現在の中国自動車市場では、三つの新興自動車メーカーが競争を繰り広げています。この記事では、新興EV3社について解説し、「どこが生き残るのか」という視点で今後の見通しを考察します。
注目される中国新興3社
中国で躍進する新興自動車メーカーとして、以下3社がよく挙げられます。
- Li Auto(リ・オート)
- NIO(ニオ)
- XPeng(シャオペン)
多くの自動車メーカーが立ち上がり消えていく中国市場で、すべての自動車メーカーの情報を追うことは現実的ではありませんが、これら3社については最低限把握しておくことをおすすめします。
生き残るのは?
中国の新興自動車メーカー3社は、将来生き残ることができるでしょうか?
まず、販売台数を比較してみます。2022年末ごろまで、三つのメーカーの販売台数には大きな差はありませんでしたが、2023年になると差が顕著になり、Li Autoが突出して販売台数を伸ばしていることがわかります。
Li Autoは新興企業のなかでは老舗ではありますが、2023年に入ってから利益を出し始めており、Li Autoは今後大手自動車メーカーとして成長していく兆しが見え始めています。
NIOとXpengの成長率の鈍化は否めません。Xpengは2025年までに赤字から黒字になることを目指していますが、実現の可能性はわかりません。NIOも新商品の投入や電池技術の開発、スマートフォンの投入などを起爆剤として、自動車販売を伸ばそうとしていますが、どこまで効果があるかは不明です。
市場では、新興EVメーカーの損益分岐点台数(利益が生まれる最低の販売台数)は年間20万台との見方があります。Li Autoは2023年には超えられそう、NIO(見込み10万台)とXpeng(見込み8万台)は、まだ損益分岐点台数に届きそうにありません。
今後、Li AutoがテスラやBYDのような自動車メーカーとして成長するのか、他2社も追従するのかは注視が必要です。
Li Auto(リ・オート)
リ・オート(Li Auto)は、中国の自動車メーカーです。2005年に設立された比較的新しい自動車会社です。彼らはスマートフォン業界で経験豊富なメンバーを中心に自動車開発チームを組んでおり、元Huaweiなどの企業で働いた経験を持つエンジニアも採用しています。
リ・オート(Li Auto)はソフトウェアを重視して製品を開発する「SDV」的思想に長けているとされます。
リ・オートの主力製品はL7、L8、L9という車種です。これらは高級なハイブリッドSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)で、EVではありません。これらの車はハイブリッド車で、PHEVと同等の大容量バッテリーが搭載されており、航続距離の問題を解決するためにエンジンも搭載しています。
リ・オートは中国の新興自動車メーカーの中では珍しく、まだ純粋な電気自動車(BEV)は製造していません。MEGAというミニバンタイプのEVを2023年に発表するとされています。
以下の記事で、より詳しくリ・オートについて解説しています。
NIO(ニオ)
NIOは中国の車メーカーです。中国版のテスラとも言われています。
NIOはこれまでにいくつかのEVを市場に投入してきました。NIOが注目される理由として、EVだけでなく、電池技術やバッテリー交換技術も開発している点が挙げられます。また、近年スマートフォン事業にも参入しており、独自のデジタル化技術で差別化を図っています。
NIOの車の特徴は、ダッシュボードの上にスマートスピーカーが設置されていることです。車の中をデジタル化し、よりスマートに使えるようにしています。
NIOは、中国の自動車市場が減速している状況でもあり、他のEVメーカーと同様に売り上げの伸びが鈍化しています。しかし、NIOは安易に値下げ競争に参加しないなど、自分たちの独自の道を切り開こうとしている様子もあります。
廉価版のモデルはNIOのサブブランドである「ONVO(楽道)」から発売するとされており、2024年後半の投入が計画されています。1車種で月間5~6万台の販売を目指し、サブブランドでは利益率よりも販売台数を重視するとされています。
サブブランドで販売される予定の車種(コードネームDOM)のスパイショットによると、その外観はテスラモデルYにそっくりのSUVタイプです。モデルYを強く意識して開発されており、価格がモデルYよりも廉価であるとの報道もあります。
NIOは人員整理を含めた事業整理を進めています。2023年11月に最近大規模減員計画を発表、11月中に人材調整を終えて技術投資に集中する計画です。従業員27,000人のうち10%に当たる2,700人が解雇されるとされています。同社のウィリアム・リーCEOは社内文書で「次の段階に進むためにコストを減らし資源を再配分しなければならない」と減員理由を説明しています。
XPeng(シャオペン)
中国のEV新興企業であるXPeng(シャオペン)は2017年に設立され、創業者の何暁鵬はアリババのモバイル部門の責任者だった人物です。設立からわずか6年で多くの注目を集めるようになり、その技術力の高さから日本の自動車メーカーもXPeng(シャオペン)に注目しています。
XPengの自動車は、ソフトウェアを基本とした設計理念を持ち、高価格帯の電気自動車を販売しています。近年、XPengは中国国内の競争に直面し失速気味ともされていますが、中長期の成長ビジョンを示すことで、その勢いを取り戻そうとしています。
XPeng(シャオペン)の技術とビジネスモデルについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
株価推移の比較
Li Auto
一般的に、売上高の増加は、事業の成長、市場シェアの拡大、財務の健全化を示すため、企業の株価にプラスの影響を与えることが期待されます。
ただ、売上高と株価の相関関係が得られているとは言い切れません。販売台数は重要な要素ではあるものの、株価の動きを決定する唯一の要因ではないためです。株式市場は将来の業績を予想することが多いため、好調な販売報告やその他のポジティブな企業ニュースを先取りしている可能性もあります。
自動車業界、特にEVセグメントは、マクロ経済要因(EVに対する政府のインセンティブ、経済全体の健全性、技術動向など)の影響を受けやすいため、販売台数から株価を直接説明できるようなものでもありません。
2024年に入ってからの「EV販売が減速している」という市場の「雰囲気」は、Li Autoにとって追い風となる可能性があります。追い風となる理由は、Li Autoの主戦場がハイブリッド車であるためで、他2社とは戦略が異なり、好調なトヨタ自動車などと同じ戦略をとっていることにあります。
Xpeng Inc
NIO
Li Autoとは対照的に、XPengやNIOの2022年以降の株価は減少傾向にあります。株価は会社の財務成績だけでなく、市場の感情、業界の動向、経済状況など多くの要因によって動きます。
参考:四半期ごとの販売台数の推移(2019-2023)
Year-Quarter | Li Auto Sales | Xpeng Sales | NIO Sales |
---|---|---|---|
2019Q4 | 973 | – | – |
2020Q1 | 2,896 | – | – |
2020Q2 | 6,604 | – | 10,331 |
2020Q3 | 8,660 | 8,578 | 12,206 |
2020Q4 | 14,464 | 12,964 | 17,353 |
2021Q1 | 12,579 | 13,340 | 20,060 |
2021Q2 | 17,575 | 17,398 | 21,896 |
2021Q3 | 25,116 | 25,666 | 24,439 |
2021Q4 | 35,221 | 41,751 | 25,034 |
2022Q1 | 31,716 | 34,561 | 25,768 |
2022Q2 | 28,687 | 34,422 | 25,059 |
2022Q3 | 26,524 | 29,570 | 31,607 |
2022Q4 | 46,319 | 22,204 | 40,052 |
2023Q1 | 52,584 | 18,230 | 31,041 |
2023Q2 | 86,533 | 23,205 | 23,520 |
2023Q3 | 105,108 | 40,008 | 55,432 |
2023Q4 | 131,805 | 60,158 | 50,045 |
まとめ
自動車業界における競争は激化しています。
Li AutoやNIO、XPengなどの中国の自動車メーカーは、質の高い電気自動車の開発に取り組んでおり、その品質や製品力が市場で評価されはじめています。競争が激しいなかでも、新興企業たちは自分たちの独自性を打ち出し、持続的な成長を目指すことになりそうです。今後の動向に注目が集まっています。
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