近年、パワー半導体市場は急速に成長しており、環境保護や電力インフラの安定化、エネルギー効率の向上など、さまざまな分野でその重要性が増しています。
そこで今回は、パワー半導体に関する特許を調査し、特許数の多い企業群に注目して、技術開発と今後の展望について深堀りしていきます。
特許数ランキング
特許数をランキングすると以下の通りです。
三菱電機、富士電機、ソニー、東芝は、パワー半導体の特許数ランキングで上位に位置しており、技術革新の主導権を握っていることがわかります。
特に三菱電機と富士電機は、IGBTやSiC、GaNなどの先進技術を開発しており、業界のリーダー的存在です。ソニーや東芝も独自の技術を持っており、競争力を維持しています。
特許数の推移
各社の特許出願状況の推移を見ていきます。
SONYは特許出願数の増加が顕著
SONYは、この5年間で特許数を大きく伸ばしていることが分かります。
SONYの特許出願数が2014年以前までの累計で141件であったのに対して、2018年と2019年にはそれぞれ205件、195件の特許出願があります。同社がパワー半導体技術に力を入れており、研究開発や特許取得に注力していることが伺えます。
特許出願数が安定している企業
三菱電機や富士電機、東芝、デンソー、東京エレクトロンなどは、2015年から2021年の間で特許出願数がおおむね安定しています。これらの企業は、すでに業界でリーダー的な存在であるため、継続的に技術開発を行っており、競争力を維持しているように見えます。
特許出願数が減少している企業
東芝は、2014年以前に576件の特許出願があったのに対して、2021年には15件にまで減少しています。これは、同社が企業再編や事業再構築を行っているため、特許出願数が減少している可能性があります。
注目に値する企業
以下で、特許調査の結果から注目すべき企業を紹介します。
三菱電機
三菱電機は、パワー半導体の分野で非常に多くの特許を持っています。特にIGBT技術に関しては、業界をリードする存在であり、電気自動車、鉄道車両、産業機器など幅広い分野で採用されています。また、SiC(シリコンカーバイド)など、新素材を用いたパワー半導体の研究開発にも力を入れており、高効率化とコスト削減に成功しています。
富士電機
富士電機もまた、パワー半導体分野で多くの特許を保有しています。彼らは、IPM(インテリジェント・パワー・モジュール)技術を開発し、一つのパッケージ内にパワー半導体デバイスと駆動回路を統合させることで、省スペース化や省エネルギー化を実現しています。
富士電機はまた、GaN(窒化ガリウム)などの新素材を用いたパワー半導体の開発にも注力しており、これにより高周波動作や高効率化が可能となっています。富士電機の技術は、産業機器や家電、自動車、太陽光発電システムなど幅広い分野で活用されています。
富士電機のパワー半導体の強みは、長年にわたる研究開発から得られる技術力と、国内での安定した顧客獲得能力にあります。以下の記事では、富士電機の強みを解説しています。
SONY
ソニーは、ソニーセミコンダクタソリューションズグループ(SSS)で半導体事業を展開し、ここ数年の特許のほとんどはSSSから出願されています。SSSは、ソニーが半導体事業を再編する際に設立された企業で、ソニーの完全子会社です。イメージセンサーを中心に、マイクロディスプレイや各種LSIなど、幅広い半導体製品を開発・製造しています。
パワー半導体とは
パワー半導体は、電力変換や電力制御に使用される半導体デバイスの一種です。主に、高電圧、高電流、高温環境下での動作が求められる用途に適用されます。
パワー半導体 | 先端ロジック半導体 | アナログ半導体 | メモリ半導体 | |
---|---|---|---|---|
用途 | 電力制御や変換 | CPUやGPU、FPGAなど | アナログ信号処理 | データ保存 |
特徴 | 高電圧・高電流 | 高速・低消費電力 | 精度・安定性が重要 | 高速・大容量 |
材料 | シリコンカーバイド | シリコン | シリコン | シリコン |
主な製品 | MOSFET、IGBT、ダイオード | CPU、GPU、FPGA、ASIC | オペアンプ、データコンバータ | DRAM、SRAM、NANDフラッシュ |
シリコンカーバイド (Silicon Carbide, SiC) は、炭素とシリコンから成る化合物であり、硬度が高く、高温下での安定性や耐摩耗性に優れた特性を持っています。SiCは高温、高電圧、高周波などの環境下でも性能が低下しないため、パワーエレクトロニクス分野で用いられています。
パワー半導体の今後の展望
今後のパワー半導体市場は、電気自動車や再生可能エネルギーの普及に伴い、さらなる成長が見込まれます。
注目を集めるのは、シリコンカーバイド(SiC)とガリウム窒化物(GaN)半導体です。SiC半導体は高耐圧性能を備えており、高速で動作することができます。一方、GaN半導体は高周波での動作に適しており、小型・軽量・高効率であり、電力変換効率を高めることができます。
今後、パワーモジュールの集積度が向上することも予想されます。半導体チップの小型化や、複数の機能を1つのチップに集積することで、より小型かつ高性能なパワーモジュールが開発さるようになります。
パワー半導体の特許数は、業界の動向や技術革新を把握する上で有益な指標となります。今後も特許動向を注視していきたいと思います。
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