新卒採用で現れるリクルータ社員。大企業などでは、無数のリクルータが学生と接触し裏で採用活動を支えています。
普段は研究室にこもってパソコンばかり叩いている私ですが、過去に務めていた大企業で、リクルーターとして新卒採用に関わっていたことがありました。リクルータは人事部の社員ではなく、設計や開発、研究に従事する社員が務めることも多いです。
この記事では、一部上場の製造業を例に、リクルータがどう選出され、学生の何を見て、どう合否に影響を与えていたのか、紹介したいと思います
※あくまで一例で、企業により採用活動やリクルータの権限は異なります。
どう選出されるのか
リクルータは、会社の若手の”モデルケース”として選出されます。
選ぶのは、各部署の長であり、部長や課長です。
優秀で元気で、出世が期待される若手が選ばれる傾向にあります。学生が見て、この会社でこの人と一緒に働きたい、と思えるような人物がリクルータになります。
実際、人事から部長宛ての通達には「フレッシュで、やる気に溢れている、2-5年目くらいの若手を選出ください」といったような記載がありました。
どうも、若手の頃はフレッシュでやる気に満ち溢れていた筆者です。
リクルータの仕事
リクルータの仕事は、会社説明会、座談会がメインの業務です。
東名阪などの大都市の会議室に行き、自己紹介や普段の業務を紹介します。
会社説明会は、コロナ以降はオンラインで行われることも多く、リクルータの体力的負担は減っていると聞きます。
また、自分の出身大学に出向き、採用担当の先生とやりとりをして、学生を集めてもらい、会社の紹介や、飲み会を行うなどの仕事もあります。
そこで知り合った優秀な学生にエントリーを促したり、学生のエントリーシートの添削なども行っていました。
普段は採用に関わることのない社員がリクルータを務めるということもあり、私がいた会社では、学生との受け答えや、業界情報、競合比較などのまとめられた手引き書も用意されていました。
リクルータに合否は決められるのか
リクルーターは、合否を決めることはできません。採用の合否は、リクルータの意見を一つの材料として人事部が決めます。
人事部の担当者に「この学生さん、どう思いますか?」といったようなアドバイスを求められることもありますし、場合によっては、リクルータは学生との面談などで得た情報をレポートにして人事部に提出します。
具体的には、以下のような流れです。
リクルータの活動の実例
私は、リクルータとして何年も採用に関わっていました。ある年、人事部から「採用期待度の高い学生と直接会ってほしい」という依頼があり、引き受けました。
会う学生は、インターンシップで2週間程度、会社に来て働いていたこともあり「就活になったらあの子採用したいね」というような意見が、インターン受け入れ先の部署から出ていたと聞いています。
3人の学生に大学やカフェなどでぞれぞれ会い、就活の進捗や、会社に入ってからやりたいことなどを聞きました。ひとり30-40分程度だったと記憶しています。
学生を見送った後、会話の中で感じた学生の志望度や、コミュニケーションの質について、レポートにまとめて人事部に送ります。
何より「一緒に働きたいと思うか」という視点で、人事部からは意見を求められました。”この会社の色に、この人がマッチするか”という視点であり、早期離職を防ぐために大切なポイントです。
リクルーターは合否を下しているわけではないものの、このレポートを人事が採用の判断材料にしているようなので、合否に関係しているとも言えます。
余談ですが、私が面談し「この人は企業・業界研究が不足しているので、他の企業も見てもらったほうがいい、ギャップを感じて早期離職しそう」とレポートを書いた学生も、人事は内定を出していたこともありました。リクルータの視点は一意見に過ぎないということです。
リクルータは学生のどこを見ているのか
人事部は、毎年、新卒採用のテーマやKPI(採用人数や)を決め、評価基準も決めます。
「チャレンジ精神に富んでいるか」「物事を堅実に進められるか」など、その年や会社により評価基準もさまざまですが、リクルータにもその年の評価基準で評価するように指示が入ります。
それ以外にも、リクルータはその人のコミュニケーションの質、話の受け答え、などで、違和感がないか、その学生と一緒に働きたいと思うか、を評価しています。
なるべく定量的に評価できるように、人事部がレポートのフォーマットを定めていることが多いです。要は、点数をつけています。(感じ悪いですね)
学歴フィルターはあるのか
学歴フィルターはありませんでしたが、採用したい大学群は設けていました。
メインとするターゲット大学群があり、その大学群出身の社員をリクルータとして名指しで指定することもあります。
だからといって、ターゲットの大学群に満たなければ不採用、といったことは一切ありません。
まとめ
私が担当していたリクルーターは、人事が学生から聞けない情報を、雑談の中で引き出し、より学生のことを理解するために利用されていたものでした。
また、リクルータは採用に関するプロではないため、合否を直接決める権限などは持ち合わせていません。
就職活動中の方がリクルータと話す際に、リクルータもいろいろ大変ですねご苦労様です、と思えるような情報になれば幸いです。
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