自動運転実現のネックと言われているのが、 センシング技術 「LiDAR(ライ ダー)」です。
自動運転の”目”となる役割を持ち、LiDAR開発が順調に進む企業は、今後5-10年で成長が見込めます。
今後成長の見込めるLiDAR市場を獲得するのはどの企業なのでしょうか。
特許出願数(2023)
出願されている特許数でランキングを作ると以下の通りです。
出願国を絞らずに作成しているため、同じ内容で重複する特許が含まれる可能性がありますが、重要特許ほど複数国で出願するため技術的な競争力は推し量れるものと考えます。
米国出願特許数では Bosch が首位
特許数でのLiDAR特許数の首位はBoschです。
Boschは、世界最大の自動車部品メーカーです。その規模は巨大で、もはや部品メーカーと呼ぶには恐れ多い、自動車全体のソリューションを提供するメガサプライヤーです。
ボッシュは、現在最も重要で広く使われているセンサーの1つであるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサーのパイオニアであり、マーケットリーダーでもあります。
特許出願数の推移でみても、ボッシュが圧倒していることが分かります。2位のQualcommは2018年頃から特許出願数を大きく増やしており、ボッシュに追随しようとしていることが見てとれます。
8位にGoogleの自動運転部門 Waymo
2位のWaymoは、Google傘下の自動運転企業として知られています。
Waymoは2010年ごろから、トヨタプリウスに自動運転モジュールを取り付けた自動運転車を開発。既に米国内の公道での商用利用も始まっています。(にもかかわらず、Waymoは非上場企業です)
ウェイモのLiDAR技術は業界最先端と言われており、同社は「Waymo LiDAR」と呼ばれる独自のカスタムLiDARセンサーを開発しました。
このセンサーは、従来のLiDARセンサーよりも小型でコンパクトであり、より遠くの物体をより高い解像度で検出することが可能です。また、Waymoは自動運転を実現するために、Lidar、レーダー、カメラを組み合わせて使用しています。
4年前の米国特許出願数のランキングでは、waymoが1位でした。
ランキング外の注目企業
特許数の少ない企業であっても、LiDAR売り上げが上位に入るような企業は注目に値します。
特に、気鋭の新興企業は、重要特許を出願するにとどめている場合が多く、特許数だけで技術力を図ることができません。
AEVA は米国のLiDAR開発企業
AEVA(エヴァ・テクノロジーズ)は、米国のLiDARシステム開発の企業です。元AppleエンジニアのSoroush SalehianとMina Rezkによって2017年に設立され、既に上場しています。
Aeva社の4D LiDARセンサー「Aeries II」を搭載したトラックが、CES 2023のエヴァのブースで展示されています。
Luminar Tec は車両への採用も進む
Luminar(ルミナー) はLiDARメーカーとして知られます。
LuminarのLiDARは、ボルボのEX90(2024年発売)や中国のEV Rising Auto R7に搭載されています。
国内では、日産も実験車両に搭載していることや、トヨタの研究機関(TRI)との技術提携を進めている事が知られており、今後自動運転が実用化されるにしたがって成長している企業です。
老舗、VELODYNE
LiDARの老舗メーカーとしてよく知られるVELODYNE も知っておくべき企業です。
Velodyneについては、産業の発端となったLiDARセンサーであるVelodyne Lidar HDL-64Eが有名です。既に自律走行車や産業アプリケーションで広く使用されています。
2009年、Gooleは開始した無人運転車に関する極秘プロジェクトを発表。
このプロジェクトでは、トヨタ自動車のプリウスをロボット化し、人間がハンドルを握ることなく走行するものです。ルーフのフラックに回転するVelodyneのライダーセンサー「HDL-64E」が搭載され、サンフランシスコのベイエリア周辺のテクノロジーファンたちの目に留まりました。
日本企業の特許出願状況
日本の企業に限定すると
日本の企業に限定すると、以下のような企業群がLiDAR特許を出願しています。
SONYやホンダは、自動運転に向けた技術開発の中で特許を出願しているものと考えられ、同様にデンソーやパナソニックも自動運転向けLiDARの特許出願を行っているものと考えられます。
LiDARとは
レーザーを照射し散乱光を測定、 対象までの距離や性質を分析するもので、 自動運転における 「目」 としての機能を果たすものです。
「“LiDARの小型化”が自家用車の自動運転実現のネックとなっている」と、トヨタ自動車の常務役員はCDNLive Japan 2018での講演で述べています。
現状、デザイン上の制約から、センサー類はなるべく外観に出ないように配置する必要があり、認識精度の悪いフロントグリルなどに設置するしかありません。小型化できれば搭載可能場所が増えるため、自家用車への適用も視野に入ってくるようです。
トヨタ自動車は、2025年頃にはLiDARの小型化に目途が立つと考えているようです。LiDARメーカー各社は、小型化に注力しています。
市場も注目している
LiDARやレーザーの市場規模は2017年の約25億円から2030年には約4959億円まで約28倍に急拡大すると予測されており 、 投資家に最も注目されている市場でもあります。
一方、株価安定(IR活動)のために「LiDARを開発している」 と公言しているメーカーもあり、 本当に強いメーカーがどこなのかは見えにくい状況でもあります。
そこで今回は、 国際特許情報から、 LiDAR開発で最も先行しているメーカーを調査しました。
国際特許データベース(WIPO https://patentscope2.wipo.int/search/ja/search.jsf)の検索結果から、LiDAR の研究開発動向を調査した。「結果の分析」 欄から、 出願人のランキングを確認しています。
今後の展望
トップランナーであるBoschはCES2023で長距離LiDARセンサーを展示しており、waymo は2018年に短距離向けLiDARの販売を開始しています。
量産化の点ですでにwaymoが一歩リードしており、 ここにVelodyneやLuminarなどが追従するものと考えられます。
しかし、LiDARの技術開発は未だ道半ば。今後も動向を注視していきたいところです。
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