ホンダが外販する第二世代FC(燃料電池)システムへの一考察

燃料電池

ホンダが、水素燃料電池システムを外販するようです。

同時に、第二世代と呼ばれるホンダの燃料電池市システムも公開され、注目が集まっています。

本稿では、筆者の一考察を交えながら、ホンダの第二世代燃料電池システムについて解説します。

燃料電池とは

燃料電池は、燃料と酸素を反応させて発電することができる電源のことです。二酸化炭素を排出しないというメリットがあり、脱炭素化に向けた技術として注目されています。燃料電池は様々な産業分野で活用され、自動車産業では燃料電池車(FCV)に使用されています。

2024年仕様のFCシステムの外販計画

ホンダは、水素燃料電池システムを外販すると発表しました。米国のゼネラル・モーターズと共同開発している、第二世代と呼ばれるシステムです。目標は2020年代半ばに2,000台、30年には6万台、30年代後半には数十万台の販売です。

ホンダはこのシステムを、24年に発売するFCVにも搭載する計画です。

ホンダ、2024年米国で燃料電池自動車「FCV」発売予定

ホンダは2024年に米国で燃料電池自動車(FCV)を発売すると発表しました。車両はSUVタイプのCR-Vをベースとして、外観は従来のCR-Vと大きく変わらない予定です。生産は米国オハイオ州で行われるようです。

新型FCEVは、EVと同様に充電可能なシステムであり、PHEVと同程度の大容量バッテリーを搭載するものと見込まれます。このFCEVとトヨタの新型燃料電池車MIRAIの違いは、SUVタイプの車両、充電機能、新型の燃料電池システムにあります。

詳細:ホンダが2024年に発売する燃料電池車(FCV)は売れるのか

コストを1/3に

第二世代の燃料電池システムでは、コストを1/3に低減(2019年モデル比)しているといいます。ホンダが示している手法は以下の通りです。

・電極(MEA)の材料変更
・白金(Pt)使用量を大幅減
・セルシール構造の進化
・補機の簡素化(部品点数減)
・生産性の向上

第三世代FCシステム(2030年頃)の目標は、現状のコストの1/2とのことです。これが達成できれば、トータルコストでディーゼルエンジンと同等、との発言もあります。(つまり現状のFCはディーゼルの2倍コストがかかるパワートレインということに)

耐久性を2倍に向上

以下の方法で、耐久性を向上(耐低温性も大幅に向上)させているとのことです。

・耐食材料の適用
・劣化抑制制御

第三世代FCシステム(2030年頃)は、耐久性を2倍にするとのこと。第二世代(2024)のシステムはGMと共同開発ですが、第三世代のFCシステムはホンダ独自の開発となる可能性も示唆されています。

第二世代FCシステム(2024)への一考察

2016年の第一世代FCシステムからの変化点を考察します。少しマニアックな話なのですが、ご容赦ください。

トヨタ自動車のMEA (NEDO FCV課題共有フォーラム資料, 2019)

まず、燃料電池の心臓部である電極(MEA)の変更については、MEAを改良した、と説明しているため、MEAの構成部材である触媒層、電解質膜、拡散層のすべてを材料変更していると考えられます。

膜に関して、膜(おそらくナフィオン膜)の材料変更と、膜の厚みの低減によって、電解質膜の抵抗を低減し、発電性能を向上させているものと考えられます。

トヨタ自動車の多孔質カーボン担体 (ニューモデル速報 新型MIRAIのすべて より)

触媒層は、触媒担持カーボンの種類や構造をどのように制御しているのかによって、FC性能が大きく変わります。トヨタ自動車が2020年に発売した新型MIRAIには、多孔質カーボン担体が用いられているとされており、白金の微細化により使用量を58%低減したとされています。

ホンダの第二世代セルも、多孔質カーボン担体を採用していると考えられ、これによる白金量提言とガス拡散性を向上させているものと推察されます。

MIRAIの補器類

燃料電池の補器類は、冷却装置類、水素や酸素を送り込むブロアや、電解質膜を加湿する加湿器、空気の異物を取り除くフィルタ、水素検知センサなどを指すものと思われます。トヨタの新型MIRAIの補器類はFCスタックの外に張り巡らされており、システムを異常なまでに巨大化させています。

その点、今回公開されたホンダの第二世代モジュールは小型化が実現できているように見受けられます。部品点数の減と同時に、各部品の小型化も進められていると想像できます。

あくまで”モック”とのことで、実際の製品では補器類の変更が加わる可能性もありますが、コンパクトにまとまったシステムとして外販でも好印象になりそうです。

ホンダの第一世代FCセル構造 (NEDO FCV課題共有フォーラム資料)

耐久性の向上は、燃料電池の最大の課題で、ホンダも情報を多くは開示していないようです。劣化制御抑制は、劣化による発熱量が増えても温度が上がらないように冷却を制御するなどの処理を指すと考えられます。一方で、ホンダのFCセルは、冷却構造を持たないセルが含まれるため、温度制御がより難しい面があると考えられます。

まとめ

ホンダが外販する第二世代FCシステムについて、考察を加えながら解説しました。

2024年にはSUV型の新型車両が販売開始となるようで、楽しみです。

2023年に入って、EVだけでなく、水素にも目を向けなければカーボンニュートラルは達成できないとの見方が強まってきました。

ホンダだけでなく、ボッシュやVW、BMWも燃料電池システムの車両への投入を進めています。今後の動向も注視したいところです。

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某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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