2020年には新型のMIRAIが発売されるなど、燃料電池と水素社会に対する期待は大きくなるばかりである。中国が燃料電池に本腰を入れていること、また最近流行りのカーボンニュートラルの観点からも、燃料電池の市場は今後も拡大することは間違いない。
一方で、サプライヤーを含めて、燃料電池関係のメーカーとして将来性のある企業がどこなのか、業界の外からは見えにくい。
今回は、燃料電池関連の特許出願数から、燃料電池で先行するメーカーを調査する。
燃料電池特許数の推移

日本の特許における、出願者の推移を確認した。特許数ではトヨタ自動車が圧倒的に多く、その数を増やし続けている。
燃料電池を大きく分けると、車載用と家庭用に分けられる。
車載用燃料電池は、MIRAIに代表される自動車搭載用の燃料電池で、プレイヤーは主に自動車メーカーとそのサプライヤーとなる。
車載用燃料電池関連のメーカー
・トヨタ自動車
・本田技研工業
・日産自動車
・デンソー
・アイシン精機
一方、家庭用燃料電池は、エネファームと呼ばれる熱機器のことを指し、プレイヤーは自動車に限らず、ガスメーカーとシステム、スタック、補器類のメーカーとなる。
家庭用燃料電池関連のメーカー
・パナソニック
・デンソー
・京セラ
・大阪ガス
・アイシン精機
・日本ガイシ
燃料電池の種類による分類
現在実用化されている燃料電池は、固体高分子型(PEFC)および固体酸化物型(SOFC)に分けられる。低温(100℃以下)で動作することから車載に用いられているのがPEFCであり、高温(600℃以上)で動作することから主に定置用電源として用いられるのがSOFCである。
これらは対象とする市場が異なることから、別物として評価するべきと考え、それぞれについて特許数調査を実施した。
固体高分子型燃料電池(PEFC)

固体高分子型燃料電池のプレイヤーは、トヨタ自動車と本田技研の2強で、次いでパナソニックや東レが追従している。
「燃料電池」というキーワードではトヨタと本田技研の差は大きいが、固体酸化物型燃料電池に限ると同等に見える。これは、トヨタ自動車は燃料電池本体以外の補器類やシステムについての特許も含めて抑えているのではないかと考えられる。
固体高分子型燃料電池のプレイヤーとして
・東レ
・旭化成
・昭和電工
が特許数上位に位置している。
東レは、固体高分子型燃料電池の材料サプライヤーとして影響力がある。燃料電池セル用の炭素繊維材料を供給しており、2020年には燃料電池向けの炭素繊維を5割増産するなど勢いがある。特許数では日産自動車を超えており、トヨタ、ホンダともに東レの材料を採用していると考えられる。
また、旭化成は固体高分子型燃料電池の心臓部といえる電解質膜を供給しており、昭和電工は燃料電池用セパレータを供給している。これら技術的に先行するサプライヤーは、今後も自動車メーカーからの需要が継続するとみられる。
固体酸化物型燃料電池(SOFC)

固体酸化物型燃料電池(SOFC)の特許出願数を見ると、
・京セラ
・日本ガイシ
・TOTO
・日本特殊陶業
などのセラミックメーカーが目立つ。
2020年現在特許数で首位の京セラは、セラミック製品を主に扱う企業で、特に固体酸化物型燃料電池(SOFC)の市場投入を実現するなどリーディングカンパニーとしての役割を担っている。近年パナソニックを追い抜く勢いがあることは注目に値する。
森村SOFCテクノロジーは日本ガイシ、TOTO、日本特殊陶業などの森村グループ企業が立ち上げた企業で、順調に特許数を伸ばしていることから、実質的には京セラ、パナソニックに次ぐ位置につける企業と考えられる。
まとめ
特許情報から、国内のキープレイヤーが見えてきた。特に、車載用燃料電池で先行するトヨタと、定置用、固体酸化物型で先行する京セラは注目に値する。
車載用燃料電池の方が市場規模は大きいため、自動車メーカーに部品や部材を供給する東レ、旭化成、昭和電工にも注目したい。
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