合成燃料とは何か?メリット・デメリットと実用化の目途

自動車業界

近年、環境問題とエネルギー安全保障の懸念から、持続可能なエネルギー源への需要が高まっています。その中で、合成燃料が注目を集めています。合成燃料は、二酸化炭素(CO2)と水素を組み合わせて作られる「人工的な原油」とも呼ばれる燃料です。

この記事では、合成燃料の定義や必要性、供給企業、実用化の見通し、そして代替エネルギー源との比較などについて詳しく説明します。

合成燃料とは

ENEOS資料 カーボンニュートラル社会の実現に向けたENEOSの合成燃料技術開発の取り組み

合成燃料は、二酸化炭素(CO2)と水素でつくる燃料です。

合成燃料は、二酸化炭素(CO2)と水素を組み合わせて作られる燃料です。そのため、合成燃料は保有車からのCO2排出を減らすことにつながります。走行時にCO2を排出しますが、製造時に使った分と相殺して排出を実質ゼロにすることができます。

合成燃料はガソリンや軽油、航空機の燃料(SAF)として使用されます。

SAFとe-fuelの違いは?

航空機用の合成燃料は”Sustainable Aviation Fuel”とも呼ばれ、再生可能代替航空燃料として知られています。基本的にe-fuelと同じものです。

原材料の生産・収集から燃焼までの過程でCO2排出量が少ない持続可能な供給源から製造される航空燃料です。

www.formula1.com

合成燃料はしばしば「e-fuel」とも呼ばれます。

自動車レースの最高峰として知られるF1のパワーユニットは、2026年から完全に持続可能な100パーセント合成燃料で走ることになります。

つまり、F1では新たな化石燃料が燃焼されることはなく、非食糧資源や廃棄物、あるいは大気中の炭素が利用されるだけとなります。

合成燃料:二酸化炭素(CO2)と水素でつくる燃料

合成燃料注目の背景

EV一辺倒だったEUが、2035年以降も合成燃料使うエンジン車販売許容したことが、合成燃料に注目が集まる背景にあります。

EUでも、自動車産業をもつドイツがEVへの急激な移行を避けた形で、ガソリンエンジンを搭載した車が販売できることになり、合成燃料を使った環境負荷の小さいエンジン車の開発が行われています。

合成燃料を供給する企業

合成燃料を供給する企業は数多く存在します。以下はその一部です。

企業名業種
出光興産株式会社石油開発・精製・販売
富士石油株式会社石油開発・精製・販売
ENEOSホールディングス株式会社石油開発・精製・販売
株式会社やまびこ農業機械・農具
コスモエネルギーホールディングス株式会社石油開発・精製・販売

以下、いくつか実際に合成燃料のプロジェクトが動いている企業を紹介します。

出光

出光プレスリリースより

出光興産は南米・北米・豪州などで合成燃料(e-fuel)の製造を行うHIF Globalと戦略的なパートナーシップを結んでおり、合成燃料の生産や日本での実用化・普及を加速させる取り組みを行っています。

e-fuelそのものを開発しているわけではなく、海外プロジェクトから合成燃料を調達しているようです。

ENEOS

ENEOS資料 カーボンニュートラル社会の実現に向けたENEOSの合成燃料技術開発の取り組み

ENEOSホールディングスは、ジェット燃料、軽油、ガソリンを含む液体燃料製造全域をカバーする技術開発を推進しています。

また、パイロットプラントで製造された合成燃料は各業界での実証に利用される予定であり、2030年代には導入拡大とコスト低減を目指し、2040年までに自立商用化を目指す国の方針に合わせて取り組んでいます。

自動車OEMは実用化に向けて実証を進める

マツダ構内に設置されている次世代バイオ燃料給油施設とCX-5実証実験車

自動車OEM各社は、合成燃料がエンジン車で問題なく動作するように試験を進めています。

産総研 産業技術総合研究所における合成燃料技術開発に関する取組より

産総研のプロジェクトの中で、合成燃料を使ったエンジンの噴霧特性や着火・燃焼特性を評価する技術開発が行われています。

いつ実用化されるのか?

ENEOS資料 カーボンニュートラル社会の実現に向けたENEOSの合成燃料技術開発の取り組み

経済産業省は、合成燃料の導入拡大を2030年に予定しています。

この計画に向けて、各企業は研究開発やプラント建設を進めている状況です。

実際の普及期は2035年以降との見方が強いですが、世界的な環境負荷低減の圧力が強まれば、普及が早まる可能性もあり、政府は早めにマイルストーンを置いた形となります。

合成燃料と代替エネルギー源との比較は?

合成燃料は、持続可能なエネルギー源と比較した際にいくつかのメリット・デメリットも存在します。

合成燃料のメリット

ENEOS資料 カーボンニュートラル社会の実現に向けたENEOSの合成燃料技術開発の取り組み
  1. 常温で液体: 合成燃料は常温で液体であり、エネルギー密度が高い特徴があります。そのため、既存の燃料インフラを活用することができ、エネルギーの供給や利用においてスムーズな移行が可能です。
  2. 混合利用の可能性: 合成燃料はバイオ由来の液体燃料との混合利用も可能です。これにより、複数のエネルギー源を組み合わせることで、持続可能なエネルギー供給の幅を広げることができます。

合成燃料のデメリット

ENEOS資料 カーボンニュートラル社会の実現に向けたENEOSの合成燃料技術開発の取り組み
  1. コストの高さ: 合成燃料の製造コストは、ガソリン価格の2〜5倍に相当するとされています。経済産業省によると、合成燃料の製造コストは1リットルあたり300〜700円になるとされています。そのため、製造コストの低減が課題となっています。
  2. 原料への依存: 合成燃料の製造には、安価な再エネ水素と高濃度のCO2が必要です。再エネ電力の価格が低下することが必要であり、価格低下には時間がかかると見込まれています。

コストについては様々な試算が行われており、その経済性は、再エネ電力の価格によって、良くも悪くも考えることができます。

電力価格が低ければ、燃料コストは低く抑えることができますが、国の目標コストを下回るのは2050年以降との見方が強い状況です。

合成燃料の将来の市場需要と供給のバランス

合成燃料の将来の市場需要は増加の傾向にあります。例えば、EUは2035年以降の新車販売においてCO2を排出しない車のみを認める方針を転換し、合成燃料の利用に限ってガソリン車の販売を認めることを検討しています。また、国際民間航空機関(ICAO)は国際線の航空機が排出するCO2を2050年までに実質ゼロにし、2024年以降は2019年比で15%削減する方針を掲げています。

経済産業省は商用化後、合成燃料の日量1万バレル(159万リットル)を目標に量産し、価格の引き下げにつなげる計画です。また、日本政府も2030年までに国内航空会社の燃料使用量の10%を持続可能な航空燃料(SAF)に置き換える目標を掲げており、大量生産や供給網の整備が急がれています。

将来の市場需要に対して、供給側の技術開発とインフラの整備が重要です。現在、多くの企業が合成燃料の研究開発や製造技術の向上に取り組んでおり、供給量の増加とコストの低減を目指しています。

まとめ

合成燃料は、持続可能な未来のエネルギー源への道を開く重要な要素です。二酸化炭素と水素を組み合わせて製造される合成燃料は、保有車や航空機からのCO2排出を減らすことができます。また、既存の燃料インフラを活用することや他のエネルギー源との混合利用も可能であり、持続可能なエネルギー供給の実現に貢献すると期待されています。

しかしながら、合成燃料の製造コストや原料への依存などの課題も存在します。経済産業省や各企業は2030年までに合成燃料の導入拡大を目指し、研究開発やプラント建設などを進めています。

今後も動向を注視していきたいと思います。

参考文献:

カーボンニュートラル社会の実現に向けたENEOSの合成燃料技術開発の取り組み
合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会

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この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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