【図解】電池セルの円筒、角形、パウチの特徴を比較

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池の一般的なパッケージング技術は、コイン、円筒、角形、パウチの4つです。特にEVなどの車載用では、円筒、角形、パウチの3種類が主に利用されます。

それぞれの特徴と、今後の動向を紹介します。

比較

メリットデメリット

パウチ型電池セル
軽量
空間効率が高い
形状が柔軟
カスタマイズが容易
破裂や膨張のリスクがある
保護回路の設計が必要
熱の拡散が不均一

円筒型電池セル
耐久性が高い
一般的に熱的に安定
量産性が高い
重量が重い
形状が固定されている
空間効率が低い

角形(プリズム型)電池セル
空間効率が高い
電池パックの設計が容易
耐久性が低下
熱的に不安定

3つの電池を比較した表を示します。いずれもメリット・デメリットがあり、利用用途によって使い分けられているのが現状です。

バッテリーメーカーの展開する電池形状のシェア(https://www.addionics.com/の情報をもとに当サイト作成)

この円グラフは、バッテリーセルの形状別の市場シェアを形状別に示しています。車載電池のシェア上位6社(LGES、CATL、Panasonic、Samsung、BYD、SK On)の情報から作成しています。

全体の40%を占める最も大きな部分は角柱型で、続いて35%のシェアを持つパウチ型が続きます。円筒型は15%の市場シェアを持ちます。その他は「上位6社以外」であり、その他も角・円筒・パウチのいずれかに分類されます。

パウチ型電池セル

パウチ(pouch)と呼ばれる形状です。パウチ型電池セルは、密封された柔らかいアルミニウムコーティングを容器として使用し、軽量な構造が特徴です。パウチセルはパッケージング効率が90%~95%に達するなど、スペースの最適化が可能であり、エネルギー密度の向上にも寄与しています。

パウチ電池は導電性多層ホイルパッケージを使用します。金属のパッケージを使用しないパウチ電池は、軽量、低コスト、小型であり、エネルギー密度が高くなります。

日産リーフに採用されたリチウムイオン電池パックはパウチ型の電池セルを採用している

日産リーフには、パウチ型のセルが搭載されていることが知られています。

全固体電池という将来的なゲームチェンジャーがパウチセル形式でのみ動作することから、2025年から2030年の間に実用化が期待されている全固体電池が主流になると、パウチ型が更に主流になると予測されています。

パウチ型電池に用いられるパウチ(包装材)は、大日本印刷(DNP)が世界最大手で、世界シェアが6~7割に上ります。車載向けに限定すればシェア9割とされ、海外の顧客ニーズに対応するため生産体制を世界に広げるなど、事業の拡大を進めています。

円筒型電池セル

円筒状(cylindrical)の電池です。

円筒型電池セルは、大量生産の歴史が長く、特定の用途での利用が続いています。この形状のセルは、コストが安く、高い機械的安定性を持つことから、多くのメーカーが利用してきました。

円筒セルは規格が統一されており、EV以外の用途でも使われることから、世界でも量産実績が非常に多い形式の電池です。万が一、サプライヤーが何らかの理由で製品を納入できない場合でも、寸法の点で同じ製品を製造する別のサプライヤーが必ず見つかるというメリットもあります。

引用元:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/inf2.12000#

円筒電池は硬い金属ケースを使用します。

テスラの初期のEVでは、多数の円筒形セルが使用されています。パナソニックなどが供給する円筒型の電池セルが用いられており、EVといえば円筒セルであるというイメージを広めている代表格です。

セルの中には、正極・負極とセパレータにより構成される「ジェリーロール(Jelly roll)」と呼ばれる巻物が入っています。

しかし、円筒セルは電池パック内の利用可能なスペースの最適化が困難であり、エネルギー密度を向上させることには向いていません。

今後、EV用に円筒電池を用いる企業はさらに減るものと考えられ、長期目線では、パウチ型、あるいは角形の電池に移行していくことが予想されています。

角形電池セル

角形(prismatic)に成形された電池が角形電池です。

角形電池は、大容量や薄型設計が可能な点で評価が高く、複数のセルを簡単に接続し、より大きなバッテリーパックを作成する用途で用いられています。

角形電池は普遍的な形式(円筒電池のような国際規格)が存在せず、各メーカーが独自の設計を持っているのが現状です。

全固体電池がパウチである理由

米国Solid Power社の全固体電池

次世代電池として期待される全固体電池は、いずれの企業もパウチ型で開発を進めています。

これは、全固体電池に用いられる固体電解質が、充放電サイクル中に微細な変形や膨張を起こす可能性があるためです。硬いケースを持つシリンダーや角柱型のセルでは、膨張による応力が内部で集中し、電池の性能や寿命に影響を及ぼす可能性があります。

他にも、電解液に比べて熱伝導率の低い固体電解質は、円筒や角形では熱管理が難しいなどの問題もあり、全固体電池は主にパウチ型で提供されると考えられています。

マクセルは、全固体電池の円筒化を実現しています。車載用ではなく小型の電池ではありますが、パウチではなく円筒で全固体電池を実用化している興味深い例です。

まとめ

現状はパウチと角形が主流で、テスラは円筒を使い続けています。

全固体電池がパウチセルでしか実装できないことから、パウチセルが今後主流になることは容易に想像できます。

これ以上新たな形状が生まれることは、量産性の観点から考えるとなさそうに思います。それよりも、電池セルをうまくモジュールや電池パックに搭載するための技術(セルtoパックなど)が研究されていくものと考えます。

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました