私は、メーカーで10年間CAE専任者として働いてきました。
10年間で何となく分かってきた、「CAE専任者が仕事を進めるうえで大事にすべき考え方」を紹介したいと思います。
初めから複雑な計算をしない
計算で物理現象を予測する際、全ての現象を考慮した複雑な計算をやりたくなりがちです。
たとえば、ペットボトルが熱で潰れていった際に中の水がどう動くのかを考えたいとします。
これを解くためには、熱によるペットボトルの大変形と、それによる中の流体の流動と、更には熱による内部の対流現象まで考えないといけない。
が、これらを最初から組み込んだ計算をすることは現実的ではありません。
なので、まずは「熱でペットボトルがどう変形するか」を解き、次に中の流体の流れを解き、最終的に流体に与えられる熱まで解く、という3つのステップに分けます。
理由は主に2つ
・計算が収束しない際に問題を切り分けるため
・計算結果が実測と一致しない場合に原因を切り分けるため
いずれも、「うまくいかなかったとき」を想定しています。実際、往々にして計算はうまくいきません。
上手くいかないときの対処の優先順位
①形状
②メッシュ
③境界条件
④計算スキーム
経験的なものですが、計算がうまく回らない原因は形状・メッシュであることが非常に多いです。
なので、
・まずシンプルな形状から試す
・シンプルな境界条件で計算する
を試してみて、うまくいったところから、複雑な形状や境界条件に変えていきます。
対処法として、0からもう一度やってみる、という方法もアリ。条件設定の履歴が何かしら残ってしまい、発見が困難な場合もあります。
定常作業は、ひたすら自動化・効率化を考える
シミュレーションの良いところは、究極人間が何もしなくても良いところまで持っていける点。
内製コードであれ市販ソフトウェアであれ、条件設定から計算実行まで自動化できるソフトがほとんどなので、自動化をします。
・CAEは必ずどこかで失敗するので、やり直しする際に効率が良い
・パラメトリックスタディを実施する際に、圧倒的に効率がよくなる。
想定通りの結果がでて喜ばない、想定外の結果が出て落胆しない
CAEで幸い計算結果が得られても、想定したような結果が得られない事が(高い割合で)あります。
思った方向に曲がらない、変な所に応力が出ている、など挙げるときりがありません。
ただ、想定外の結果が出たからといって、その結果をすぐにゴミ箱に投げないように気をつけないといけません。目に穴が開くほど結果を見て、何が違ったのかをしっかり考察します。
パラスタをするのであれば、複数の条件を入れたら、1つ目だけ見て、あとは終わるまで見ない。
応力が〇MPa以下になるようにパラメータ考えてみたけど、なんか微妙だな…途中だけど止めてしまおう、などという事は絶対にしない。そのように優柔不断にその場のノリでやっていると、前提条件がマチマチの何にも使えないデータだけが残ってしまいます。
「こんな形状作れない」は誉め言葉
CAE解析で、性能目標を達成する見込みのある設計寸法が見つかったします。
私はCAE専任者なので、設計・生技のことは正直よくくわかっていません。わかっていない故に、往々にしてあるのが「こんな形状は作れない」と言われます。
ただ、私はこれをほめ言葉だと捉えています。なぜなら、CAEであれば”作れない形状”を評価し「もし作れればこんなに性能良くなります!」という可能性を示すことができるから。
結果として、自分の成果につながる事が多いです。
誰でも使えるようにする
「自分にしかできない仕事」に価値はない、と考えています。
誰にでも出来る形にしてこそ、仕事のやり方が変わり、会社に貢献できます。
誰かに仕事を取られると思うのではなく、だれかにやらせて成果を共有する事を考える(ここが大事、共有することで自分の理解も上がる)。出来る人間は多い方がいいし、その方が自分の成長速度も上がります。
CAEを誰でも使えるようにする方法は、
・手順書を作る、あるいは誰かに教えて作らせる
・全自動化してボタン一つで実行できるようにする
・CAE結果を代理するサロゲートモデルを作る
など様々考えられます。上記が全てではないと思っていますが、自分のなかのアイデアはこのあたりかなと。
一日中画面をみることは健康に悪い
最期は健康に関する事ですが、CAE専任者は、モニタを見ることが仕事だが、あまり長時間モニタを見続けると体全体に悪影響がでます。
リフレッシュは必要。
・1時間に1度は離席する
・モニタと顔を近づけない
・モニタの輝度を下げる
・意識的に目をつむる
・モニタを見たまま考え込まない
など。
CAE解析を生業としている方の参考になれば嬉しいです。
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