Googleは2019年に量子コンピュータ「Sycamore」を開発し、量子超越性を実現しました。さらに、2023年までに量子コンピュータの誤差率を低減するなどの重要な進展を達成し、商業的に実用的な量子コンピュータの構築に向けた可能性と期待が高まっています。
GoogleはSycamoreを開発
Googleは2019年に量子コンピュータ「Sycamore」を開発しました。このコンピュータは54量子ビットを搭載しています。
Sycamoreが注目された要因は、量子超越性を実現したことです。量子超越性は、量子コンピュータの性能がスーパーコンピュータを凌駕する状態のことで、Sycamoreは従来のスーパーコンピュータでは1万年かかる計算をたったの200秒で解決しました。
さらに、Googleは2023年までに量子コンピュータの誤差率を低減することに成功しました。研究者たちは、より多くの量子ビットを使用すると誤差率が下がることを初めて実証したと報告しました。この成果は、量子コンピューティングのための重要なステップであり、Googleの科学者たちは誤差率の低減を重要な進展とみなしています。
GoogleのSycamoreが量子超越性を実現
量子コンピュータの性能がスーパーコンピュータを凌駕する状態を量子超越性と呼びます。
Sycamoreは、わずか200秒でランダム量子回路を100万回サンプリングする性能を持ちます。同じことを現在のコンピュータ(古典コンピュータ)でシミュレーションした場合、IBMのSummitスーパーコンピュータでも同じタスクには約1万年かかることが分かっており、これが量子コンピュータが既存のコンピュータを超えたとされるゆえんです。
量子コンピュータが高性能であるのには理由があります。量子バージョンの乱数発生器は、通常のコンピュータと異なり、量子ビットの特性を利用して予測不可能なランダムな数値を生成することができます。(これは、暗号解読や複雑なシミュレーションなどの分野で高度なランダム性が必要な場合に、量子コンピュータが有望な解決策となる可能性を示しています。)
また、GoogleのSycamoreはエネルギー消費の面でも優位であり、IBMのSummitスーパーコンピュータがメガワット級のエネルギーが必要であるのに対して、Sycamoreは数キロワットしか使用しませんでした。
今回、Googleの量子コンピュータが従来のスーパーコンピュータに勝ったのは、実用的な問題を解いたわけではなく、あくまで量子コンピュータの得意な分野で従来コンピュータを上回ることを証明したにすぎません。より高度なタスク(気象予想や化学シミュレーションなど)を実施するには、より多くの量子ビットと、ノイズの低減が欠かせません。
Googleの掲げるロードマップ
Googleの掲げる、100万量子ビットを最終的な目標とする、というマイルストーンが、実用化のひとつの目安として知られています。
2022年時点では、最も量子ビットの多いIBMの量子コンピュータOspreyでも、433量子ビットであり、100万量子ビットには桁が全く足りません。
量子ビットを増やし、ノイズを提言していく過程で様々なことができるようになると考えられていますが、その道のりはまだ長いです。
現在のように、ノイズがあり、比較的小規模なスケールの量子コンピュータ研究を「NISQ(Noisy Intermediate Scale Quantum)」と呼んだりします。汎用的な問題に対応する能力は現在のコンピュータには全く及びませんが、この基礎研究が進んでスケールするようになると、いよいよ量子コンピュータの実用化が進んでいきます。
他社との比較
開発企業 | 機器名称 | 量子ビット数 | 稼働年 |
---|---|---|---|
Sycamore | 54 | 2019年 | |
IBM | Osprey | 433 | 2022年 |
富士通・理研 | – | 64 | 2023年 |
量子コンピュータの研究開発では、IBMが一歩先を進んでいます。
量子コンピュータの性能は単純に量子ビット数だけで議論できるものではありませんが、IBMは2022年に433量子ビットの量子コンピュータ「Osprey」を発表しています。
エラー訂正などでも研究が進んでおり、量子ゲート型の量子コンピュータ開発では、IBMとGoogleが競い合っている状況です。
Googleの掲げる100万量子ビットに対して、まだまだ規模は小さく研究の域を出ていません。今後の研究開発競争の行方は、予測が難しいところです。
まとめ
Googleの量子コンピュータ開発について解説しました。
量子コンピュータ「Sycamore」が量子超越性を実現したこと、100万量子ビットを目指して研究開発していることなどが知られています。
GoogleやIBMなどの研究開発により、2030年以降の量子コンピュータの実用化が期待されます。今後も動向を注視していきたいと思います。
関連記事
コメント