近年、先端材料の開発や、極端な荷重条件に耐える材料設計の必要性から、応力三軸度の研究が再び注目されています。
CAEでは容易に応力計算が可能で、複雑な形状、複雑な荷重条件を考える必要のある場面では、応力三軸度の理解が必要です。
ここでは、応力三軸度の概念と考え方を紹介します。
応力三軸度とは
応力三軸度(Stress triaxiality)は、変形や破壊の起こりやすさを示す指標です。
破壊の基準は、破壊が起こるモードによって様々ですが、応力三軸度は応力状態を加味した破壊判断ができるパラメータになります。
応力三軸度が高いほど、破壊が起こりやすいとされます。では、どのような状態だと、応力三軸度が高く、破壊が起こりやすいのでしょうか。
応力三軸度が高い状態
応力三軸度が高い状態は、上の図のように、缶が潰されたり、ボールがバットに当たって変形した状態を指します。これらに共通する特徴は、
・四方から圧力がかかる
・素材が圧縮されたり、つぶれたりしている
・材料の変形や破損が起こりやすくなる
という状態です。
とても複雑な応力状態であり、より破壊が起こりやすい状態と言えます。
応力三軸度が低い状態
応力三軸度が低い状態は、
・反対側の端から力が加わる
・素材が伸びている
・材料の変形や破損が早く起こりにくい
といった状態です。
応力三軸度が低い状態は、モノにかかる応力が一軸性、つまり単一の方向にかかる場合が当てはまります。このような場合、破壊が起こりにくいと考えられています。
応力三軸度の計算方法
応力三軸度は、通常、材料や構造物に作用する3つの最大法線応力である主応力を用いて計算されます。応力三軸度の計算式は以下の通りです。
T = (σ1 + σ2 + σ3)/(3σy)
ここで、Tは応力三軸度、σ1、σ2、σ3は主応力、σyは材料の降伏強さです。
CAEで主応力を求めて、上式で応力三軸度を算出することができます。
この結果得られた応力三軸度の値は、対象の構造物が、異なる荷重条件下で延性破壊や脆性破壊といった特定の破壊モードに陥りやすいかどうかを判断するのに役立ちます。
応力三軸度の歴史
「応力三軸度」という概念は古くからあり、工学や科学の様々な分野で利用されてきました。1900 年代初頭、ドイツ人エンジニアによって、四方から圧力を受けた材料の応力状態を表すために導入されたのが最初です。
それ以来、応力三軸度は、構造工学、機械工学、航空宇宙工学など、工学の多くの分野で広く研究され、利用されてきました。複雑な荷重条件にさらされる材料、部品、構造物の設計や解析において重要な考え方です。
近年、先端材料の開発や、極端な荷重条件に耐える材料設計の必要性から、応力三軸度の研究が再び注目されています。研究者たちは、より良い設計案を提案するために、応力三軸度、材料特性、破壊モードの間の複雑な関係を探求し続けています。
CAEへの活用
CAEで応力三軸度が利用される方法の1つに、破損の基準としての利用があります。材料が高い応力三軸度を受けると、延性破壊や脆性破壊などの特定の破壊モードが発生します。
塑性域の計算を行う際に、応力三軸度を破壊基準として使用することで、いつ、どのように破壊するかを予測することができます。
まとめ
応力三軸度は変形や破壊の起こりやすさを示す指標で、各方向の主応力から計算が可能です。
複雑な応力状態での破壊を予測するために、応力三軸度が活用できます。
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