2017年12月13日、Panasonicとトヨタ自動車が、「車載用電池の開発というテーマでの協業」 を発表。
リチウムイオンバッテリー(LIB)の開発などを協業するとの事。
車載用電池の業界ナンバーワンのパナソニックと、市販EVで実績の少ないトヨタが組む事が、どのような意味を持つのか、また今後どのような展望が期待されるのか。
自動車産業は激変期
今自動車産業では、電動車の立ち上がりにより、市場環境が劇変、産業自体も大きく変わろうとしている。
100年に一度の変化とも言われている昨今、国内自動車メーカーはあの手この手で生き残りをかけて戦っている。
トヨタは、「日本で競争力のある電池を開発、安定供給する」事が重要だと考え、今回の協業に至っている。
トヨタとパナソニックと言えば
今回の協業とはなーんにも関係ないが、トヨタがF1に参戦していた時代、パナソニックがスポンサーとしてお金を出していた事もあったなと思い出した。
開発する角形LIBとは
https://industrial.panasonic.com/cdbs/www-data/pdf/ACA4000/ACA4000PJ3.pdf
パナソニックが既に手を握っているテスラに供給するのは「円筒型」のLiイオン電池。
一方今回開発を進めるのは「角形」と呼ばれるもの。
体積エネルギー密度を上げるためには、現行の円筒型では限界があると考えた模様。
Li金属負極電池開発においては、
・電解液とLi金属との副反応の抑制
・Liデンドライトの成長抑制
が今後の課題となると考えられる。
トヨタはLIB研究に積極的でない?
トヨタがEV開発に積極的でない事は以前から言われているが、その実情を物語るデータがある。
JDreamⅢにより収集した論文を対象に、トヨタ自動車の技術文献の俯瞰図を作成したものがこちら。
※2015年に調査
網羅的に研究開発を行うトヨタ
http://jdream3.com/guide/download/analysis_02.pdf
このコンターは、赤い部分ほど技術文献が出ている=積極的に研究している、と捉える事ができる。
ここから、トヨタが次世代二次電池に力を注いできたが、Liイオン電池にはそれほど力を注いでいなかった事もわかる。
今回の協業によるオープンイノベーションに踏み切った理由も推察できる。
次世代二次電池とは?
次世代二次電池は、「全固体電池」に代表される、よりエネルギー密度の高い電池を指した用語。
トヨタ・パナの協業でも、共同開発を進めるとのこと。
全固体電池は、
・高エネルギー密度(現行Liイオン電池比)
・燃えない
・高充電 電圧化が可能
などのメリットを持つ次世代蓄電池である。
特に、不燃であるために安全機構が不要で、体積当たりのエネルギー密度を大きくしやすい。
https://www.panasonic.com/jp/corporate/technology-design/ptj/pdf/v6301/p0110.pdf
パナソニックの試算によれば、全固体電池は理論エネルギー密度で800 Wh/kg以上、実電池では300~400 Wh/kgになると考えられる。
一方で、
・Li+伝導度が電解液に比べ低い
・電解質/電極 間の接合が難しい(界面抵抗が大きい)
などの課題も多い。
トヨタ・パナソニック共に硫化物系の固体電解質を用いている。
パナソニックの全固体電池に関しては、
電解質:LSPS
正極:ニッケル酸化リチウム
負極:インジウム
を用いているとのことで、充放電特性は以下のようなものが得られているとのこと。
※コイン型全固体電池
https://www.panasonic.com/jp/corporate/technology-design/ptj/pdf/v6301/p0110.pdf
電解液(黒線)に対し、固体電解質の放電は8割程度。
未だ開発段階ではあるが、電解液のLIBに対してさほど劣らない性能が出ている模様。
全固体電池の競合他社としては、日立造船、TDKなど。
まずはLIBでの協業でEVやPHVの開発を進め、その後次世代電池を使った車両開発なども進めていくものと考えられる。
日本の自動車メーカーが世界に置いて行かれないように、頑張って頂きたいものだ。
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