次世代EVの構成要素と主要なメーカー・サプライヤー

自動車業界

電気自動車(EV)は、リチウムイオン電池と、駆動システムであるeアクスル、そして車載コンピュータが重要な役割を担うようになっています。私たちがスマートフォンに欠かせないバッテリーとコンピューターの役割が、EVにおいても大きな存在感を持っています。

この記事では、EVにとって重要な構成要素と、それぞれを開発・供給するメーカーについて解説します。

電気自動車(EV)にとって重要な部品

EVを作るため重要な構成要素は、リチウムイオン電池eアクスル車載コンピュータです。

リチウムイオン電池は、ガソリンに代わるエネルギーを蓄えるための装置として、床下に搭載されます。eアクスルは、駆動用のモーターやインバーター、そして減速機などをモジュール化したもので、駆動輪の近くに設置されます。

車載コンピュータは、スマホと同じようなプロセッサが採用され、EVは走るスマホのような存在となりつつあります。車載コンピュータは統合ECUとして搭載され、座席下やトランクなどに搭載されます。

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、電気自動車(EV)などに主に使われる電池です。NMCと呼ばれる三元系の正極を使うタイプと、LFPと呼ばれる廉価な電池を使うタイプがあります。この二つのタイプは、市場の約半分ずつを占めています。

リチウムイオン電池の性能次第で航続距離が決まるため、EVの構成部品の中でも最も注目される要素でもあります。

電池は円筒型や角形、パウチ型の電池セルをモジュール化して、床下に「電池パック」として搭載します。テスラモデルYは800本以上の円筒セルを敷き詰めて電池パックとしています。

順位会社名シェア
(2023年)
1CATL36.8%中国
2BYD15.8%中国
3LGエナジーソリューション13.6%韓国
4パナソニック6.4%日本
5SK オン4.9%韓国
6CALB4.7%中国
7サムスンSDI4.6%韓国
8Gotion2.4%中国
9EVE(亿纬锂能)2.3%中国
10Sunwoda1.5%中国
11SVOLT1.0%中国
SNE Research情報を基に当サイト作成

リチウムイオン電池を製造している主要なメーカーはいくつかあります。例えば、CATL、LGエナジーソリューション、BYD、パナソニックなどがあげられます。これらのメーカーは、多くのEVやリチウムイオン電池を製造しています。

近年では中国の電池企業のシェアが広がっており、約6割を超えるともされています。

電動アクスル(eAxle)

BoschのeAxle

電動アクスルは、車両の駆動に必要な駆動モーターとインバータ、減速機などを1つのモジュールにまとめた装置です。車の駆動輪の近くに取り付けられ、四輪駆動の場合は前後の駆動輪にそれぞれ取り付けられます。

電動アクスルの中で最も重要な部品は、駆動用モーター、インバーター、減速機です。これらの部品はすべてが連携して動作するため、それぞれの技術を理解することが大切です。

駆動用モーター

駆動用モーターには、永久磁石型同期モーターや巻線界磁型同期モーターなどがあります。永久磁石型同期モーターはレアアースと呼ばれる特殊な素材が使われており、巻線界磁型同期モーターは永久磁石を使わずに高効率領域を広く取ることができます。

インバーター

インバーターは、電力を制御してモーターを動かすための重要な部品です。また、減速機は、モーターから出力された回転を車輪に伝える役割を持っています。同軸タイプや平行軸タイプがあり、それぞれに特徴があります。

減速機

減速機は、モーターの回転を車輪に適した速度に変える役割があります。同軸タイプと平行軸タイプの2種類があります。同軸タイプでは、遊星歯車と呼ばれる特別な歯車を使って、小型化と自由な搭載位置が可能になります。平行軸タイプは、コストを抑えることができます。

企業名主な取引先
トヨタグループ (デンソー、アイシン)トヨタ自動車、レクサス、日産、ホンダ、スバル、GM、フォード、VWなど
ボッシュVW、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、フォード、GM、ヒュンダイ、キア、日産、トヨタなど
ZFBMW、メルセデス・ベンツ、フォード、VW、GM、フィアット・クライスラー、ボルボなど
ヴァレオPSAグループ、ルノー、VW、フォード、トヨタ、日産、ヒュンダイ、GMなど
シェフラーVW、BMW、ダイムラー、フォード、アウディ、ポルシェ、ジープ、ルノーなど
ヴィテスコ・テクノロジーズGM、フォード、BMW、ダイムラー、VW、アウディ、トヨタ、ホンダなど

電動アクスルを製造している主要なメーカーには、トヨタグループ(デンソーやアイシン)、ボッシュ、ZF、ヴァレオ、シェフラー、ヴィテスコ・テクノロジーズなどがあります。これらのメーカーはメガサプライヤーとも呼ばれる企業群で、電動アクスルを開発し供給しています。

車載コンピューターと車載OS

自動車には、車載コンピューターと呼ばれる特別なコンピューターが搭載されています。この車載コンピューターは、車載OSと呼ばれるオペレーティングシステム(ソフトウェア)で動いています。車載OSは、スマートフォンにも使われる米Qualcommの「Snapdragon 690」など、小型のコンピューターチップで動作します。

車の中には、巨大なタッチ式液晶パネルがあり、スマートフォンのディスプレイと同じような役割を果たしています。スマートフォンの画面と同じように情報を表示したり、操作することができます。

統合ECUも、近年のEVで注目される要素です。車には通常、複数のECU(エレクトロニックコントロールユニット)と呼ばれるコンピューターが30~100個ほど搭載されています。それぞれのECUは異なる機能を担当していますが、統合ECUはこれらのECUを中央で管理することができます。統合ECUは、個別のECUが独立して働くのではなく、一括して管理することで効率的に車の機能を制御することができます。

統合ECU向けのSoCは、ルネサスエレクトロニクスとオランダNXP Semiconductorsの二強とされています。

まとめ

従来の自動車技術としてボディや駆動部品(サスペンション)など主要部品も重要ですが、EVになり特に注目される構成要素は電池とeAxle(モーター、インバーター、減速機)と、統合ECUと言えます。

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この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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