韓国のLG化学から独立したLGエナジーソリューション(LGES)は、世界有数の車載電池サプライヤーです。
LGESは液系電池だけでなく、全固体電池の開発も進めています。
本記事では、LGESの最新技術である全固体電池について紹介します。
LGエナジーソリューション(LGES)とは
LGエネルギーソリューション(LG Energy Solution Ltd.、以下LGES)は、世界有数の電池企業です。CATL、パナソニック、SKイノベーション、サムスンSDIと並ぶ世界最大級の電池メーカーとして知られています。
LGケムリミテッドの電池事業として誕生し、2020年に分社化、LG Energy Solution Ltd.として独立し現在に至ります。LGESは現在14%の市場シェアを持ち、世界第2位の電池メーカーです。
LGES のバッテリーは、テスラモデル 3 および Y、フォルクスワーゲンのID3 およびID4、フォードのマスタングマッハEで使用されています。
LGの全固体電池開発計画
LGESは全固体電池の開発にも注力しています。
LGESは、ポリマー系全固体電池の商業化を2026年まで、ポリマー系電池よりも高度な技術を必要とする硫化物系全固体電池の商業化を2030年までに実現することを計画しています。
全固体電池は、ポリマー系、酸化物系、硫化物系の3種類に分類されます。ポリマー系電池は比較的安価で簡単に製造できますが、イオン伝導性が低い(充放電時の抵抗が大きい)という特徴があります。一方、硫化物系電池はイオン電導度が高いものの、コストが高く、生産が難しいなどの課題が多く残っています。
2021年、LGエナジーソリューションは、室温(25℃)でも高速充電が可能な長寿命の全固体電池を発表し注目を浴びました。この電池は室温で500回までの充放電が可能であり、新たなエネルギー貯蔵技術の到来を示唆しています。
LGESが2030年までに商業化を実現するとしている硫化物系の全固体電池は、トヨタ自動車などの日本の自動車メーカーが2028年を目途に車載を計画しています。
カリフォルニア大学との共同研究
LGエナジーソリューションは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のナノエンジニアらとの共同研究の中でも全固体電池の開発を進めています。
この研究で注目すべき点は、シリコン負極と固体電解質です。
シリコン負極
LGESの全固体電池研究では、シリコン負極を用いています。
従来の商用リチウムイオン電池で使用されているグラファイトに比べて、シリコン負極は10倍以上のエネルギー密度を持つとされています。
一方で、シリコン負極は充放電時に膨張・収縮するため、膨張・収縮を抑える必要があります。LGESの研究者たちは、一般的に使用されているナノサイズのシリコンよりも低コストで低処理のマイクロシリコンを採用、負極の担体となる炭素をなくすことで固体電解質との界面接触を減少させ、液体電解質によって引き起こされる連続的な容量損失を回避しています。
固体電解質の採用
LGESとカリフォルニア大学の研究では、液体電解質の代わりに硫化物ベースの固体電解質を採用することで、さらなる高性能を実現しています。
共同研究はラボベースでの研究と考えられ、量産にはまだ超えるべきハードルがありそうですが、今後も共同研究は継続されるとされています。
ホンダとの協業
日本の自動車メーカーとしては、ホンダと近い距離にあります。
LGエネルギーソリューションは、ホンダとの合弁企業を通じて、米国で電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の生産会社を設立する計画を発表しています。
米国の工場は2023年初頭に着工し、2025年内に電池の量産を開始する予定です。LGESとホンダの協業により、革新的な全固体電池を搭載したEVが市場に登場することが期待されています。
現在のところ、ホンダとLGESが全固体電池に関して協業しているという情報は聞かれません。
LGESはホンダだけでなく、トヨタの協業も始めています。
LGESは、米ミシガン州の工場でトヨタ向けの電池生産ラインを新設、25年に稼働する予定です。協業は全固体電池ではなく、現在主流の液系電池ではありますが、年間生産量は20ギガワット時と大きく、トヨタのEV「bZ4X」約28万台分に相当します。トヨタはEVの世界販売台数を2026年に150万台、2030年に350万台まで伸ばす計画を掲げており(22年の販売実績は2万4000台)、車載電池の調達が急務となっています。
まとめ
LGエネルギーソリューション(LGES)は、全固体電池の開発に取り組んでおり、室温での高速充電や長寿命を実現しました。
カリフォルニア大学との共同研究により、シリコン負極と固体電解質の開発が進められています。今後も注目されるところです。
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