ファクトリアルの全固体電池技術「FEST」とは何が凄いのか?

全固体電池

米国で全固体電池開発を行うファクトリアル(Factorial Energy)は、FESTと呼ばれる技術を開発し、各自動車メーカーと協業しながら全固体電池の実現を目指しています。

FESTとは何か、何がすごいのかについて、詳しく解説します。

ファクトリアルとは?

ファクトリアルは、米マサチューセッツ州に拠点を置く先進的なエネルギー技術企業です。正式には「Factorial Energy」という名称で、特に全固体電池の開発に重点を置いています。

全固体電池開発とFEST

2026年までに全固体電池を実用化することを目指しています。Factorialは、FEST (Factorial Electrolyte System Technology) と名付けられた独自の技術を開発しており、これによって安全で信頼性の高い電池性能が実現しようとしています。

独自の開発技術:FEST

独自の固体電解質材料と、大容量の正極、リチウム金属負極を用いた全固体電池セル。リチウムデンドライトの形成を抑制、電池の安全性と安定性が大幅に向上させています。

FESTのうち、技術的に特に注目すべきはリチウム金属負極です。以下でリチウム金属負極について詳しく解説します。

リチウム金属負極

リチウム金属負極を開発するEnpowerは、エネルギー密度500Wh/kgを実現すると発表しています

リチウム金属負極は、一般的に黒鉛が用いられる負極にリチウムを用いる手法です。充電容量を格段に増やすことができ、セルとしてのエネルギー密度を500Wh/kg以上とすることが期待できます。これは従来のリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度であり、従来の全固体電池の性能をも凌ぐと予想されます。一方で、充放電に弱くコストも高いというデメリットもあります。

充放電に弱い原因は、リチウム金属からのデンドライト成長に伴う短絡です。デンドライトの成長を抑えるために各社対策を進めており、ファクトリアルも何らかの方法でデンドライト成長を抑制しているものと考えられますが、詳細は公表されていません。

CESで発表されたステランティスの新型電池

自動車メーカーのステランティスは、2026年までにFEST技術を使用した全固体電池を導入することを目指しています。CES2023でのステランティスのブースでは、100Ahのこの新型電池が公開され、その革新的な機能が披露されました。

Factorialの文字が見られる

電池パックは試作品と考えられ、量産されたものとは考えにくいです。電池パック1枚ずつの形状もそれぞれ異なり、手作り感が否めませんが、全固体電池の試作品を用いた車両の開発が進んでいることが見て取れる例です。

Stellantis CEO Carlos Tavares Keynote | CES 2023 [full version]

技術の詳細は、ステランティスのCEOのプレゼンテーションでも見ることができます。

ファクトリアルの協業パートナー

Factorial Energyは、世界中の著名な自動車メーカーとの協業を進めています。

  • Mercedes-Benz: 2021年11月30日、Mercedes-Benzは米国を拠点とするFactorial Energyと全固体電池の共同開発を進めると発表しました。
  • ステランティス: Factorial Energyと提携を締結し、全固体電池の商用製品の展開を加速させています。
  • 現代自動車: 2021年10月、韓国の現代自動車グループは、戦略的投資を含む共同開発契約をFactorial Energyと締結しました。

※ステランティスは、FCAとPSAグループの合併によって設立された企業

筆者の視点

2026年に全固体電池の実用化を目指すファクトリアルですが、その技術が最終的に車載として実用化されるにはもう少し時間がかかるように思います。

日中韓の全固体電池開発企業が2028年をターゲットとしているなかで、米ファクトリアルが先駆けて実用化できるとは正直考えにくいです。2028年以降、あるいは更に先になるのではないかと想像します。

まとめ

米ファクトリアルの全固体電池は、FESTと呼ぶ技術で全固体電池の実用化を目指しています。

FESTに含まれるリチウム金属負極は、エネルギー容量が大幅に向上するものの、充放電耐久性が低いことが知られており、このデメリットを何らかの方法で解決したものと考えられます。

2026年までに実用化を目指していますが、車載として実用化されるのはもう少し先ではないかと考えられます。今後も同社の動向に注目が必要です。

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