電気自動車は部品点数が少なく、自動車業界への参入障壁が下がるとされています。EV化の流れを受けて、成果各国で新興自動車メーカーが生まれ、そのなかのいくつかの企業は成長を続けています。
本稿では、今後成長が期待できる新興自動車メーカーを紹介します。それぞれの企業の概要や将来性、技術などについて、詳しく解説していきます。
米国EVの王者「テスラ」
EVといえばテスラと言っていいほど、北米での人気が高い企業です。
近年は中国でも販売が伸びており、比較的安価な価格設定とされているテスラモデル3を筆頭に、販売は好調です。
今後も成長は維持されると予想されており、世界でのEV化が進むにしたがってテスラも成長していくものと考えられます。
テスラが市場での主導権を維持し続けるための一つの鍵が、電池技術の革新とその生産能力の強化です。これまでサプライヤーから電池を調達していたテスラは、競争力の源泉となる電池セルの内製化を始めています。
また、EVの低コスト化のために、従来の製造方法を大きく変える「アンボックスドプロセス」にも着手しています。以下の記事で詳しく解説しています。
中国EVの圧倒的シェアを持つBYD
中国で最も成長したEV企業がBYDです。その規模は既にテスラに並んでおり、中国国内では敵なしです。
出自は電池メーカーであり、その電池技術を武器に低コストなEVを量産しています。コストを抑えられるのは電池だけではなく、EVに関わる主要な部品のほとんどを内製している点も強みです。
ルノー資本のEV新会社「アンペア」
ルノーが設立したEV企業がアンペアです。アンペアの主要株主はルノーであり、株式の過半数を保有しています。EV開発には投資資金が必要となるため、資金確保のため、今後アンペアの一部の株式を上場させる予定とされています。
Snapdragon(スマートフォンなどに搭載されるプロセッサの愛称)とandroidを車載OSとしたプラットフォームをクアルコムと共に開発するなど、ソフトウェア重視の視点を持った企業として知られます。
大手自動車メーカーがEV事業を分社化する流れは今後も続くものと考えられます。
中国新興で最も勢いのある「Li Auto(理想汽車)」
Li Auto(理想汽車)は中国の自動車メーカーで、新興の会社ですが、近年素晴らしい業績を収めています。Li Autoは開発チームに経験豊富なメンバーを迎え、高級なハイブリッド電気SUVを販売しており、同じ中国の新興企業である販売するNIOやXPENGといった競合他社を販売台数で上回っています。
2023年にはLiAutoとしては初となるEVも発表しており、混沌の様相を呈している中国市場で、ひとつ抜け出した感のある新興企業です。
以下の記事では、Li Autoの事業と技術、販売台数や利益と、今後の見通しについて解説しています。
スマホ製造の王者「ホンハイ」
スマホ製造の大手、鴻海(ホンハイ)がEV事業に進出してきています。
鴻海のEV量産向け開発プラットフォーム「MIH」の展開が始まっており、元日産のCOOで、日本電産の前社長である関氏が、鴻海のEV戦略トップに就任するなど、新事業への移行が進んでいます。
既に5種類のEVコンセプトモデルを公開しており、スマホ製造だけでなく、EV製造も受託できる環境を整備し始めています。
以下の記事では、台湾の電子企業である鴻海のEV戦略「HIM(Mobility in Harmony)」について解説しています。
中国版テスラとも呼ばれる「NIO(上海蔚来汽車)」
NIO(上海蔚来汽車)は、中国版テスラとも呼ばれており、既に複数のEVを市場投入しています。ダッシュボードの上に設置されているスマートスピーカーが特徴的で、車両のデジタル化と電動化を推し進めている先進的な企業です。
NIOはこれまでにいくつかのEVを市場に投入してきました。NIOが注目される理由として、EVだけでなく、電池技術やバッテリー交換技術も開発している点が挙げられます。また、近年スマートフォン事業にも参入しており、独自のデジタル化技術で差別化を図っています。
ベトナムの自動車メーカー「VinFast」
ベトナム国産自動車メーカーVinfast(ビンファスト)。ベトナムの不動産を中心とした投資会社ビングループ(Vingroup)の子会社で、この4~5年間で急速にグローバルな存在感を確立しています。
VinFastはかねてより米国進出を希望しており、2022年末に米国でIPO申請を行いました。数か月後に米国で上場する計画が難航を極めていましたが、8か月経過した2023年8月、ナスダック市場に上場を果たしました。
VinFastの経営は2025年までは黒字にならないと言われており、他事業での埋め合わせが可能と言っても苦しい状況。Vinグループ創業者のファム・ニャット・ブオン(Pham Nhat Vuong)氏は「24年には販売数は6万~7万台となり損益ゼロ、25年度には利益を生み出せる」とはしているものの、6~7万台の販売(工場稼働率20-25%)で利益が生み出せるのかには疑問は残ります。いつまでこの赤字をvinグループが許容するのか、今後どれだけ赤字を縮小できるのかが見ものです。
以下の記事では、Vinfastの自動車技術と、その将来性について紹介します。
中国の新興EV企業「シャオペン(小鵬,XPeng)」
シャオペン(小鵬,XPeng)は中国の自動車メーカーであり、テスラやBYDなどのライバルとの競争を繰り広げています。設立からわずか6年で、彼らは中国市場で注目を集める存在となりました。フォルクスワーゲンとの提携など、彼らの成長戦略にはさらなる期待が寄せられています。
一方で、ここ数年で販売台数は減少し、失速しているとも伝えられています。
以下の記事では、XPengが高く評価される理由と、近年の失速の理由について解説します。
中国の新興EV企業「Hozon Auto(合衆新能源汽車)」
Hozon Auto(合衆新能源汽車)は中国の新興EVメーカーのひとつです。廉価なEVを販売し、販売台数では中国の新興EVのなかでも目立つ存在となっています。
Hozon Auto(合衆新能源汽車)が展開するEVブランド「NETA」の電気自動車の販売台数は2022年時点で年間152,073台で、競合であるNio(122,486台)やXPeng(120,757台)を上回っています。NETAブランドからは、廉価なモデルのNETA Uなどを販売しているため、高級車を販売するNio(ニオ)やXPeng(シャオペン)よりも台数ベースでは多くなります。
一方で、製品のクオリティはあまり高くないともされています。スペック表記上は同等でも、実際に触ってみると作りが甘いと感じることが多いとされています。
NETAの品質レビューが低評価であることを、Hozon Auto(合衆新能源汽車)自身も認識しているはずです。中国車の品質は、地場のサプライヤーの淘汰もあり、底上げされています。今後、更に品質が向上した車両が投入されてくる可能性は十分にあります。
以下の記事では、Hozon Auto(合衆新能源汽車)の技術力と、その商品性について解説します。
中国新興EV企業「AVATR(アバター)」
AVATR Technologyは、2018年に設立された電気自動車(EV)のスタートアップです。AVATR Technologyは、中国の自動車メーカーである長安汽車(Changan Automobile)とEVメーカーのNIOの合弁会社「Changan-Nio」として立ち上げられました。
一方で、AVATRが長安汽車、Huawei、CATLという中国大手の支援を受けて開発した車は、当然レベルも高いものになっています。そもそも、これだけ大企業の支援を受けた車種が「ベンチャーの製品」とされてよいものかも疑問ではあります。
以下の記事では、AVATR(アバター)のEVの技術的特徴と今後の展望について考察します。
タイのEVメーカー「ARUN PLUS」
タイの自動車産業は、東南アジア最大で、世界第10位の自動車生産国であり、「アジアのデトロイト」として知られています。タイにおいても、電動化の波は避けられず、新興EVメーカーもタイでの生産を始めています。タイのEV業界の中でも、特に注目されるのが新興企業「ARUN PLUS」です。
車両製造は鴻海と手を組み、バッテリーではCATLやGotionと提携することで、早いスピードで車両の市場投入を目指しているように見えます。
以下の記事では、ARUN PLUSの事業の概要と、将来性を考察します。
まとめ
新興EVメーカーを紹介しました。テスラ、BYDが主要なプレイヤーになると考えられる一方で、その他のEVメーカーがどのように成長していくかはいまだに未知数でもあります。
中国ではLi AutoやNIO、シャオペンがBYDに続き、アジア圏では鴻海が存在感を示してくる可能性はあります。
以上、参考になれば幸いです。
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