コードネーム「レッドウッド」として知られるテスラのコンパクト車両「モデル2」は、小型の電気自動車として約400万円以下という価格設定が成されるとされています。
本稿では「モデル2」について、デザイン、技術的特徴、価格設定、予想される販売戦略、そしてテスラがこの新モデルによって小型車市場においてどのような影響を与えるのかを解説します。
モデル2とは
テスラ・モデル2は、コードネームレッドウッド(Redwood)と呼ばれる低価格車両です。ハッチバックのデザインと、次世代バッテリーを搭載するとされています。
テスラが常に指摘され続けてきた「コンパクトカー市場」の需要に応えると言われています。
価格は400万円以下、航続距離は250マイル(400km)程度。テスラ車の特徴である加速性能など、性能に妥協がない一方で、テスラのほかモデルで採用されているガラスルーフはなくなる、などの妥協点がある車種になる、とされています。
25年後半に発表、26年発売か?
モデル2の生産開始は2025年後半とされ、その前(2025年前半?)にはお披露目が行われると考えられています。
テスラが2023年の第4四半期決算を発表した際、モデル2の生産開始時期についてある程度の目安を示しました。イーロン・マスク氏は決算後の会見でさらに踏み込んで、モデル2に関して「very far along(非常に進んでいる)」と述べ、現在2025年後半に生産を開始する予定だと述べています。
生産はサイバートラックが製造されているテキサスのギガファクトリーで開始され、将来的にはメキシコのギガファクトリーが2番目の生産拠点となる可能性が高いとされています。
価格は2.5万ドル
モデル2は、約2万5000ドル(約375万円)の低価格帯のEVとして販売されることが期待されています。
車の価格については公式発表はありませんが、多くのアナリストは、価格が約2万5000ドル(約375万円)で、高くても3万ドル(450万円)以下に収まると予想しています。
廉価版となった車両のハードウェアのどこを妥協するのか、テスラの運転支援ハードウェアが標準装備されるのか、などが注目されます。
モデル2の開発を中止の報道も
ロイターは2024年4月、テスラがモデル2の開発を取りやめたと発表しました。これに対してイーロンマスクは「Reuters is lying (again)(ロイターは嘘をついている(また))」「Tesla Robotaxi unveil on 8/8(テスラはロボタクシーを8月8日に発表する)」と投稿。モデル2の開発は市販車ではなくロボタクシー(自動運転の廃車サービス用車両)として継続される、と反論しています。
ロボタクシーとは?
テスラは2024年にハンドルやペダルのない専用のロボタクシーの生産を開始する予定です。
テスラのロボタクシーは、完全に無人の自動運転によるもので、ライドシェアを想定しています。テスラによる試算では、1マイルあたり0.65ドル(約71円)を稼ぐことができるとされています。事故が発生した場合の責任はテスラが負う計画のようです。
北米や中国の一部地域では、すでに無人運転の配車サービスは開始されています。Waymoなどの自動運転企業は地域限定での自動運転配車サービスを提供しており、テスラもこれに続く形となります。
注目される理由
モデル2が注目される理由として、以下の点が挙げられます。
- モデル3を超える販売台数が期待できる
- 低価格帯での競争力が向上する
- unboxed processを活用して製造される
モデル3やモデルYを超える販売台数が期待できる
2023年通年で、中国におけるモデルYの販売台数は45万6,394台、モデル3の販売台数は14万7,270台と、単一モデルとしては非常に多くの販売台数を稼いでいます。
モデルYや3が高級車市場で販売を伸ばしていることを考えれば、より消費者の手に届きやすい低価格車両となるモデル2は、販売台数を大きく伸ばすための切り札になります。
低価格帯での競争力が向上する
テスラは高級EVの市場において、非常に多くの販売台数を稼いでいます。一方で、高級車ではない、大衆車(ローエンド)の市場では競争力がないという指摘も多くあります。
実際、テスラの最も価格の安いモデル3でも、その価格は500万円を超えます。より低価格のモデルの開発と量産が求められているのです。
Unboxed processを活用して製造される
テスラは「unboxed process」と呼ばれる製造プロセスをモデルの生産に活用することで、車両コストのさらなる低減を目指しています。完全な「unboxed process」が実現する最初の車種が、モデル2になると考えられているのです。
テスラの「unboxed process」は、車両をいくつかの大きなモジュールに分割し、それぞれを個別に組み立ててから最終的に一体化する方法です。Unboxed processの導入により、生産ラインのコンパクト化、工程構造の並列化が可能となり、製造コストの削減や生産効率の向上が期待されています。
unboxed processが実現すれば、テスラが低コストで高品質なEVを生産する能力がさらに強化されることになります。テスラはモデル2の投入とともに、低コストEV市場での競争力を高めるとともに、自動車製造の新たな常識を生み出そうとしているのです。
日本での販売
モデル2が日本で販売されるかどうかは不明です。
ただ、テスラは車両のほとんどを日本でも販売していること、特にコンパクトな低価格車両を求める日本市場において、モデル2は絶好の車種であることを考えれば、日本投入も視野に入れているはずです。
モデル2発売が予測される2026年に、日本のメーカーがテスラ・モデル2と比較して競争力のあるEVを提供するのは難しいでしょう。同じセグメントでは、日産がリーフを販売していますが、国内での販売台数は年10,000台と決して多くはありません。
バッテリーはLFPが採用される見込み
モデル2のバッテリーパックは容量が40~50kWで、ベースモデルの航続距離は約250マイル(約400km)です。バッテリーはおそらくCATLのリン酸マンガン鉄リチウム (「LMFP」または「LFP」) 電池になると考えられます。
LFPは、パナソニックなどが開発するニッケル・マンガン・コバルト (「NMC」) と異なり、安価でエネルギー密度の低いリチウムイオン電池です。ハイエンドのNMC電池は、モデル2の車両価格に見合わないため、中国大手のCATLが供給するLFP電池をモデル2に供給するとみられています。CATLは、現在のモデル3向けのLFP電池のサプライヤーでもあります。
テスラは既に、NMCのリチウムイオン電池の内製化を進めています。ハイエンド製品のバッテリーコストを抑えるため、自社で電池を製造することを目指しているのです。ただ、2024年時点でその製造規模はまだ小さく、サイバートラックなどの高級EVの製造の足かせとなっているともされています。
まとめ
テスラ・モデル2(レッドウッド)の登場は、EV市場における新たな節目となりそうです。低価格ながらも、性能を妥協しない設計は、米国・中国の市場をはじめ多くの消費者に電気自動車への移行を促すことでしょう。
モデル2は2025年後半の発表、そして2026年の発売が予想されています。モデル3やモデルYを超える販売台数を記録することが期待される一方で、日本を含むグローバル市場での受け入れられ方も注目されています。
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