2023年、Li Autoは中国新興メーカーのなかで頭一つ抜け出した

中国

Li Autoは中国の自動車メーカーで、新興の会社ですが、近年素晴らしい業績を収めています。Li Autoは開発チームに経験豊富なメンバーを迎え、高級なハイブリッド電気SUVを販売しており、EVを販売するNIOやXPENGといった競合他社を販売台数で上回っています。

この記事では、Li Autoの事業と技術、販売台数や利益と、今後の見通しについて解説します。

Li Autoとは

Li Autoは中国の自動車メーカーで、2005年に設立された、まだまだ新しい会社です。

Li Autoの開発チームにはスマートフォン業界の経験豊富なメンバーが多く参加しており、直近でも元Huaweiなどの企業で働いた経験を持つエンジニアを採用するなど、ソフトウェアベースで製品を設計する思想をもつ企業です。

Li AutoのフラッグシップSUVであるLi L9(www.lixiang.comより)

彼らの主力製品はL7、L8、L9という車種で、どれも高級なハイブリッドSUVです。大容量電池に、レンジエクステンダーとしてエンジンも搭載することにより、電気自動車で不安心される航続距離を延ばしています。

中国の新興自動車メーカーとしては珍しく、Li Autoは純粋な電気自動車(BEV)はまだ製造していません。(目下開発中とされる)

Li Auto初のEVモデル「Li Mega」

Li Autoにとって初めての電気自動車(EV)であるLi MEGAが、2023年末に公開されました。MEGAはミニバンのような車で、高級な価格帯に位置しています。

Li Megaには、中国電池最大手のCATLが製造したQilin(麒麟)バッテリーが搭載されています。このバッテリーのおかげで、わずか12分の充電で500キロメートル走行できると言われています。バッテリーの充電速度も非常に速く、5Cを実現するともされています。

※1Cは、満充電の電池を1時間で完全に放電する際に流れる電流です。Cの値が大きいほど大きな電流を出力でき、充電速度が速くなります。

麒麟バッテリーについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

肥大化したプリウスと揶揄される新型車

Li Autoの開発しているLi Megaのテスト車両の写真がネット上で広まっています。このエクステリアを見た海外のブロガーの間では「肥大化したプリウス」とか「高速鉄道車両」と言われています(決して褒められていない)。価格は50万元(約1000万円)以上になるため、高級なミニバンと言えるでしょう。

Li Autoの初となるEV「Li Mega」は2023年12月に発表され、2024年の3月から顧客に納車される予定です。Li Autoにとって、初の電気自動車モデルとなるLi Megaの成功は非常に重要です。Li Megaの性能や使用するテクノロジーがどれくらい優れているかが大きなポイントになります。

なお、日本での販売はないと考えられます。Li Autoは中国国内での事業に専念しており、グローバル拡大を目指すNioやXPangとの戦略の違いも垣間見えます。

Li Autoが2024年に発売を予定するPHEV「L6」の試作車と思われる写真

2024年は、新型PHEVにあたる「L6」と、MEGAを含む4車種の新型BEVを相次いで発売する計画で、2024年の販売目標は80万台とされています。

Li Autoの業績は好調

販売台数は順調に推移している

中国の自動車メーカー、LiAutoの最近の業績は、中国の新興EVメーカーの中では比較的好調です。LiAutoは3四半期連続で黒字を出していて、利益も安定しています。

Li Autoは2019年11月に最初のモデルであるLi ONEを生産し始めてからわずか47か月で50万台を販売しました。これは中国の新しい電気自動車メーカーとしては初めての偉業です。

2023年に入ってからも販売台数は順調に増加している(Li Autoのリリースをもとに当サイト作成)

直近の事業も好調です。2023年7月には34,134台の電気自動車を納入し、前年と比べ227.5%の成長を記録。8月にも34,914台を納車し、前年の7倍以上の増加となりました。他の競合メーカーであるNio(約19,329台(前年比81%増))やXpeng(13,690台(前年比43%増))を大きく上回っています。

Li Autoと競合他社の販売台数推移と展望

Li AutoはNioやXpengなどの新興EVのなかでも高い成長率をみせる(単位は万台、発表情報をもとに当サイト作成)

現在、Li Autoの今年の累計販売台数は173,251台で、中国の3大EVメーカーであるLi Auto、Nio、Xpeng(シャオペン)の中でトップです。Li Autoは2025年までに毎年160万台の車を販売する目標を掲げています。

現状、Li Autoは現時点では海外展開の計画はありません。これは他の競合会社とは異なる点です。競合のNioはすでにヨーロッパに20以上のバッテリー交換ステーションを設立していますし、Xpengは2月にはヨーロッパの4か国で車の販売を開始しました。

Li Autoの経営は中国新興メーカーのなかで頭一つ抜けている

Li Autoは、2023年末に発表する予定のLi MEGAに加えて、2024年には新しい車のモデルを3つ発表する予定です。これにより、Li Autoはさらに競争力を高めていくとされています。

YearNet Margin
NIO (%)
Net Margin
LI (%)
Net Margin
XPEV (%)
2019-145.8-857.5-159.0
2020-20.0-12.0-17.0
2021-11.0-15.0
2022-29.3-4.0-34.0
Liの純利益率は-4%と、黒字化していないものの他社と比較すると小さい割合に留めていることがわかる

Li Autoは業績も堅調で、株価も適切に推移しています。Li Autoが現在販売している車はEVではなく、ハイブリッドモデルで提供されているため、「EVに極端に振りすぎない」経営が、結果的に安定して信頼性のある経営に至っている可能性もあります。

新興企業としては珍しく、Li Autoは2023年にはすでに利益を出しており、競合他社のXpengが2025年までに黒字化を目指している(実現性は不明)ことと比べると、Li Autoは経営面で信頼性が高いと言えます。

3社の販売台数を比較すると、2022年末ごろまで三つのメーカーの販売台数には大きな差はありませんでしたが、2023年になると差が顕著になり、Li Autoが突出して販売台数を伸ばしていることがわかります。

以下の記事では、中国の新興EV3社について紹介し、その業績を比較しています。

まとめ

Li Autoは驚くべき業績を収めており、新興のEVメーカーとしての将来性を示しています。 Li Autoの車種はEVではなくハイブリッドであり、彼らの新しいEVモデルである「Li Mega」も今後市場に投入される予定です。堅実に経営を続ければ、Li Autoの成功は続いていくことでしょう。

信頼性のある経営と市場でのリーダーシップを持っているLi Autoは、EV業界で今後も注目する必要がありそうです。

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この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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