今後、生き残る自動車メーカー

技術系読みもの

21卒の就職活動が始まり、Youtubeにも「企業の将来性をどう判断すべきか」という就活動画が出回っている。

要するに「安泰な会社ってどこ?」という話である。

そんなテーマを扱った動画の1つに、面白いものがあったので紹介したい。

「企業の将来性」を判断する基準

この人は、新卒が20~30年務める会社の将来性を予測する事は不可能だと言っている。わかるわけがない。

ざっくり将来性を予測するのであれば、

・時価総額を上から並べる
・営業利益で比較する

という事をすれば、強い企業はわかる、とのこと。ただ、このおっさんは具体的にリストを示したりはしないようだったので、調べてみた。

時価総額を上から並べる(上場企業)

まずは、日本の上場企業の時価総額を上から並べた。

上からトヨタ自動車、NTTドコモ、日本電信電話、ソフトバンクグループ、ソニー、キーエンス…と、誰もが知っている企業が並ぶ。動画のおっさんの意見によれば、新卒はこのリストの企業を上から受けて、受かったところに入社すればよい、という事らしい。

正直、私も異論はない。時価総額は現在の企業への期待値を表すものと考えるので、将来性を表しているといっても間違いではないと思う。

時価総額を上から並べる(自動車)

2020年3月

私は自動車メーカーの人間なので、(規模感をよく知っている)国内自動車系を並べてみた。

時価総額でトヨタ、ホンダに次ぐのはスズキ、SUBARUであり、国内売り上げ3位の日産自動車は5位であった。

ここが将来性に関する議論のミソで、いま販売台数が多い企業と、将来性のある企業は別物だということだ。

自動車各社の純利益推移

自動車に関して、純利益を比較した(2011~2019年)。
純利益は、販売台数が多いほど稼ぎやすく、トヨタ、ホンダ、日産の順。およそ一般的なイメージ通りである。また、純利益の順位が毎年大きく変化する事はない。

一方、営業利益率での比較を見てみると意外な結果であった(2013~2019年)。

ここ数年、SUBARUやスズキの利益率が高い傾向にある。これは先ほどの時価総額の傾向とも一致しており、将来性のある自動車メーカーとしてこれらが当てはまる。

なぜこの2社は利益率が高いのか。

SUBARUに関しては、利益の確保しやすい中・大型車にターゲットを絞っている、すべての車種を一つのプラットフォームで開発し開発コストを抑えている、米国市場でシェアが大きく売り上げが安定している、という3つの要素が要因である。プラットフォーム統一での開発は、日系、欧州含め各社苦労している分野であり、先行するSUBARUに優位性があるのも頷ける。

スズキは、中国とインド、発展途上国での需要が好調に推移していることが主要因。スズキの主要市場であるインドで近年大幅な需要増もあった。今後、北米、中国と並ぶ主要市場となるであろうインドの市場シェアを握っているスズキは、十分将来性があると言える。
2019年8月、トヨタがズスキと提携したが、トヨタの狙いはこのインド市場が喉から手が出る程欲しいためである。一方のスズキは、インドで導入される排ガス規制(ニューデリーの深刻な空気汚染を受けて検討中)に対応するため、トヨタのハイブリッドシステムが欲しいのも相まった背景がある。

自動車業界に絞って分析した限りでは、Youtuberのおっさんの言っている事は(ある程度)正しいと考える。就活生や暇な社会人の参考になれば幸いである。

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