AI全盛期、ハードウェア開発速度の遅さが社会課題解決の足かせに

技術者のキャリア

AIが急速に進歩するなかで、ハードウェアの開発速度の遅さが社会課題解決のボトルネックになりつつあります。

本稿では、今後ハードウェアの進化の遅さが社会課題となること、ハード開発を加速するためにできることを提案します。

急速なAIの進歩

2013年頃に誕生したディープラーニング技術の登場から、その後Transformerによる自然言語処理モデルの進歩やStable Diffusionなどの生成モデルの進歩も相まって、AIの進化は従来の想定以上の速さで進行しています。

ソフトウェア的な進化は今後も指数関数的に進むと考えられます。

ソフトウェアで解決できる課題は今後10年間でほとんどが片づけられるでしょう。

一方で、ハードウェアの開発速度は大きく変化していません。

10年後には、すべての社会課題の解決のボトルネックが、ハードウェアの開発速度に依存するようになります。

ハードウェア開発がボトルネックになる例

ハードウェア開発がボトルネックになる事例を、いくつか例を挙げてみましょう。

自動運転

自動運転の実現において、ソフトウェアの進化は目覚ましいものがあります。機械学習や人工知能の進歩により、自動車は学習し、状況に応じた適切な判断を下すことができるようになりました。

しかし、ハードウェアの開発はこのペースに追いついていないのが現状です。

例えば、LiDARセンサーは高価で大型であり、自動車に組み込むのが難しいという問題があります。また、センサーの精度や信頼性の向上にも課題が残っています。

これらのハードウェアの制約が、自動運転の実用化を遅らせている要因となっています。

EVの普及

EVの普及は、いま自動車業界が最も注目している分野です。

電気自動車(EV)の普及に伴い、充電ステーションのインフラの整備が求められています。

しかし、まだまだ充電ステーションの数や設置場所には限りがあり、利便性や充電時間の問題が残っています。また、異なる充電インフラの規格や充電速度の違さも課題となっています。これらの問題を解決するためには、充電ステーションの普及促進や標準化の取り組みが必要です。

現在のスマホやEVなどのデバイスに使用されているリチウムイオン電池は、容量や性能の面で限界に近づいています。

次世代電池として注目されている全固体電池は、実用化までの課題が多く、製造コストや安全性、長寿命性などの課題をクリアするためには、さらなる研究と開発が必要です。

これら課題は、材料選択や製造工程の改善など、ハードウェア開発が肝であり、ソフトウェアの進化では解決することのできない部分です。

ハードウェアの開発プロセスを加速する方法

製造業におけるハードウェアの開発を加速させるためには、いくつかのステップがあります。

先進的な製造技術に投資する

高度な製造技術に投資することで、ハードウェア部品の製造に必要な時間とリソースを削減することができます。3Dプリンティングなどが一例です。

デザインのプロトタイプ作成を迅速化することで、ハードウェア開発の期間を短くすることが期待できます。

製造プロセスの自動化

製造プロセスの自動化も必須です。

特に人口減少が続く日本では、製造現場の人手不足は深刻です。

経産省の資料によると、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は、1995年の約8,700万人をピークに減少に転じており、2015年には約7,700万人まで減少してきている(この間の減少は約1,000万人)とあります。

年率の減少率の割合でいうと0.6%で、10年後には6%減となります。

これだけの人口減少を見込んだ自動化への投資が必要です。

データ駆動型の意思決定

ここ10年間で、製造履歴や顧客情報などの膨大なデータへアクセスできるようになりました。

データ解析とAIアルゴリズムの活用を活用すれば、製造業ではより多くの情報に基づいた意思決定を行うことができるようになっています。

予知保全、品質管理、サプライチェーンの最適化などに、このデータを駆使することで、本当に必要な部分に注力して管理を行うことができるようになります。

コラボレーションと知識の共有

企業間のコラボレーションにより、知識や経験を共有することも必要になってきます。

協調領域と競争領域は分けて考えるべきで、強調領域の知見は共有し、日本全体で生産性を向上させる努力が必要です。

コミュニケーションとコラボレーションを促進するプラットフォームやツールを活用したり、企業の情報の開示に対するハードルを下げることも必要です。

技術開発において、何が協調領域で、何が競争領域なのか、議論をしていく必要があります。

労働生産性を向上させよう

一貫して言えるのは、労働生産性を高めよう、ということです。

日経新聞記事より

日本の労働生産性は、諸外国と比較しても向上しておらず、少ない力で多くの富を得ることができていません。

労働人口が減少する中で、なるべく効率的に業務を進められるようにする必要があります。

データの整理から始めよう

私は、製造業におけるDXはデータの蓄積と整理から始めよう、と発信し続けています。

AIの機能が向上し続けるにつれて、企業内に蓄積された「整理されたデータ」の重要性はさらに増していきます。

AIアルゴリズムは、より大きく、より複雑なデータセットを分析できるようになり、メーカーの業務を大幅に改善する可能性を秘めています。

しかし、AIアルゴリズムは、分析するデータが正確で、完全で、よく整理されている場合にのみ効果を発揮します。

まずは、データ整理から始めてみましょう。

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この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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