無数に存在するCAEソフトウェアのなかで、ユーザに高く評価されている傑作5選を紹介します。
CAEソフトウェアとは
CAE(computer-aided engineering)ソフトウェアは、物理現象を数式化したプログラムを、一般のユーザにも利用しやすいようにソフトウェア化したものを指します。
有限要素解析(FEA)、数値流体力学(CFD)、マルチボディダイナミクス(MDB)、最適化機能などの機能を持ち、設計者は、CAEソフトウェアを用いて、実際にモノを作る前に、現実の現象を模擬して、実験の結果を予測します。
CAEソフトの最高傑作はどれか?
無数に存在するCAEソフトウェアの中で、ユーザに「利用しやすい」と評価されているソフトウェアはどれなのか。
米ソフトウェアのランキングサイトg2.comのレビューから、レビュー評価の高いソCAEフトウェアを紹介します。
評価は、ユーザの顧客満足度とソフトの公開情報、および第三者の評価情報をもとにg2.comが独自にスコアリングしています。
Fusion360
レビュー評価が最も高いのは、Fusion360です。無償利用も可能なFusion360は、日本国内でもユーザが多いソフトウェアです。
Fusion 360のユーザーインターフェースは、シンプルでありながら優れた設計機能を備えていると評価されています。製品シミュレーションや3Dプリンタ用のモデル作成を簡単に行うことができるプラグインも高く評価されています。
また、プロトタイピング機能も、製品設計の編集や詳細の追加に役立つ機能として人気があります。
一方で、頻繁に使用するツールに簡単にアクセスするためのショートカット機能が不足していると指摘する声も聞かれます。
筆者の見解: 私もFusion360を使います。3D CADに初めて触れる方、個人で遊んでみたい方など、初心者向けで使いやすいと考えます。ライセンス価格が低いこともあり、個人のデザイナーや事業家も利用しやすいことが高評価の一因と考えます。一方で、大企業でFusion360を商用利用しているという声はあまり聞かれません。製造業のCADと言えばCATIA、CAEと言えばANSYSやAbaqusが主に利用されるソフトウェアです。小規模事業者が少額投資でCADやCAEを始めるのには向いていると考えます。
MATLAB
Matlab は、データ解析や可視化のための非常に強力で多用途なツールです。
直感的なグラフィカルユーザインタフェースから、包括的な関数ライブラリに至るまで、使いやすさを追求した幅広い機能を備えています。
また、さまざまなプログラミング言語に対応しているため、他のソフトウェアとの統合も簡単です。
Matlabは、カスタム可視化機能をすばやく簡単に作成できるため、データ解析や探索のための貴重なツールとなっています。さらに、同僚とコードや結果を簡単に共有できるため、共同プロジェクトに最適です。全体として、Matlabは強力で多目的なデータ解析と可視化ツールを探している人にとって、優れた選択肢となります。
一方で、価格が高価、基本を理解するのに多くの時間と労力を必要とする、などのレビューも見られます。
筆者の見解: MATLABは、2010年頃までは、大学などでの基礎研究に使われることの多いソフトウェアでした。大企業では制御系で使われる程度で、CAEという色は弱かったのですが、近年、MBD(モデルベース開発)が注目され、MATLABが徐々に市民権を得るようになっています。 CAE業界から見ると異端児で、そのために基本を理解するのに多くの時間と労力を要する、というレビューは納得がいきます。CAEをやりたい!というモチベーションで最初に選ぶソフトウェアではないと思います。
SOLIDWORKS
Solidworksは、ユーザーフレンドリーなインターフェイスと、オンラインフォーラムやチュートリアル(技術的な問題が発生したときにユーザーが解決策を見出すのに役立つ)を評価するレビューが寄せられています。
製図や解析などの機能により、3Dプリント ビジネスに適した設計ツールであると評価されていますが、ソフトウェアが高価すぎるとのレビューもあります(特に月額サブスクリプション)。
過去のバージョンで作成されたCADを、最新版に引き継ぐ際の互換性の高さも評価が高いところです。
筆者の見解: Solidworksは、CADとして個人的高く評価しているソフトウェアです。安定して動作し、操作性が良く、価格も手ごろ(法人感覚で)なSolidworksは、初めてのCADとしても、長期的に利用するCADとしてもお勧めができます。CADとしてはミドルクラスのソフトウェアですが、CAE機能も拡充されつつあります。 2015年頃までは、SolidworksのCAE機能は実用に耐えないものという認識でしたが、それから数年経過して、現在はかなり充実していると思います。コスパの面で、筆者もお勧めしたいソフトウエアです。
Simcenter 3D
シーメンス デジタルインダストリーソフトウェアのSimcenter™ 3Dソフトウェアは、CADと物理シミュレーションを含めたCAEソフトウェア群を指します。製造業でよく利用されています。
シーメンスが様々な企業のCAEソフトウェアを買収しまくり、Simencenterの箱にぶち込んで販売しています。あまりにも買収劇が続くことから、もはやSiemncenterの中身を完全に理解している人がいないのではと思うほどに充実しています。
いずれのソフトウェアも、ユーザにとって使いやすく、他ソフトウェアとの連携も意識されているため、使いやすいソフトウェアというレビューが見られます。
筆者の見解: シーメンスと自動車系の製造業はズブズブの関係です。自動車会社に入社すると、必ず社内にシーメンスのソフトがあるはずです。様々なジャンルの高度なシミュレーションが可能で、使いやすいソフトウェアが多く、費用度外視であれば、私はシーメンス製品が世界一良いと考えています。 「費用度外視であれば」と書いたように、シーメンス製品はライセンス費用が高価です。費用に対して効果を見出せるかどうかが、導入の判断材料になりそうです。
ANSYS
ANSYSも、Simcenterと同様に、様々なツールが詰め込まれた製品群です。
特に自動車系で利用実績が多く、DENSOは構造系のCAEソフトウェアをANSYSに統一するなど、広く利用されています。
筆者の見解: ANSYSには歴史の長いソフトウェアが多く、UIも昔の流れで残っているものと新規機能がごちゃまぜになっており、使いやすいツールとは言いにくい側面があります。一方で、製造業で古くから使われているソフトウェア(AbaqusやMarc)と比べれば使いやすい、という理由で選択する企業もあります。 ANSYS Discoveryなどの全く新しいツールも開発し、市場に投入しています。及第点です。
どのソフトウェアを選ぶべきか
上記で紹介したソフトウェアは、どれも使いやすい素晴らしいソフトであることは間違いありません。いずれを利用するのがよいか、判断軸をいくつか紹介します。
機能で選ぶ
まず、自分の必要とする機能が備わったソフトウェアであるかを確認します。
導入して、やりたいことができるのか、を最も重視すべきです。
業界の特色で選ぶ
CAEソフトウェアによって、利用される業界が大きく異なります。
Fusion360は製品デザインでの利用頻度が高く、MATLABは教育機関での利用が多い、Solidworksは機械設計のエンジニアが使うことが多い、など、ユーザがソフトウェアごとに分かれています。
自身の活用目的や、自分の産業界での他ユーザが何を使っているのかを調べることも必要です。
実際に操作してみる
ソフトウェアの使いやすさは重要な指標です。
購入検討のための試用ライセンスを無償で提供してくれるベンダーも多いです。問い合わせてみましょう。
試用の際に、技術サポートのレスポンスの良さ、知見の深さも意識してください。
価格で選ぶ
最後は価格です。
予算内に収まるかどうか、収まらなければ、価格の交渉やライセンス種類の変更など、価格面での調整も必要になります。
まとめ
CAEソフトウェアの最高傑作を紹介しました。国内でよく使われているCAEソフトウェアは下記5本です。
Fusion360
Solidworks
Matlab
Simcenter 3D
ANSYS
他にもニッチな機能を攻めたソフトウェアは無数に存在しますが、まずはこの5本から選んでみるのがよいのではないでしょうか。
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