テスラのUnboxed Process用ワイヤーハーネス特許を読み解く

テスラ

テスラの製造技術アイデアであるUnboxed Processは、ヘンリーフォードの自動車製造ノウハウを一変させるとされています。モジュールに分割して並列に組み立て、最後に一体化するアイデアは大変興味深いものですが、デメリットも多くあります。

デメリットのひとつとして、車両全体にまたがるワイヤーハーネスをどう設置するか、という問題があります。テスラはその課題への対応策を特許として出していますが、全文英文なうえに、特許はあえて読みにくく書かれており難解です。そこで、本記事ではテスラの特許を読み込んだ筆者が、図も取り入れながら解説します。

Unboxed Process用ワイヤーハーネス

通常、ワイヤーハーネスは車体全体を取り巻くように配置される(出典:矢崎グループ公式サイト)

車両全体を這うように設置されるワイヤーハーネスは、モジュール分割するコンセプトのunboxed processでは邪魔になるため、なんらかの対策が必要です。テスラは既にワイヤーハーネスに関する特許を出願しており、ワイヤーハーネスも分割式とすることで、人的設置工数も削減するとしています。

このワイヤーハーネスの特許を、より詳しく読み解いてみます。

特許の概要

テスラの特許は、簡単に言えば、自動車内の電子デバイスをつなぐための新しい配線システムを提案しています。従来の配線方式とは異なり、このシステムでは車両内のデバイスを直接「バックボーンセクション」とよばれる中央配線に接続するため、配線ハーネスの数を減らすことができます。

この特許のシステムによって、車両内での配線の複雑さを減らし、自動車の組み立て工程を簡素化できるのです。

電力の幹線道路がバックボーン

「バックボーン」とは、主要な通信回線やネットワークの中心的な部分、またはその骨格を形成する部分を指します。この文脈では、自動車の配線システムにおいて、「バックボーン」は車内の電子デバイスやシステムが接続される中心的な配線部分を指しています。

バックボーンを電力の「幹線道路」と考えると分かりやすいかもしれません。車両内の各電子デバイスやシステムへ電力やデータを効率的に分配するための中心的な配線路がバックボーンセクションであり、この「幹線道路」を通じて、車両の必要な場所へ電力や情報が供給されます。

バックボーンから伸びる「小道」や「枝道」に相当する配線は、特定のデバイスやシステムへ直接電力を供給したり、データ通信を可能にする役割を担っています。例えば、ドアのロックシステム、ライト、エンターテイメントシステムなどがそれぞれの「家」であり、バックボーンから伸びる配線がそれぞれの家にサービスを提供する「小道」と考えることができます。

どうやてこのバックボーン同士を結合するか?

この特許文書では、車両のボディが複数の大型部品で分割製造された場合にバックボーンセクション同士をどのように結合するかについても触れられています。特に、バックボーンセクション間の接続に関しては、図8a、図8b、およびその他関連する図(図9、図10a-10b、図11a-11fなど)に詳細が記載されています。

図8aと図8bでは、バックボーンセクション同士を相互に接続するためのインターコネクトシステムが紹介されています。このシステムは、ピンとレセプタクル(受け口)を使用して、二つのバックボーンセクションが物理的かつ電気的に接続される方法を示しています。

図9では、バックボーンセクション間の接続に使用される異なる形状のピンとレセプタクルに関する詳細が示されています。

図10a-10bでは、ポリゴナル(多角形)ピンがオーバーモールドブリッジ内に部分的に囲まれている接続システムを紹介しています。この設計は、接続部分の物理的な保護と強度を向上させることを目的としています。また、異なる形状のピンとレセプタクルを使用することで、より正確な接続と信頼性の高い電気的接触を実現しています。

まとめ

インターコネクトシステムは、信頼性の高い電気接続を提供し、車両の配線システムの組み立てや保守を容易にすることが目的です。これらの接続方法は、車両の製造過程において、分割された大型部品を組み立てる際にバックボーンセクション同士を効率的にかつ確実に接続するために設計されています。

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この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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