自動車メーカーの燃料電池車(FCEV)への取り組みは、地球温暖化対策やエネルギー問題への対応として注目を集めています。日本・中国・韓国、そして欧州における主要な自動車メーカーの動向をまとめてみましょう。
トヨタ自動車
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MIRAIを市販するなど、燃料電池領域で先行するのはトヨタ自動車です。
トヨタは2030年までに、燃料電池車パートナー企業向けの外販で年間10万台を目指しています。
乗用車の割合は小さいものの、2030年代以降には大型トラックや小型商用車によるFC関連部品の量産効果を見込んでいます。
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クラウンのセダンモデルに、FCEVモデルが追加され、2023年秋ごろに発売を予定しています。
ホンダ
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ホンダは2024年に米国で燃料電池自動車(FCV)を発売する計画を進めています。米ゼネラル・モータース(GM)と共同開発した第二世代の燃料電池システムを24年に発売するFCVに搭載する予定です。
目標は2020年代半ばに2,000台、30年には6万台、30年代後半には数十万台の販売としており、やはり普及時期は2030年以降に見込んでいるようです。
現代
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現代はNEXOというSUVタイプのFCEVを2018年に世界初公開し、日本国内では専売店を持たずにネット販売の形式で販売しています。
燃料電池車の普及に向けて、中国市場での展開も視野に入れていると見られています。
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NEXOは95kWの燃料電池システムと156.6Lの水素タンク(合計3本)を搭載しています。世界中でSUVタイプの市販FCEVはNEXOのみであり、日本で買える数少ないFCEVのうちの1つです。
BMW
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BMW(ビーエムダブリュー)は電動車の分野において、特に電気自動車(EV)に力を入れてきましたが、燃料電池車(FCEV)にも注目し、独自の技術開発とパートナーシップを進めています。
BMWは2020年代後半に量産FCVを市場投入する計画を立てています。これにより、EVだけでなく、燃料電池車にも焦点を当てることで、持続可能なモビリティへの取り組みをさらに進化させる狙いがあります。
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BMWはトヨタ自動車との協業関係を築いており、iX5 HydrogenのFCセルはトヨタが供給しています。また、同社のFCV「MIRAI(ミライ)」の2代目にも同じFCセルが採用されています。一部の燃料電池技術をトヨタと共有することで、効率的な開発が行われています。
BMWは水素タンクを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製にしています。これにより、水素の搭載量を最適化し、車両の重量や性能に対する影響を最小限に抑えることができます。トヨタとの協業は燃料電池セルのみとされており、BMWはFCスタックや水素タンク、リチウムイオン電池などを独自に開発している点も特筆すべきです。
VW
VWは水素燃料電池車に関して否定的な意見を持っており「商用車には使えるかもしれないが乗用車には向かない」としています。
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VWは過去にも水素燃料電池車の試作車を公開しており、2014年にはVWゴルフ(ジェッタ)ハイモーション、2015年にはアウディA7 h-tronなどが登場していました。しかし、これらの車両は試作車であり、市販化には至りませんでした。
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一方で、VWの前CEOであるヘルベルト・ディースはかつて、乗用車には水素燃料電池は向かないとして、ヒュンダイ・ネクソやトヨタ・ミライに対抗する水素燃料モデルの発売は計画していないとの見解を示していました。彼の発言からは、乗用車においてはまだまだ課題があるとして、燃料電池車の市場展開には慎重な姿勢を示していることが窺えます。
一方で、酸化物型の電解質を用いた水素燃料電池に関する特許を共同開発しているなど、技術の追求は進めています。今後も全く手を出さないのかというと、完全には言い切れないようです。
メルセデスベンツ
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メルセデスベンツはGLC F-CELLをリース販売のみで提供し、欧州と日本のみで販売しています。PHEVと同様に、13.5kWhという大容量バッテリーを搭載しており、充電が可能です。
ホンダとGMが共同開発するFCEVも、F-CELLと同じように電池容量を大きくしたモデルを開発しています。
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燃料電池システムは
また、ダイムラーバスでは、eCitaroと呼ばれる電気バスに燃料電池をレンジエクステンダーとして搭載した燃料電池バスを開発しています。
GM(ゼネラルモーターズ)
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ゼネラルモーターズ(GM)は、自社で燃料電池システムを開発しています。GMの燃料電池技術は、特に重量級の商用車両用途を焦点に「HYDROTEC fuel cell power cubes」と呼ぶ燃料電池を搭載したシステムを開発しています。このシステムは、300枚以上の水素燃料電池セルを含み、電力および熱管理システムと組み合わされています。
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ゼネラルモーターズ(GM)とホンダは、次世代の水素燃料電池システムの共同開発に取り組んでいます。両社の関係は2013年に始まり、燃料電池システムのコスト削減と耐久性向上に重点を置いています。2世代と呼ばれるホンダの燃料電池システムは、GMとの開発品です。(クラリティFuel Cellの燃料電池システムはホンダ独自開発品で、GMは関与していない)
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Mはアラバマ州のオートカー・インダストリーズと共同で、GMのハイドロテック水素燃料電池システム(「パワーキューブ」と呼ばれる)で動力を生成する、全電気式の商用トラックの範囲を構築するための合弁開発契約を結びました。これらのトラックは、2026年からアラバマ州バーミンガムのオートカー工場で生産される予定です。
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車載用だけでなく、ダンプトラックへの燃料電池開発も進めています。小松製作所(コマツ)と米General Motors(GM)は、コマツの鉱山用の超大型ダンプトラック「930E」向けに水素燃料電池パワーモジュールを共同開発することを発表しています。
まとめ
これらの自動車メーカーは燃料電池車の普及に向けてさまざまな取り組みを行っており、技術革新と市場展開によって、持続可能なモビリティの実現を目指しています。
各社の取り組みを盛んに支援する政府の政策やインフラ整備も重要な要素となりますが、燃料電池車の市場普及を加速させるためには、さらなる技術革新とコスト削減が必要とされます。これらのメーカーの努力により、自動車産業は環境に優しい未来への一歩を踏み出しています。
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