TOGG(Türkiye’nin Otomobili Girişim Grubu)は、トルコの自動車メーカーで、トルコのエルドアン大統領による自動車ブランド計画に基づいて設立されました。TOGGは現在、T10XとT10Fという2つの車種を展開しており、2023年には28,000台の電気自動車を生産することを目指しています。
この記事では、TOGGはどのようなメーカーなのか、トルコにおける存在感はどの程度なのか、将来性を含めて紹介します。
TOGG(Türkiye’nin Otomobili Girişim Grubu)とは
TOGGは、トルコの自動車合弁グループ「Türkiye’nin Otomobili Girişim Grubu」の略称であり、本社はトルコのコチャエリ県ゲブゼに位置しています。TOGGは、2014年にトルコのエルドアン大統領によって提唱された「トルコ独自の自動車ブランドの創設」構想を基に、2018年にトルコ企業5社による合弁会社として設立されました。
その主な目的は、トルコの国民車メーカーとして成功することです。
TOGGは、2023年までには28,000台の電気自動車を生産。2024年には製造台数を増やし、70,000台に達することを目指しています。
これに向けて、トルコの産業技術大臣メフメット・ファティカクル氏と財務大臣のメフメット・シムシェク氏は、2023年夏にTOGGの工場を訪問し、TOGGが国内外で成功するブランドになるよう努力すると強調しました。要するに、国が全力を挙げてメーカーをサポートするということです。
中国の新興EVメーカーでは、損益分岐点(利益が生まれる最低の販売台数)として年間20万台の生産が目安とされています。TOGGの2024年の目標は7万台であり、これだけでは利益を生み出せるとは考えにくいです。
トルコ国内の自動車販売台数は約100万台であり、国内だけで20万台以上を販売するためにはシェア20%以上が目安となります。これはトルコ内でシェア首位をとることと同義であり、かなり困難な目標です。TOGGには、輸出による台数の拡大が不可欠となります。
トルコ自動車メーカーの市場シェア
トルコ国内におけるToggのシェアは3.5%です。
トルコにはFord Otosan、Hyundai、Isuzu、Oyak-Renault、Tofaş、Toyotaなどの自動車メーカーが生産拠点を持ち、他にもいくつかの自動車メーカーが生産しています。
Fiatは2023年の11月までの期間で174,207台を販売し、16.2%のシェアでトップに立っています。Toggの市場シェアは3.5%で、トヨタやヒュンダイといったアジア勢と同程度です。
今後、トルコ政府が国産メーカーのシェア拡大を後押しすることは容易に想像できます。欧州勢のシェアを奪いながら、今後どこまで台数を伸ばせるか、注目が集まります。
TOGGの従業員は、自社を「スタートアップ」と認識しているようです。意思決定が早く、階層構造のない組織風土で、旧来の自動車メーカーとは異なる文化です。一方で、自動車製造に重要な「すり合わせ」の文化は根付いており、ITなどをバックグラウンドにもつ従業員は、自動車業界の文化になじむのに苦労するようです。
トルコの自動車市場の現状
トルコの自動車市場は安定した需要を維持しています。年によって変動はありますが、2023年の新車販売台数は約128万台、2022年は約78万台でした。毎年、およそ100万台前後を推移しています。
日本の自動車販売台数420万台(2022年)に比べると、トルコの市場規模は見劣りします。一方で、年度によっては100万台を超える販売を記録する年もあり、カナダ(156万台)や韓国(168万台)に迫る一大市場であることは認識する必要があります。
TOGGは100万台の市場の中で一定のシェアを得て、海外への輸出も考えたいところです。新興EVメーカーの損益分岐点とされる20万台に向けて、国内シェア15%(15万台、国内シェア2位)および輸出5万台を達成するのが直近の目標となりそうです。
TOGGの販売するモデル
項目 | TOGG T10X | T10F標準モデル | T10F全輪駆動モデル |
---|---|---|---|
市場投入年月 | 2023年3月 | 2025年(予定) | 2025年(予定) |
タイプ | SUV | SUV | SUV |
駆動方式 | 後輪駆動 (RWD) | 後輪駆動 (RWD) | 全輪駆動 (AWD) |
出力 | 160 kW (218馬力) | 160 kW (218馬力) | – |
トルク | 350 Nm | 350 Nm | 700 Nm |
最大航続距離 | 523 km | 約350 km (標準) 約600 km (長距離) | 約530 km |
0-100 km/h加速 | 7.4秒~7.8秒 | – | 4.6秒 |
バッテリー容量 | 52.4 kWh | 52.4 kWh (標準) | 88.5 kWh (長距離) |
DC高速充電(20%~80%) | 28分 | 28分 | 28分 |
Toggは2024年現在、TOGG T10Xの1車種のみを販売しています。将来的には5つの異なるモデルを生産する計画です。すべてEVとする計画で、最初のモデルであるT10XはCセグメントSUVとして開発されています。他のモデルも市場の需要に合わせて開発される予定です。
TOGG T10X
TOGG T10Xは、2023年3月に市場投入されています。最大航続距離は523km。TOGG T10Xは、パワー160 kW(約218馬力)とトルク350 Nm、最高速度は185km/hで、0-100km/hの加速時間は7.4秒から7.8秒の範囲とされています。
インテリアは先進的で、29インチのタッチスクリーンと、運転席側には12.3インチのインストルメントディスプレイ。さらに、8インチのタッチスクリーンを使用して、社内温度制御などが操作可能です。
リチウムイオン電池を搭載し、標準範囲モデルでは52.4 kWh、長距離範囲モデルでは88.5 kWhのバッテリー容量を備えています。これらのバッテリーは中国のバッテリーメーカーであるFarasis Energyとの合弁事業であるSiroから供給されています。
TOGG T10F
2024年1月にCESで発表されたT10Fは、SUVタイプの電気自動車です。T10Fには、後輪駆動(RWD)が標準モデルとして設定されています。160kW/218馬力の出力と350Nmのトルクで、トルコで2025年に発売予定です。
T10Fには全輪駆動(AWD)モデルもあり、0-100km/h加速を4.6秒で達成し、700Nmのトルクを実現しています。航続距離は約530kmです。
バッテリー容量は、標準モデルでは52.4 kWh(航続距離最大350 km)、長距離モデルでは88.5 kWh(航続距離最大600km)で、近年のEVでよくみられる標準的なバッテリー容量です。T10Fは180 kWのDC高速充電器を使用すると、バッテリーの20%から80%までの充電がわずか28分で可能です。
T10FはV2L(Vehicle to Load)技術を搭載しており、車両のバッテリーからさまざまな電気機器への電力供給が可能となっています。
インテリアはT10Xを踏襲したものになっており、モジュールの共通化でコストダウンを図っていることが分かります。
まとめ
トルコの自動車メーカーToggについて紹介しました。
将来的には、トルコの自動車メーカーは国内外での競争力を高め、更なる市場シェアの拡大に取り組むことが期待されます。
関連記事
コメント