シャオペンは中国の自動車メーカーであり、テスラやBYDなどのライバルとの競争を繰り広げています。設立からわずか6年で、彼らは中国市場で注目を集める存在となりました。フォルクスワーゲンとの提携など、彼らの成長戦略にはさらなる期待が寄せられています。
一方で、ここ数年で販売台数は減少し、失速しているとも伝えられています。
この記事では、XPengが高く評価される理由と、近年の失速の理由について解説します。
シャオペン(XPeng)とは
シャオペン(XPeng)は、中国のEV新興企業の一社です。設立は2017年で、創業者の何暁鵬は、アリババのモバイルBG部門の責任者だった人物です。
- 2017年シャオペン設立
- 2018 年 11 月XPeng G3 SUVの生産を開始
- 2019 年 4 月P7の生産を開始
- 2021年P7の輸出を開始
最初の国際市場はノルウェー
- 2021 年 9 月P5 を市場に投入
- 2023年4月G6を発表
設立からわずか6年で、彼らは中国市場で注目を集める存在となりました。
日本の自動車メーカーもXPengには注目しており、先進的な技術を持った自動車メーカーとして、比較対象の一つとしてよく挙げられる企業です。
Xpeng(シャオペン)の先進的な技術力
Xpeng(シャオペン)が注目される理由は、XPengがソフトウェア優先で自動車を設計する企業であるためです。彼らはSDV(Software Defined Vehicle)と呼ばれる、ソフトウェアベースで設計を進める思想を持っており、SDVに関してはテスラの次に優れた技術を持つとされています。
ソフトウェア技術は基本的にすべて社内で設計・開発を行っており、開発手法もテスラに近いものがあります。
社内でソフトウェア技術を持つことは、今後の自動車メーカーに課せられる重要な課題です。トヨタは子会社のWovenで車載OSを開発したものの、その後デンソーと共に社内に取り込もうとしています。ソフトウェアを基準にしてハードウェアを設計できない企業は、今後商品性の高い自動車を開発できなくなり、衰退すると考えられます。欧州や中国にはモバイルやウェブ技術に詳しいエンジニアを幹部に据える企業も多く、今後この流れは拡大していくものと考えられます。
SEPA 2.0に今後3年を懸ける
Xpengは最新のプラットフォームである「SEPA 2.0」を発表しました。SEPAとはSmart Electric Platform Architectureの略称で、次世代EVを投入するために開発したプラットフォームと言えます。
SEPA 2.0は2024年後半に発売を予定しているG6から採用が始まり、少なくとも今後10のモデルに導入される予定です。
Xpengの「SEPA 2.0」を使用したコンパクトSUV「G6」は、テスラのモデルYと非常に似た寸法とデザインになる予定です。さらに、G6の価格はモデルYよりも約1万ドル安くなる予定ともされています。
ギガキャスティングを採用
「SEPA 2.0」はソフトウェアに限らず、ハードウェアにも技術革新を持ち込んでいます。
車体構造は、フロントとリアに、アルミダイキャストで製造した一体部品を用います。これはテスラが「ギガキャスティング」として導入している技術で、Xpengも追随しているようです。ギガキャスティングはトヨタなどの自動車大手でも開発が進んでおり、これまで数十点の部品を繋ぎ合わせていたボディを、1つの部品として製造することで、部品数を削減しコストを下げる狙いがあります。
ギガキャストの技術については、以下の記事でも詳しく解説しています。
2023年秋に発表されたMPVであるXpeng X9は、このアルミダイカストの一体成型技術を、MPVとしては世界で初めて量産で採用しました。
フロントおよびリアのボディ構造を一体成型品として利用することで、スペースが非常に広くなり、同時に3列目乗員の安全性を向上させています。時速88キロまでの高速追突に耐えることができるとのことで、スペース効率と衝突強度の向上を同時に実現しているようです。
電池パックはボディと一体化
車体底の中央には、巨大なバッテリーパックを備えています。バッテリーパックはボディと一体化されている、いわゆる「Cell to Body」と呼ばれる電池搭載方法です。電池パックが車体構造となることで、電池搭載のムダを少なくし、車体重量をなるべく軽く、より多くの電池を搭載できるように工夫が進められています。
電池技術は、化学的な組成を変更した新型電池の開発と並行して、「狭い場所に、ムダなくバッテリーを敷き詰める」技術開発が進められています。電池搭載に関する技術に関して、以下の記事が参考になります。
シャオペンの幹部は、SEPA 2.0の投入によって「3年間はリーダーシップを維持できる」としています。以下は、Xpengのプレジデント、Brian GuのSEPA 2.0に関するコメントの抜粋です。
Well, first of all, I think we want to maintain our technology leadership for the next few years. So the combination of these technology in this platform, we believe give us the ability to maintain that leadership for at least three years. Secondly, I think this platform also allows to be a lot more efficient in order to come up with new products, a lot more, and also the R&D cycles are shortened. And obviously the benefit for customers to own the most advanced technological product at a very affordable prices.
(第一に、私たちは今後数年間、技術面でのリーダーシップを維持したいと考えています。ですから、このプラットフォームでこれらの技術を組み合わせることで、少なくとも3年間はリーダーシップを維持できると考えています。第二に、このプラットフォームによって、新製品を開発するための効率が大幅に向上し、研究開発サイクルが短縮されると思います。また、顧客にとっては、最先端の技術を駆使した製品を非常に手頃な価格で手に入れられるというメリットがあることは明らかだ。)
開発したプラットフォームは、複数車種に使いまわして設備や技術を償却するのが一般的で、3年間と言う期間はあまりにも短いです。「リーダーシップを維持できる」3年の後、何年間このプラットフォームを維持するのかに注目が集まります。
シャオペンの業績は下降気味
シャオペン(Xpeng)の業績は下降気味です。
2022年の新車販売台数は12万757台でした。2022年上半期は6万8983台を納車し、前年と比べて124%も増加した一方、下半期には販売台数が大幅に減少し、年間の販売目標である25万台には達しませんでした。成長率は前年と比べて23%増で、ほぼ横ばいです。
2023年のXpengの業績は更に低迷。第1四半期の納車台数は前年と比べて47%減の1万8230台でした。
シャオペン(Xpeng)は、売上減少が一時的なものであると主張しています。競合他社であるLi AutoやNIOと比較すると、NIOとは似たような販売台数推移であり、Li Autoには後れを取っています。
中長期的な戦略と主要な取り組みを発表しており、営業利益は2025年に黒字化、2027年には販売台数が120万台に達するとしています。将来の5年間、XPENGは顧客を中心に製品の競争力を構築し、自動運転や海外市場の拡大に力を入れ、さらには積極的にソフトウェアや新しいビジネスモデルを模索するとしています。
2024年3月には、低価格のブランドを立ち上げる計画を発表しており、販売台数を追うビジネスは低価格ブランドで進めていくものと考えられます。
シャオペンの業績低下の理由
XPeng(シャオペン)の失速の理由は、大きく以下の2点が挙げられます。
- モデルチェンジの遅れと市場ニーズとのギャップ
- 電池メーカーとの関係悪化
以下で詳しく解説します。
モデルチェンジの遅れと市場ニーズとのギャップ
製品ラインナップのモデルチェンジが遅れている状況で、シャオペンの強みであるソフトウェア技術を活かした自動運転車も市場にうまく浸透していません。
中国でも、自動運転車に対する一般の人々の信頼が十分でないため、その技術力が活かされていない状況です。従業員の士気の低下や、消費者のイメージや評判の悪化も噂されています。
新規事業に時間やコストを費やしていたことも、業績低下の理由となっています。シャオペンは空飛ぶ自動車などに注力していましたが、現在は再び主力商品である電気自動車に集中する方針です。
電池メーカーとの関係の悪化
2021年に、大手バッテリーメーカーであるCATLがXPengに対し、5年間バッテリーを供給しないとの発表をしたことも、失速の一つの要因として挙げられます。
当時、CATLの811バッテリー(三元系のNMC811正極活物質を用いるハイエンド電池)が自然発火事故を起こしたため、XPengはバッテリーの安全性を心配し、CATLにさまざまな要求を出し始めたとされています。しかし、CATLはテスラのリン酸鉄リチウム電池(LFP)の供給を確保するため、XPengのカスタマイズ電池の要求を無視、結果XpengとCATLとの間に軋轢が生じ、XPentは供給契約をCATLからEVE Energy、Sunwoda、CALBなど他のサプライヤーに切り替えました。
供給が途絶えることで、XPengは他のサプライヤーを急ぎ探さなければならず、これには時間とコストがかかります。また、新しいサプライヤーとの合意を得るまでの間、生産の遅延やストップが発生する可能性もあり、製品の設計変更や仕様の再定義が必要になります。
これら問題が重なり、XPengは失速、売り上げの減少と株価の低下を引き起こしています。
CATLは世界の車載電池市場で1位を誇る電池メーカーです。そのシェアは36.8%(2023年)と圧倒的で、技術力も非常に高いとされています。実際、スケートボードシャーシやリン酸鉄リチウム電池など、高度な技術を続々と世に出しています。
トヨタやテスラなど、ほとんどの大手メーカーがCATLから電池を調達するなかで、CATLとの関係が断ち切られたXPengが苦境に陥るのも理解できます。
VWが出資
2023年になり、シャオペンは大手自動車メーカーのフォルクスワーゲンから7億ドルの投資を受けました。シャオペンとフォルクスワーゲンは協力して中国市場向けに新しいEVを開発し、2026年に販売する予定です。中国はフォルクスワーゲンにとって中国は売上の約40%を占める重要な市場であり、近年BYDやテスラなどのメーカーと競争は激しい競争にさらされています。
シャオペンとの協業は、高度な技術力を取り込みたいフォルクスワーゲンの思惑と、業績回復の足掛かりにしたいシャオペンの思惑が重なったものと考えられます。
まとめ
シャオペンは高い技術力とSDV(Software Defined Vehicle)を基本とする設計手法により、自動車業界で注目を浴びています。彼らの設計手法は革新的であり、バッテリー技術や車体構造の強化により、高品質な電気自動車を提供しています。
シャオペンは競争に直面しているものの、中長期的な戦略と積極的なビジネスモデルの模索により、今後更に成長してくものと考えられます。今後も動向を注視したいと思います。
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