近年、電気自動車(EV)の普及が急速に進んでおり、それに伴い、電磁鋼板やパワー半導体など関連技術の需要も高まっています。本稿では、電磁鋼板の急成長の背景と、電磁鋼板の主要なメーカーの世界シェアランキングを解説します。
電磁鋼板の主要メーカーとシェア
上記のデータは、電磁鋼板の世界市場における各メーカーのシェアを示しています。
順位 | メーカー名 | 世界シェア | 国 |
---|---|---|---|
1 | 日本製鉄 | 30% | 日本 |
2 | POSCO | 20% | 韓国 |
3 | NLMK | 10% | ロシア |
4 | アークロール・ミッタル | 8% | ルクセンブルク |
5 | タタ・スチール | 6% | インド |
6 | JFEスチール | 5% | 日本 |
7 | Benxi Steel | 4% | 中国 |
8 | Nordic Steel | 3% | ノルウェー |
9 | 河北鋼鉄集団 | 2% | 中国 |
10 | 浦項 (ポハン)製鉄所 | 1% | 韓国 |
その他 | 11% | – |
日本製鉄は、世界最大の電磁鋼板メーカーであり、約30%のシェアを持っています。日本製鉄は、高品質な電磁鋼板を提供しており、特にエネルギー効率の高いモーター用途において強みを持っています。
2位はPOSCO(韓国)、3位のNLMK(ロシア)は、幅広い用途に対応した電磁鋼板を提供しており、特に耐久性や信頼性が求められる用途に強みを持っています。
電磁鋼板とは
電磁鋼板とは、電磁力学的特性を持つ鋼板のことです。通常、鉄と一定量のシリコンを含んだ合金で、磁気の性質が強く、高い電気抵抗を持ちます。
電磁鋼板は、モーターの固定子と回転子に用いられます。
電磁鋼板は、モーターの固定子と回転子に用いられます。固定子は、電磁鋼板を打ち抜いて作られた磁心にコイルが巻かれ、外部から電流が供給されると磁場が発生します。
一方、回転子は、電磁鋼板を積層して作られ、シャフトに結合されています。固定子から発生した磁場によって回転子が回転し、電気エネルギーが機械的な動力に変換される仕組みです。
電磁鋼板を打ち抜き積層して回転子をシャフトに結合することで、電気エネルギーを機械的な動力に変換する役割を果たします。電磁鋼板は、エネルギー損失を最小限に抑えることができるため、効率の良いモーターの製造に欠かせない部品となっています。
なぜ電磁鋼板が注目されているのか
電磁鋼板は、急速に普及しているEVのモーターに欠かせない部品であるため、EV市場の拡大に伴ってその需要が増加しています。
上記のデータからも分かるように、EVの販売台数は近年急激に増加しており、特に2025年以降は爆発的に拡大すると予測されています。
EVの急激な増加により、電磁鋼板を使ったモーターの需要が高まっており、主要メーカーによるシェア争いが激化しています。
電磁鋼板の需要は急増する
電磁鋼板は、次世代の半導体とも評されるほどの重要性を持っています。
2020年時点での電磁鋼板の世界需要は32万トンですが、今後需要が高まると予想されており、電磁鋼板の需要は2027年には250万トン(2020年比約7.8倍)、2033年には400万トン(2020年比約12.5倍)と予測されています。
2025年以降には無方向性電磁鋼板の供給が不足し始めると予測されており、2027年には不足量が35万トン超、2030年には90万トン超に達する可能性があります。このため、電磁鋼板の生産能力の増強や技術開発が急務となっています。
電磁鋼板の代替材料の可能性
電磁鋼板の需要増に対応するため、代替材料の開発も進められています。
例えば、炭素繊維複合材料(CFRP)やアルミニウム合金などの軽量素材が注目されています。これらの素材は、電磁鋼板に比べて軽量でありながら高い磁気特性を持つため、モーターの効率向上や車両の軽量化に貢献することが期待されています。
ただし、現在はまだコスト面や製造技術の課題があり、電磁鋼板の完全な代替には至っていません。
まとめ
EV市場の急速な拡大に伴い、電磁鋼板の需要も高まっています。
今後は、供給不足が懸念される中で、新たな技術や代替材料の開発が益々重要になってくることが予想されます。
電磁鋼板とEV市場は、引き続き注目すべき成長分野であり、関連企業や投資家にとって大きなビジネスチャンスが広がっていると言えるでしょう。
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