10年以上と長く、現在の第四世代のに至るまでに出力電流密度は4倍に達しています。

開発を続ける間に、営業活動を通じて社会インフラに深く関わりながら、社会的な信頼を勝ち取ってきました。技術力に裏打ちされた長年のベテランたちが築いてきた信頼は、外国勢を含めた新しい参入者が容易に超えられない壁となっています。

富士電機の営業利益の推移(富士電機発表より当サイト作成、単位100万円)

日本の顧客との関係も、富士電機の強みの一つです。国内インフラ関連での長い納入実績を背景に、更新案件での安定した収益を確保しています。顧客との強固な関係が維持されており、多少無理なお願いでも柔軟に対応できる「手厚い対応」によって、定期的な案件の獲得につながっています。

富士電機の事業はニッチなものが多いですが、それぞれの市場で独自の強みを築き上げています。事業領域がニッチであっても、異なった事業がバランス良く分散していることも富士電機の強みです。結果、どこかの事業が弱くなっても、全体としての事業は安定していると言えます。

富士電機の弱み

富士電機の弱みの一つは、研究開発力や、新たな事業創出能力の不足です。将来の変化に対応するための危機感が不十分です。

IT化の遅れも弱点の一つです。システム化だけでなく、紙やハンコに依存して仕事が進められない状況が改善されていません。社内の平均年齢が高く、現状維持を求める傾向が強いため、周囲の変化に気づけていないようです。

IT化の遅れは、社内でのITインフラ整備により改善される可能性がありますが、新規事業創出能力は一朝一夕に実現できるものではありません。

富士電機の半導体分野への投資計画

富士電機HP「富士電機レポート2022 セグメント別概況 半導体」より引用

富士電機は、2019年から2023年までの5年間で、年間約400億円のペースで半導体分野に投資を行ってきました。2024年から2026年までの3年間で約2000億円(年間約700億円のペース)を半導体分野に投資する計画で、主に電気自動車(EV)の電力制御に必要なパワー半導体に注力するとされています。

具体的な投資計画として、2024年度から青森県五所川原市の津軽工場で6インチのSiCパワー半導体の量産を開始する予定です。これにより、ウェハのサイズを大型化し、一つのウェハから取り出せるチップの量を増やし、生産性向上が期待されます。

また、2027年度以降は長野県松本市の松本工場で8インチの大型化したウェハを使用し、SiCパワー半導体の生産を開始する予定です。このためには、ウェハに回路を形成する前工程の生産ラインを整備する必要があります。

人手不足は慢性的

積極的な半導体分野への投資に伴い、半導体部門では、需要の急増に対応するため生産体制が必要となります。しかし、半導体は非常に繊細な製品であり、開発や生産能力の増強にはマンパワーが必要となります。

口コミサイトのOpenworkでは「富士電機の半導体関連部署では人手不足が慢性化しており、結果、部署当たりの負荷が大きくなっている」と指摘されています。事業拡大に伴う痛みを、どのように緩和していくかも経営課題と言えそうです。

まとめ

富士電機のパワー半導体事業の強さは、長年にわたる技術の蓄積にあります。20年以上にわたる研究開発と、車載用パワー半導体の開発に10年以上を費やし、その出力電流密度を4倍に増加させました。この技術力と、社会インフラに深く関わる営業活動を通じて築かれた社会的信頼が、競合他社には超えがたい強みとなっています。

しかし、研究開発力の不足やIT化の遅れなどの弱点も抱えており、これらは今後の課題となります。富士電機は、2024年から2026年にかけて半導体分野に年間約700億円を投資する計画を立てており、特に電気自動車の電力制御に必要なパワー半導体の開発に力を入れています。この投資計画と技術の蓄積が、将来の富士電機の成長を支えるでしょう。

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