太陽光発電は、地球規模の環境問題に対する解決策の一つとして、世界中で注目されています。その中でも、近年注目を浴びているのがペロブスカイト型太陽電池です。
ペロブスカイト型太陽電池は、従来の太陽電池よりも効率が高く、薄く柔軟性があり、製造コストも低いとされています。
現在、多くのメーカーがペロブスカイト型太陽電池の開発に取り組んでいますが、今回は、主要なメーカーについてまとめました。どのメーカーが一番進んでいるのか、ぜひチェックしてみてください。
日本の主要なメーカー
ペロブスカイト型太陽電池は、まだ比較的新しい技術であるため、現時点で市場をリードする企業は限られています。
「ペロブスカイト型太陽電池」をキーワードに特許調査をした結果です。
国内では、富士フィルム一強の構図になっています。
これら企業群から、特に注目すべき個別企業を紹介します。
富士フイルム
富士フィルムはペロブスカイト型太陽電池関連の素材開発に熱心で、太陽電池になる材料を提供しています。
2014年以前から特許を固めており、その後も勢いが衰えることがありません。
ペロブスカイト型太陽電池そのものを開発している企業ではありませんが、ペロブスカイト型太陽電池が普及すれば、同社への引き合いも大きくなるものと考えられます。
パナソニック
国内特許数6位のパナソニックが、ペロブスカイト太陽電池の研究開発に着手したのは2014年です。現在でも研究開発を進めており、ペロブスカイト太陽電池モジュールのインクジェット塗布工法による製造技術の開発などが進められています。
パナソニックは804cm2という巨大なペロブスカイト型太陽電池セルモジュールにて、エネルギー変換効率17.9%を達成したことも報告されており、実用化に向けて着実に前進している印象です。
半導体エネルギー研究所
2014年以降特許数を増やしている株式会社半導体エネルギー研究所は、太陽電池をはじめとする新しいエネルギー技術の研究開発を行う日本の企業です。
シリコンをはじめとする半導体材料を用いた太陽電池の研究開発を行っています。具体的には、アモルファスシリコンから始まった太陽電池の研究開発を行っており、会社設立以来、継続的に取り組んでいる基盤技術となっています。
同社は、太陽電池以外にも、リチウムイオン二次電池、燃料電池、有機ELデバイスなどの研究開発も行っています。
NEDOプロジェクト体制
国が主導するNEDOの研究開発プロジェクトでは、以下のような企業が名を連ねています。
NEDOプロジェクト参画企業の特許出願状況
NEDPプロジェクトに参画している企業をオレンジ色で追記しました。
これら企業の中から、注目に値する企業を紹介します。
積水化学工業
積水化学工業は、、ペロブスカイト型太陽電池の開発に注力しており、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の実証実験を行っています。
積水化学工業が開発するフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、建物の外壁に貼ることができ、曲げやゆがみに強く、軽いため、建物の外壁に設置することができるとされいます。
小面積での設置・課題検証を経て、2025年以降に横須賀火力発電所への大規模設置を目指しています。
NEDOプロジェクトでは、超軽量太陽電池のロールツーロール製造技術開発を予定しています。
東芝
東芝は、ペロブスカイト太陽電池の開発に力を入れていることが報じられています。
特に、大面積フィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発に成功しており、世界最高の発電効率を達成しています。東芝のペロブスカイト型太陽電池は軽量で柔軟性が高く、低コストを強みとしており、電気自動車などの搭載を想定しているようです。
アイシン
自動車部品大手のアイシンは、自動車部品以外の分野でも研究開発を進めており、ペロブスカイト型太陽電池の研究開発にも力を入れています。
ペロブスカイト型太陽電池は、色素増感型太陽電池の色素技術をベースに、高性能で高耐久かつ安価なホール輸送材料の研究開発が進められています。また、大面積化を意識した工法や材料開発も行われています。
アイシンは自動車メーカーとの共同開発も進めており、次世代の自動車用太陽電池パネルに期待されています。
エネコートテクノロジーズ
エネコートテクノロジーズは、豊田合成と共同でペロブスカイト型太陽電池を開発していることで知られています。豊田合成は、2023年のジャパンモビリティショーでもペロブスカイト型太陽電池を展示し、その開発の進捗を報告しています。
ペロブスカイト型太陽電池とは?
ペロブスカイト型太陽電池は、新しい種類の太陽電池で、太陽光を電力に変換するのに使われます。
ペロブスカイト(perovskite)は、特定の結晶構造を持つ物質のことを指し、ペロブスカイト型太陽電池は、この結晶構造を利用して電気エネルギーを生成します。
ペロブスカイト型太陽電池は近年注目を集めているキーワードで、実用化に向けて各社が研究開発でしのぎを削っています。
つまり、太陽光パネルなの?
ペロブスカイト型太陽電池は、一般的に太陽光パネルとして知られる、従来のシリコン太陽電池と同じような役割を果たします。太陽光を集めて電力に変換することができますが、ペロブスカイト型太陽電池は、より高い効率と低コストを実現することができます。
いままでの太陽電池との違い
ペロブスカイト型太陽電池は、従来のシリコン太陽電池と比較していくつかの違いがあります。
ペロブスカイト型太陽電池 | 従来のシリコン系太陽電池 | |
---|---|---|
原料 | 安価で扱いやすい材料 | 高純度かつ高価なシリコン |
製造方法 | 塗布や印刷で作製 | 結晶成長や薄膜堆積などの複雑な工程を必要とする |
理論発電効率 | 33.7% | 29.4% |
現状の変換効率 | 現在の最高値は25%超 | 現在の最高値は26.7% |
柔軟性 | 曲面への適用が可能 | 曲げると結晶が破損するため不可能 |
安定性 | 長期間の使用や耐久性に問題がある | 安定性が高く、長期間の使用にも適している |
コスト | 低コストでの量産が期待される | 製造コストが高く、量産が困難 |
ペロブスカイト型太陽電池は、安価で扱いやすい材料を用いて塗布や印刷などの簡単な方法で製造でき、曲面への適用が可能ですが、安定性が低く、長期間の使用や耐久性に問題があります。
現状、シリコン系太陽電池の変換効率がペロブスカイト型太陽電池を上回っていますが、理論的にはペロブスカイト型太陽電池の方が発電効率が高いとされています。
ペロブスカイト型太陽電池で生活はどう変わる?
ペロブスカイト型太陽電池は、幅広い分野での利用が期待されます。
ペロブスカイト型太陽電池は、カーボンニュートラル社会を目指す分野で活用が期待されています。
建物への組み込み
建物の壁面や屋根材として利用することができます。より複雑な形状にも対応できることから、建築物のデザインの幅が広がり、コストも低下することから、住宅への普及も広がる可能性があります。
電子機器への採用
形状に柔軟性があり安価なため、モバイルデバイスへの採用が進むものと考えられます。太陽光で充電可能なスマホやモバイルバッテリーが、より安価に提供されると考えられています。
電気自動車への採用
ペロブスカイト型太陽電池は、従来のシリコン太陽電池よりも発電効率が高く、軽量であるため、電気自動車などに利用することが期待されています。
自動車のルーフにペロブスカイト型太陽電池を取り付け、走行中に充電することが可能になります。コストが低下するため一般的な装備として普及する可能性があり、曲がることからデザインとの両立が可能になります。
実用化の目途
ペロブスカイト型太陽電池の実用化に向けた研究開発は、急速に進展しています。
現在、多くの研究者がペロブスカイト型太陽電池の性能向上や耐久性の向上に取り組んでいます。
ペロブスカイト型太陽電池の商業化に向けては、2020年代中ごろから後半にかけて、多くの企業が市場投入を目指しています。積水化学工業は2025年の実用化を目指しており、既に実証実験が始まっています。
実用化が進めば、より効率的でコストパフォーマンスの高い太陽電池が実現し、再生可能エネルギーの普及が加速することが期待されます。
まとめ
ペロブスカイト型太陽電池の研究開発で先行する企業を探りました。
著者の目線では、ペロブスカイト型太陽電池の開発に置いて注目すべき企業は以下の通りです。
積水化学工業や東芝、アイシンはNEDOプロにも参画しており、開発の加速が期待できます。今後も動向を注視していきます。
関連記事
コメント