電池の記事でよく目にするセル、モジュール、パックなどは、意味がそれぞれ異なります。
本記事では、電池の「セル」「モジュール」「パック」それぞれの違いを解説します。
「セル」「モジュール」「パック」の違い
よく「バッテリー」と呼ばれるものにはセル、モジュール、パックなどの種類がありますが、それぞれ何を指すのでしょうか?それぞれの違いは何でしょうか?
バッテリーセルの製造と、モジュールやパックの製造はそれぞれ異なる工程となります。バッテリーセルの製造は化学的な工程が主で、一方モジュールやパックの製造は主に機械的な組み立てが求められます。
セル
バッテリーセルは、エネルギーを化学的に蓄えるための最小単位です。身の回りにある乾電池などがセルにあたります。
その形状は様々で、一般的なものには角柱型、パウチ型、円柱型などがあります。電気自動車は400-800ボルトを必要とするのに対し、1つのバッテリーセルは約3~4ボルトを持ちます。
モジュール
セルが直列あるいは並列に接続されたものをバッテリーモジュールと呼びます。必要な電圧とエネルギー容量が得られます。
パック
バッテリーパックは、自動車に搭載される電池の部品の集合体です。
バッテリーパックには、バッテリーセルを含むモジュール、ソフトウェア(バッテリーマネジメントシステム:BMS)、冷却・加熱システムなどが含まれています。
パックには冷却機能も付与されており、電池の充放電で発生する熱を、いかに効率よく冷却できるかも、電池パックの1つの性能指標となります。
電池容量の違い
電池セルをモジュール化し、さらに電池パックにした後は、体積エネルギー密度がその6割超に低下します。
テスラのEVに搭載されているセルのエネルギー密度は250Wh/kgとされており、これをパックにしたものは150Wh/kgまで低下するとされています。
エネルギー密度の発表値を見る際には、それがセルでの値なのか、パックでの値なのかに注意してみる必要があります。
スペック | |
---|---|
電池種類 | 液系リチウムイオン電池 |
正極 | 三元系 |
セルエネルギー密度 | 250 Wh/kg |
パックエネルギー密度 | 150 Wh/kg |
セルをパック化するとエネルギー密度が低下する主な要因は、衝突時の衝撃から電池を守るための外装であり、補強部材によって重量が増えてしまうことにあります。
特に、トヨタ自動車のEVであるbZ4Xは、電池パックの補強部材を過剰なまでに実施し安全性を担保しており、各自動車メーカーの思想が読み取れる部分でもあります。
セル→モジュール→パック構造の課題
パックを組み立てる際、治具を使ってモジュールを釣り上げながらケースに搭載するため、パック内に隙間ができてしまい、体制エネルギー効率が低下します。この「隙間」は特定の機能を持たない「ムダ」なスペースです。
たとえば、日産の電気自動車リーフのバッテリーパックは空冷式ですが、ブロワなどによる冷却ではなく温度差による自然対流のみで、空間は空冷の流路として機能させているわけでもありません。
セル→モジュール→パックという電池搭載方法は今後見直される可能性が高いです。
今後、電池搭載方法は変化する
セルをモジュール化してパックにする製造プロセスは、近い将来変わる可能性があります。
セルがモジュールに分割されることなく、直接バッテリーパック全体に組み込まれる「Cell to Pack(CTP)」方式や、セルが車両フレームに直接組み込まれる「Cell to Chassis(CTC)」および「Cell to Body(CTB)」方式が開発されつつあるためです。
CTC構造
CTP構造により、電池パック内をモジュールレスとすることで、空間に電池セルを敷き詰められる割合が向上します。中国電池大手のCATLは、2019年にモジュールレスの電池パックを発表し、その体積利用率は55%と非常に高い値でした。
更に、2022年にCATLはパック化に適した電池セルを用いて「麒麟電池」と呼ばれる電池パックを開発、体積利用率を72%まで向上させました。
CTC、CTB構造
Cell to ChassisやCell to Body構造は、長年コンセプトが提唱されており、電池大手のCATLも「スケートボードシャシー」という名称で、電池を搭載したシャシーのコンセプトを提案しています。
このように、電池を効率よく車両空間に設置する方法が、近年の電池パックの性能向上に大きく寄与しています。
まとめ
「セル」「モジュール」「パック」の違いを解説しました。
エネルギー密度の表記を見る際には、セルなのかパックなのかに注意が必要です。
今後はモジュール化せずセルを直接パック化する手法や、パックを車体と一体化する試みが進められるものと考えられます。
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