近年、自動車産業は環境への配慮と電動化への移行に向けて大きな進化を遂げています。その中でもバッテリー技術の向上は特に注目されており、EVE Energy(イブ・エナジー)が提供する新型の円筒バッテリーが、BMWに供給されると噂されています。
この記事では、EVE Energyの新しいバッテリーテクノロジーについて詳しく探究し、その特徴や競合との比較、そして将来の展望について考察します。
EVE Energyの概要

EVE Energyは2001年に設立され、その後2009年から深センGEMに上場し、リチウム電池製造の分野で有名な企業となりました。
EVE Energyは、民生用バッテリー、動力用バッテリー、エネルギー貯蔵バッテリーの製造に特化しています。自動車載用バッテリーの分野ではまだ世界シェアのトップ10には入っていない状況ですが、エネルギー貯蔵用バッテリーにおいては中国内でトップ3の位置を占めています。

EVE Energyの主要な取引先として、韓国の自動車メーカーである起亜自動車(Kia Motors)、ドイツのBMW、イギリスのジャガー・ランドローバー、中国の電動車メーカーである小鵬汽車(Xpeng Motors)などが含まれています。
新型円筒バッテリーの登場
EVE Energyは2023年3月、新たな円筒バッテリーモデルを発表しました。これは特にBMWの車載用バッテリーセルとして採用され、その性能や特徴において大きな注目を浴びています。
新しい円筒セルはフォーマット4695を採用し、テスラの採用するセルよりも15ミリメートル長いものです。BMWはこれらのバッテリーセルを電気セダンおよびSUVモデルに使用する予定で、その効果的な航続距離の向上が期待されています。
ITMES | INR4695E | INR4695P |
---|---|---|
Energy @ 4.25-2.8V 0.33C&IC | 119Wh (0.33C) | 109.6Wh (0.33C) |
Dischage capacity @ 4.25-2.8V | 32.5Ah (0.33C) | 29.7Ah (0.33C) |
Weight | 421 ±5g | 414 ±5g |
Energy Density@0.33C | ≧280 Wh/kg | ≧260 Wh/kg |
ACR@ 30% SOC | ≦1.5mΩ | ≦1.1mΩ |
DRC @ 50%SOC, 2C, 10s | ≦2.8mΩ | ≦2.0mΩ |
POWER (50%SOC & 10s) | ≧700 W | ≧1100 W |
Nominal voltage @ 0.33C | 3.68V(0.33C) / 3.62V(1C) | 3.68V(0.33C) / 3.62V(1C) |
この新技術によって、BMW車の航続距離は約40%向上し、電動車の実用性が大幅に向上することが期待されます。
一方でデメリットも考えられます。新型セルの長さが長いことで、搭載時に車体の高さがあがってしまうこと、それに伴って空力的な損失が生じる可能性もあります。EVE Energyは260 Wh/kgと280 Wh/kgの2つのモデルを提供しており、前者は急速充電に優れ、後者はエネルギー密度が高く航続距離を伸ばす特性があります。
テスラの円筒電池との比較

EVE Energyの新型円筒バッテリーセルは、現在テスラの採用するパナソニック製の円筒セルよりも、エネルギー密度の点で優れています。EVE Energyのセルのエネルギー密度は260および280 Wh/kgであり、約250Wh/kgとされるパナソニックの18650円筒セルを上回ります。
一方で、近年テスラは電池の内製化を進めています。2022年に発表されたテスラの内製セルは、エネルギー密度が280Wh/kgに近いとされており、EVE Energyのエネルギー密度と同等です。
テスラが採用するとは考えにくい

テスラは現状EVE Energyのセルを採用しておらず、今後EVEのバッテリーを搭載するとも考えにくいです。EVEのセルはテスラのセルよりも15cmほど全長が長いことがその理由です。全長の長いバッテリーセルを採用するためには、バッテリーパックや搭載位置の寸法も変更する必要がありますが、テスラはモデルチェンジのタイミングでしか電池パックの設計を変更しないため、採用に踏み切るとは考えにくいです。
まとめ
EVE Energyの新型円筒バッテリーテクノロジーは、自動車産業において大きな革命をもたらす可能性を秘めています。
その高いエネルギー密度と急速充電能力により、電動車の航続距離を大幅に向上させ、ユーザーの利便性を高めることが期待されます。今後の展開に注目しつつ、自動車産業がより持続可能で効率的な未来を築いていく過程で、EVE Energyの技術が果たす役割に期待が寄せられます。
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