【初心者向け】CAEソフト&ハード導入の手順と注意すべきこと

CAEソフト

CAEを活用しようと考え、やりたいことが決まっていても、初心者にはどのソフトウェアを使えばよいのか、どうやって購入すればいいのかよく分かりません。

私自身も、ソフトウェアの選定と導入の手順や業界の常識を理解するのには時間がかかりました。

今回は、CAEソフトウェアをどのように選定すべきか、どのように導入するのか、実際の事例を交えながら解説しようと思います。

CAEソフトウェアの導入手順

手順は以下の通りです。

①ソフトウェアとライセンス構成の選定
②ベンダーの選定
③1か月程度の短期試用
④見積もり・発注
⑤納品
(⑥ハードウェアの選定)

一つずつ解説します。

ソフトウェアとライセンス構成の選定

CAEソフトウェアを選定する際に何を考えるべきことは、

・目的が達成されるか?

流体解析、静的応力解析、それらの練成、考えたい解析に必要な機能がそろったソフトウェアである必要があります。

・価格が予算範囲内か?

当然、予算範囲に収まるかどうかを考える必要があります。

・ハードウェアの要件を満たすか?

既に計算用端末(ワークステーション)を所有している場合、ソフトウェアの要件に対してハード性能が十分かを確認する必要があります。

オンプレミス、オープンソースとクラウド

ソフトウェアの提供方法は、主に以下の3つに分類できます。

・オンプレミス
・オープンソース
・クラウドベース

オンプレミスは、ローカルのワークステーションにインストールされたブログラムを指します。最も一般的で、商用のCAEソフトウェアも大半がオンプレミスです。

オープンソースは、単にプログラムのコードが一般に公開されることを意味します。無料という大きなメリットははありますが、ユーザフレンドリーかどうかは別問題で、一貫して使用し続けられるかは不明です。

クラウドベースは、ハード含めて計算環境が用意されたクラウドに接続し、ブラウザ上で操作することで利用するものです。

ソフトウェアのライセンスとは

多くの有償CAEソフトウェアは、ソフトウェア自体は公式サイトで提供されていて、無料ダウンロード・インストールを行う事ができます。

一方で、ソフトウェアを起動し操作する際にライセンスファイルを要求されます。

このライセンスファイルは暗号化されており、利用できるライセンスの種類やユーザ情報、利用期間が記録されています。

ソフトウェアを販売するソフトウェアベンダーは、契約更新の度にライセンスファイルをユーザに提供します。

一方で、保守を停止すると、その時点での最新バージョン以降は利用できなくなります。

1ライセンスに対し、同時に利用できるユーザは1人です。

たとえソフトウェアがインストールされている端末があっても、ライセンスファイルを他のユーザが使っている場合は、他ユーザは利用できません。

ライセンス形態はソフトウェアによって細かいルールが異なりますので、都度ベンダーに確認が必要です。

ライセンスの利用可能場所

ライセンスには利用可能なエリア制限がある場合があります。大企業などで複数拠点がある場合などは、確認が必要です。

例えば、契約した拠点から半径100km以内でのみ利用を許可する、などの制約がある場合があります。

近年、在宅ワークが浸透してきたことから、これらの制約は緩和される傾向にあると考えられますが、多拠点・オフィス以外でライセンスを利用する場合は確認が必要と思います。

ベンダーの選定

商用ソフトウェアを購入する場合、日本国内で販売代理店となるベンダーから購入します。

有名なソフトウェアの場合、国内で販売しているベンダーが複数ある場合があります。

ベンダー選定の基準は

・ライセンス価格が安いか
・技術サポートが親切丁寧か

ANSYSとSIEMENSを例に、ベンダー選定の例を紹介します。

ANSYS系ソフトウェアのベンダー

日本では、ANSYSの販売はサイバネットが請け負っていました。

そこにANSYS本社も日本の代理店としてアンシスJapanを立ち上げ販売を開始したため、現在はサイバネット、アンシスジャパン両社が日本で販売している状態のようです。

結果的に日本市場で顧客の奪い合いをしている両社ですが、かつては2社でユーザ会(カンファレンス)を開催していた事もあり、決して悪い仲というわけではないようです。

サイバネットとアンシスジャパンのどちらが良いかですが、どちらにも声を掛けるとよいと思います。

両社にはそれぞれに強みがあり、その違いは下記のようなものです。

サイバネット:日本市場に特化した技術情報を持つ(日本語ドキュメントが豊富)
アンシスジャパン:最新機能の情報提供スピードが早い、本社へのパイプがあるため新機能を要望しやすい

そのほかにも、流体、構造、電磁場など領域によって強み弱みもあると思われます。どちらにも声をかけるのが良いでしょう。

ソフトウェアの形態も複雑で、使える機能ごとにライセンスの種類と価格が異なってきます。
この辺りも、ベンダーに検討したい内容を伝えて、必要なライセンスの見積もりを依頼すると良いと思います。

SIEMENS系ソフトウェアのベンダー

日本でのNX、STAR-CCM+といった製品の販売代理店は、現在はシーメンスPLMソフトウェアが担当しています。

過去に、日本のベンダーであるIDAJが販売していましたが、現在はSIEMENS本体が日本に乗り込んできており、IDAJは取り扱いをしていないようです。

また、ANSYSほど多機能でもないためライセンス形態もわかりやすく、流体解析を行うためのライセンスで1本いくらか、そこに並列計算用のHPCライセンスがいくらか、といった価格構成になっています。

これも、営業担当に確認するのが良いと思います。

技術サポートとは

CAEソフトウェアは、レンタル・買取保守どちらで利用するにしても、保守費用を支払います。

この保守費用には、ソフトウェア利用時の使い方サポートの費用が含まれており、多くのソフトウェアにはサポート窓口あるいはカスタマーポータルが存在します。

ユーザは、使いたい機能について質問したり、エラーが起こった場合に原因を推定するためにサポートを利用します。

ベンダーによって技術サポートのレベルは様々ですが、長年同じソフトウェアを扱っている会社は技術の蓄積が多く、サポート対応も素早いです。

一方、最近ソフトウェアを扱い始めたり、技術サポート担当と営業が兼任している場合には注意が必要で、保守費を支払っているにも関わらず、ベンダーではなく開発元に直接問い合わせをする必要があり、適切なベンダーを選択する事は非常に重要です。

ベンダーがどれくらい顧客の声を聞いているか

CAEソフトウェアを使っていると、「もっとこの機能を充実させてほしい」「GUIを使いやすくしてほしい」といった要望が湧いてきます。

ユーザサポートに要望を伝える事は出来ますが、その要望がソフトウェアに反映されることは多くありません。

ただ、その程度は顧客により、大口顧客ほどニーズを聞き入れてもらいやすい、という実情があります。

新機能については、まずは一般的な機能拡充を図る、次にユーザのニーズから機能を追加する、という優先順位のように感じられます。

ライセンスをたくさん購入している顧客の要望をなるべく叶える、という姿勢が強いようで、日本では超大企業に特注されて追加した機能が、後にソフトの新機能として追加されることもあるようです。

そのため、大規模ユーザの技術サポートを対応するうちに機能として実装され、結果的に大規模ユーザの方がアップデートの要望が通り易いという面もあると思います。

1か月程度の短期試用

ソフトウェアを選定したら、短期の試用をします。100万円以上の買い物ですので、試用は必須です。

ベンダーによりますが、最長1か月程度は無料で試用ライセンスを発行頂くことができます。

その間に、①で述べた「考えたい解析」が実現可能かどうか、実際にソフトウェアを使って検討します。

ここでは、

・ソフトウェアの操作性は悪くないか
・サポートの対応は良いか(レスポンスが早いか、正しい答えが返ってくるか)

なども確認しておくとよいでしょう。

他事で忙しくこの1か月で検討を完了できない、ということのないように注意をしましょう。

見積もり・発注

ソフトウェアの有効性が判断出来たら、公式HPなどから営業担当にコンタクトし、必要なライセンス構成を伝え、見積もりを取得し、発注します。

価格交渉を行う事もできますが、ベンダーによって営業担当の裁量範囲内で調整できる金額に幅があります。

また、③期間限定の試用で便宜を図ってもらっているのであれば、過度な価格交渉は相手に失礼になる事もあるので注意が必要です。

ライセンス価格と販売方法

CAEソフトウェアは非常に高価です。当然、価格はソフトウェアにより異なります。

ライセンスの販売方法は、大きく「買取保守」と「レンタル」に分けられます。

住居でいうところの「購入」か「賃貸」のようなものです。

買取保守は、最初に「買取」という形で大きなお金を支払いソフトウェアを購入し、そのあとは保守費用を支払います。

一方のレンタルは、毎年レンタル費用を支払うというものです。

買取保守とレンタルの価格は、以下のような関係にあることが多いです。

レンタル・買取どちらが良い?

レンタル・買取の選択は、利用期間によります。それぞれの金額は

買取保守=ソフトウェア買取価格+年間保守費用(保守費用は買取価格の1/4が相場)

レンタル価格=買取価格の1/2〜1/3程度/年

が相場ですので、以下のような関係になります。

たとえば、レンタル価格300万円/年のソフトウェアを買い取りした場合とレンタルした場合の累計の金額差を見ると、4年以上使うのであれば買取で元が取れます。

このように、見積もりをレンタル・買取どちらも取得し、利用期間から判断すべきです。

大きな初期投資ができない場合もあると思いますので、個々の事情に応じて選択が必要です。

平均的なライセンス価格

ライセンス価格はそのソフトウェアの汎用性や高度さやニーズの多さ、使っているユーザの質によってさまざまで、一概には言えません。

私の勝手な印象では、平均的な価格はレンタル価格で100〜300万円/年・ライセンスで、ハイエンドなソフトウェアや、マニアックな機能を備えたソフトウェアだと500万円/年・ライセンスを超えます。

また、HPC(High Performance Computing)のための、計算実行時の並列数(多いほど計算実行時間を短縮できる)ごとにライセンス価格が上がる傾向にあり、流体解析系のライセンスなどは、8並列追加に年間数百万(レンタル)というのがザラです。

ライセンス価格の裏事情

ちなみに、ライセンス価格には裏事情があります。

それは、販売相手(ユーザ)によって、ライセンス価格が異なるという事です。

特に、多くのライセンスを購入する超大企業は、(その程度は不明ですが)ディスカウント=特別割引が適用されていると考えられます。

また、一般的にはライセンス単価×ライセンス数の価格で購入しますが、購入企業内でライセンス数無制限で使い放題となる「カンパニーライセンス」を取り扱うベンダーも存在しています。

カンパニーライセンスは非常に高価(億単位と思われる)ですが、ユーザ数の多い企業には大きなメリットがあります。

納品

納品されたら、実際に使っていきましょう。

まとめ

CAEソフトウェアの導入の手順と注意すべきことをまとめました。

参考になれば幸いです。

参考:ハードウェア

ハードウェアの選定要件は、以下の記事にまとめています。

ハードウェアも同時に導入したい場合は、こちらもご覧ください。

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