電気化学の化学両論計算によく用いられる「ファラデー定数」とは、結局のところ何なんでしょうか。
ファラデー定数って、結局のところ何?
ファラデー定数は、化学や物理学でよく出てくる重要な数値の一つで、電気化学の分野で特によく使われます。
ファラデー定数の値:ファラデー定数の値は約 96,485C/mol
ファラデー定数の値は約 96,485C/molです。ここで「C:クーロン」とは電荷の単位で、「mol:モル」は物質の量を表す単位です。ファラデー定数は、1モルの電子が持つ電荷が約96,485クーロンであることを示しています。
電子1つはとても小さな電荷(物体が持つ電気の量)を持っているので、電荷をたくさん集めた量、つまりたくさんの電子の電荷を合わせたものがファラデー定数です。
ファラデー定数は、電子1個の電荷とアボガドロ数(1モル中の粒子の数を示す定数)によって決定されるため、ファラデー定数の値は温度や圧力などの外部条件によって変化するものではありません。
ファラデー定数=約96,485C/molに「約」が付く理由は、ファラデー定数計算に使われる数値(電子の電荷やアボガドロ数)が実験的に決定されたものであり、その測定にはわずかな不確実性が伴うためです。また、物理定数の値は測定技術の進歩によってわずかに変化することがあります。ファラデー定数も最も正確な測定値に基づいて定期的に更新されることがあり、この値を「約96,485C/mol」と表現するのは、そのようなわずかな変動や不確実性を含んでいることを示しています。
たとえば、2019年に国際単位系(SI)の再定義が行われた際、ファラデー定数自体は再定義されませんでしたが、アボガドロ定数などのいくつかの定数が新たな実験的測定値に基づいて再定義されました。
どこで使うねん
ファラデー定数が、実際の社会でどう使われているのか、全く想像がつかないと思います。
ただ、リチウムイオン電池などの電池を設計する技術者は、日常的にファラデー定数を利用します。リチウムイオン電池の電極材料を選定する際、その材料が持つ電荷の量や電子の移動数を考慮する必要があります。ファラデー定数を使用して、特定の材料が電池反応でどれだけの電荷を運べるかを評価し、最適な電極材料を選ぶことになります。
電池のエネルギー密度(単位体積または単位質量あたりのエネルギー量)を計算する際にも、ファラデー定数を用いて電池の化学反応から生じる電荷の総量を求めます。
電池の充放電サイクルにおいて、どれくらいの電荷が実際に利用されているか(つまり電池の効率)を評価する際にも、ファラデー定数が使われます。理論上予測される電荷の量と実際の電荷の移動量を比較することで、電池の充放電効率や化学反応の完全性を評価することが可能です。
ファラデーが考えたわけではない
ファラデー定数は、マイケル・ファラデーの名前を冠していますが、この定数自体を彼が直接考え出したわけではありません。マイケル・ファラデーは19世紀のイギリスの科学者で、電磁気学や電気化学における多くの基礎的な法則や現象を発見しました。ファラデーの最も重要な貢献の一つに、電解質の電気分解に関する法則があります。これは後に「ファラデーの電気分解の法則」として知られるようになりました。電気分解の法則は、電気分解によって生じる物質の量は通過した電荷の量に比例すると述べています。
ファラデー定数という概念は彼の発見からさらに進んだ科学的研究の結果生まれました。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、科学者たちは電気分解の実験を通じて得られたデータを分析し、1モルの電子が持つ電荷の総量としてファラデー定数を導出しました。
マイケル・ファラデーの電気分解に関する基礎的な発見と、電気と化学反応の間の定量的な関係を確立した功績を称えるため、この定数に彼の名前を冠するものとしたのです。
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