全固体電池 一番進んでるメーカーは?

技術系読みもの

EVに搭載されているLiイオンバッテリー(LIB)の代替・革新型電池として期待される「全固体電池」。

LIBの電解質を固体にし、安全性を増し、高容量化が可能になると期待されている。
日本国内でも全固体電池開発の開発は活発であるが、どの企業が最も先行しているのであろうか?
今回は、特許出願件数からその動向を予想した。

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特許出願件数から見る全固体電池の開発動向

特許出願数推移

上グラフは、「全固体電池」に関する国内特許の出願数である。
※J-platpatにて「全固体電池」で検索した
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

もはや一目瞭然。特許数だけで言えば、
国内全固体電池開発はトヨタが圧倒的に先行
している。

トヨタは「東京オリンピック、パラリンピックが開かれる2020年、全固体電池を搭載したモビリティをお見せできるように、鋭意開発を進めている」と公表している。

2020年に公開されるモビリティはあくまでコンセプトのようなもので、我々の乗る一般乗用車に全固体電池が搭載されるのは2022年以降という見方が有力だ。はじめは液系LIBと全固体電池がどちらも積まれた状態で搭載が始まり、本格的に実用化されるのは2025年以降だろう、と私は考える。

2011年:全固体電池の特許権利者スコア
【全固体型リチウムイオン二次電池】特許総合力トップ3は出光、パナソニック、トヨタ
 弊社はこのほど、全固体型リチウムイオン二次電池(※1)について特許分析ツール「BizCruncher」を用い、参入企業に関する調査結果をまとめました。 電気自動車や蓄電用途としてリチウムイオン二次電池が注目されていますが、従来型は有機溶媒を電解質と用いているため、液漏れや発火といった安全性に問題を...

なお、2011年時点での特許権利者スコアで見ると、トヨタ自動車は3番手だった。しかし、2011-2016年の間に特許出願件数で他社を圧倒し、現在の地位に登り詰めている。ここからも、トヨタの全固体電池に対する本気度が伝わってくる。

では、トヨタ以外のメーカーに勝機はないのだろうか?

トヨタ以外のメーカーの勝機

特許出願数推移2

トヨタを除いた場合の順位を見てみると、

村田製作所
出光興産
日本ガイシ

の順となる。これらのメーカーのうち、村田と日本ガイシは型式の違う全固体電池を開発している。

全固体電池は、電解質の形式で
・硫化物型
・酸化物型

に分けられる。

トヨタを除くメーカーでは、村田製作所が頭一つ抜けているが、その特許出願スピードには減速感が感じられる。ただ、2019年の見本市CEATECでは全固体電池としては大容量(25mAh)の電池を発表しており、開発は継続しているし、新規技術の開拓にも積極的だ。単純に特許戦略が変わり出願数が減ったのか、実は開発が難航しているのか、懐の内は読み解けない。

一方で、FDKはここ数年で特許数を着実に伸ばしており注目に値する。FDKは2018年12月に小型全固体電池(140μAh)のサンプル出荷を開始しており、特許も製造方法に関するものを着実に出願している。全固体電池の目下の課題は「いかにして量産するか」であるため、技術開発の方向性も正しく、今後も伸びが期待できる。

企業ごと特許出願数(2018年2月)

全固体電池関連特許出願件数(全数)

各型式を開発しているメーカーは、下記の通りで、それぞれの特許出願件数は上のグラフの通り。
※調査方法は同じくj-platpatにて「全固体電池」で検索

■硫化物
トヨタ自動車
出光興産
日立造船
住友電気工業
ホンダ
日立

■酸化物
村田製作所
FDK
太陽誘電
オハラ
パナソニック
ナミックス
日本電気硝子
日本特殊陶業
豊島製作所
TDK

トヨタ自動車と異なる形式の「酸化物」を扱う各メーカーは、トヨタとは異なる土俵で戦える可能性がある。
酸化物型は、硫化物と異なり硫黄を用いないため、より安全性が高いと言われている。安全性の面で差別化できるのであれば、特許数で二番手につけている村田製作所にもチャンスがないとは言えない。

また、用途ごとに
・車載向け
・IoTやウェアラブル通信端末向け
に分けられるようだ。

村田は車載向けは狙っていない模様。
ここからも、全固体電池市場に関しては、車載向けはトヨタ一強、ウェアラブル端末向けには村田に勝機があるように見える。

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企業ごと特許出願数(2019年末)

特許出願数2

2019年末時点での各社の特許出願数を示す。パナソニックとFDKは、ここ2年の特許数増が著しい。パナソニックに関しては、2020年4月に電池に関する新会社を設立(トヨタと共同)するため、トヨタ流の特許出願(マンパワーでガンガン出願する)方式に変わってきていると推測できる。

また、2年前にはプレゼンスがほぼ皆無だった企業が、この2年で全固体電池関連の特許数を一気に増やしている。LGケムリミテッド(10件)と、三菱重工(6件)だ。

LGケムリミテッドの全固体電池関連特許

LGケムリミテッド 全固体電池

固体電解質を含む全固体電池用の電極
公開:令和2年3月12日(2020.3.12)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

上記が、LGが日本で出願した全固体電池電極に関する特許の一例。活物質とコーティングされた固体電解質に、カーボンファイバーやCNTなど線状の導電材を含む電極の構造である。
かなり具体的な特許であるし、実際の開発に直結しているものと考えられる(トヨタがこの特許に近いものを出しているのでは、とも思うが)。全固体電池は日本が研究をリードしていると認識しているが、今後は海外の動向も注視する必要がありそうだ。

三菱重工の全固体電池関連特許

三菱重工_全固体電池

電池システムおよび電池セル
公開:2019-06-27
https://patentfield.com/patents/JP20170238660#biblio

これは、全固体電池システムにおいて、一部の電池パックで破損や剥離(導通切れ)が起こっても、全体として導電が可能になるような内容の特許。三菱重工の特許は、電池パックやシステムに関する特許が多い。
電池自体は調達して、自社製品(宇宙関連?)に搭載するために研究開発を行っているものと考える。全固体電池のユーザ側の特許であり、電池そのものを開発しているわけではなさそうだ。

以上のように、2年経ってもトヨタ一強は変化なし。パナソニックとFDKの伸びが著しく、村田製作所には減速感が感じられる。いよいよ今後5年で全固体電池技術が市場投入される。継続して動向を注視したい。

各社の今後の動向

村田製作所とオハラは2019年に全固体電池の量産および販売を開始したい構えで、トヨタ自動車も2020年にはEVに搭載すると発表している。
その他、TDKは2018年春の量産開始を宣言しており、全固体電池が市場に出回る日が刻一刻と近づいている。

参考

patentfield

今回、調査中にJ-platpatのメンテナンスがあり、検索した文献を閲覧できなくなってしまった。仕方がないので他の特許サイトを探し、Patentfieldなるサイトを利用した。検索にはアカウント登録が必要で面倒だが、UIはj-platpatより見やすく便利。検索結果の図が表示されたり、公開数の推移が図で示されたりと便利な機能が多く優秀だった。

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