「エンジン車が無くなる」「EVに置き換わる」と言われ続けて久しい。
実際、エンジン車はなくなるのか。私見を述べる。
「内燃機関が無くなる」と言い始めたのは誰か
内燃機関エンジン(ICE)搭載車がなくなる、と囁かれ始めたのは2010年代中盤頃だ。
ことの発端は、VW(andボッシュ)の排ガス不正問題で、欧州メーカーはこぞってEV戦略を明確に打ち出し、これからEVが来る、という流れに繋がっている。
加えて言うと、EV化戦略には脱石油(=脱中東)と、脱旧世紀自動車(=脱アメリカ)を狙う欧州の戦略が見え隠れしている。
EV化の煽りを受け、ICE関連の部品メーカー各社は新規事業創出が必要だと煽られた。当初EVに否定的だったトヨタ自動車も、欧州に後れを取っていると揶揄された。
更に2010年代後半になると、環境問題が取り沙汰され、SDGsが持て囃されてサステナブルな社会への変革が必要と議論され、アメリカ大統領選挙では環境意識の高いバイデン氏が勝利するなど、環境貢献度の高い(とされる)EV後押しの雰囲気は更に高まっている。
調査会社の予測
将来予測に関しては幅がある。
調査会社にも事情があり、EVシェアを大きく見積もりたい会社のコンサルをしている調査会社は当然ICE搭載車のシェアは直ぐにでもなくなるような書き方をするだろう。
まず、2019年のEVシェアを確認する。
2019年時点での販売台数上位は、中国・米国・次いで日本である。EV普及率はこれら上位の国によって決まると言って過言ではない。
中国のEV普及の見通しは不透明であるが、2020年7月の新車販売台数211万2千台のうち9万8千台(市場シェア4.6%)がEVであった。米国の2019年販売のうち、EVシェアは1.6%。日本は2019年販売においてEVシェア0.38%に過ぎない。
では、将来はどうか。
2030年頃のシェアは、全世界平均でざっくり言うと
ICE:40%
HEV:40%
PHEV:7%
EV:13%
で、8割以上の自動車にICEが搭載されることになる。つまり、内燃機関はなくならない。
こういった予測は、予測しているコンサルや調査会社によって異なる。
筆者の経験的から言うと、信頼できる調査会社はJATO、IHSなどで、デロイトトーマツは少しバイアスがかかっている。
新興市場もEV化するのか
今後自動車販売を伸ばすであろう成長市場は、インド、タイ、インドネシア。
これらの市場は、インフラが不十分な状態から直ぐにEVが普及するとも考え難い。
インドでは2020年4月からBS6(Euro5そのまま)と呼ばれる環境規制が導入され、これは排ガス規制対応であり、EVというよりICEの規制対応とHEVの導入による対応が予想されている。
インド政府は2030年までに販売台数の30%をEVとする野心的な政策を掲げている。地場大手のマヒンドラは補助金活用により約127万円で購入できるEVを開発するなど、目標に向けて着実に歩みを進めている。
一方で、インドは足元の景気が急激に減速している。公的資金注入や金利政策、車両登録料の引き上げ延期などにより徐々に持ち直すものと思われる。
順調に推移すれば、2030年にはインドの国内販売台数は1000万台を超える見通しで、中国・米国に次ぐ巨大市場に成長するだろう。
電動車の定義は?
電動車の定義にもよってくる。
環境性能をEV>PHEV>HEV>ICEとしても、どこで電動車とするのか。中国は2020年に入ってHEVまで環境対応車として認定した。EUはEVとPHEVについてECV(electrically chargeable vehicles)と呼んだりする。
要するに、内燃機関を搭載した車両はなくならない。
時期が来れば、車両は自動運転となり、自動車を所有する人が少なくなると、そもそも自動車がエンジンなのか電気で動いているのかは興味が薄れてゆき、議論すらされなくなるだろう。
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