CAEを始めるにあたって、まず必要となるのが解析用PC(ワークステーション)です。ただ、どの程度の端末スペックが推奨されるのか分かりにくいのが実情です。
推奨スペックがわかりにくいのは、用途によって必要な性能が大きく異なるためです。
今回は、CAE解析に用いるためのワークステーションに必要なスペックをまとめました。また、私が購入した中古ワークステーションについても紹介します。
結論:おすすめの構成
CAEをやるために最もコスパが良いおすすめの構成は以下の通りです。
OSと形式:Windowsのデスクトップ
並列数:4コア
メモリ:64GB
クロック周波数:3.0GHz以上
グラフィック:NVIDIA Quadro P400 2GB
それぞれ、詳しく解説します。
ノート or デスクトップ
デスクトップを強く推奨します。CAE用ノートPCも販売はされていますが、カスタム性、排熱性、コスパなどすべての面でデスクトップに劣ります。よほどの理由がない限り、デスクトップを推奨します。
どうしても持ち運びが必要な場合は、通常のノートパソコン+ワークステーションの組み合わせを検討しましょう。
リモートデスクトップ機能を利用すれば、移動先からワークステーションに接続できるはずです(ワークステーションにはほとんどの場合Windows Professionalが搭載されているため、リモートデスクトップ制限はありません)。
Mac or Windows or Linux
OSはWindowsが無難です。もしくは、Linuxでも可。
MacOSに対応したCAEソフトは少なく、選択はWindows or Linuxです。
およそすべての主要ソフトウェアがLinuxとWindowsに対応していますので、あとは好みの問題かと思います。汎用性という観点ではWindowsですし、WindowsOS上にLinuxの仮想環境構築も可能なため、Windowsにしておくのが無難です。
ハードのスペック
CAEを行うワークステーションは、演算速度が速いほど優秀といえます。これをスペックで説明するには、
・コア数
・CPUクロック数
・メモリ
・グラフィック
が重要です。これらについて、必要スペックを説明します。
コア数
コア数は、所有しているHPCライセンスの数に応じて選択するとよいです。
たとえば、8並列で計算できるライセンスを所有しているのであれば、8コアの端末を選択すればよい、といった具合です。
並列計算をしないのであっても、今後の汎用性を考えて、最低4コア、可能であれば8コアを搭載した端末を選択しておくとよいと思います。
必要なメモリ
基本的に、大規模計算を行う場合には大規模メモリが必要で、構造解析で32GB、流体解析で64GBが推奨されます。特に流体解析において要素数が膨大となる傾向があります。流体解析では100万要素を超えた計算を行うことも珍しくありません。経験として、
200万要素を超える→32GB必須
1000万要素を超える→64GB必須
2000万要素を超える→128GB必須
と考えています。
各ソフトウェアでの必要スペックが公式ホームページに掲載されているので、確認するとよいと思いますが、メモリは多いほどよい、というのが結論です。
最低限、32GBは搭載された端末が必要と思います。
CPUクロック数
CPU(プロセッサ)のクロック数は高いほど良いです。可能であれば3.0GHz以上を推奨します。
可能であればデュアルプロセッサにすると良いですが、コストが跳ね上がるため、お財布と相談しましょう。
近年のCAEのコストパフォーマンスのボトルネックは、ソフトウェアとなる場合が多いです。
並列計算のライセンスが高価なため、年数百万円のコストをかけてHPCライセンスを買うよりも、ハードに高いコストをかけてクロック周波数の高いCPUを選択したほうが、結果的にコストパフォーマンスが高くなります。
つまり、なるべく端末にお金をかけて、ソフトウェアの費用を抑えるよう動いた方が、コストパフォーマンスは良くなります。
グラフィックボード(GPGPU)
CAE計算をするにあたって、高性能グラフィックボードが必要となることは少ないと思います。
CADと同程度のレタリングが可能であればよいので、高価なGPUの搭載は必要ないと考えます。NVIDIA Quadro P400 2GB(2022年現在)くらい積んでれば十分すぎます。
近年、GPGPUを利用した高速化を利用できるソルバも存在しますが、必要なコストの割に計算速度の改善代が大きくない印象があり、GPUにコストをかけるのは得策ではないです。
結局どんな端末が必要なの
以上、なんでもよいので必要スペックを示してくれ!という方のためにまとめると以下のようになります。
・Windowsのデスクトップ
・4コア
・メモリ64GB
・クロック周波数3.0GHz以上
・NVIDIA Quadro P400 2GB
このくらいのスペックで、HPのワークステーションを探してみたところ、

Z4G4ワークステーションが、今回推奨する構成で46万円(2021/7時点)でした。カスタマイズは下記のとおりです。
インテル(R) Xeon(R) W-2123 プロセッサー (3.6GHz, 4コア, 8.25MB, 2666MHz)
64GB DDR4 SDRAM(2933MHz, ECC, Registered, 8GBx8)
NVIDIA Quadro P400 2GB
中古ワークステーションって大丈夫?
そんなに高いお金は出せない!という場合、中古PCショップやヤフオクなどで探してみると、そこそこのスペックのワークステーションが出回っていますので、検討の余地があります。
私も趣味のために中古のワークステーションを購入しました。機種はHP Z800、スペックは以下の通りです。
・メモリ96GB
・Xeon W5590 3.33GHz
・2プロセッサ
・NVIDIA Quadro FX3800
この構成でヤフオクに出品されていたものを購入、価格は5万円程度でした。新品で購入すると100万円近くしそうなスペックです。
動作は問題なく、購入して5年近くたちますが今でも元気に動いています。
ただ、私の購入したワークステーションは(安いこともあってか)良いことばかりではなく、
・購入直後、排気のフィルタが汚れまくっていて掃除が必要だった
・縦置きするとファンの音がうるさい(前のユーザが横置きで稼働していたため軸が偏芯しているのかも)
・冷却が不足しているのかCPU温度が上がりすぎる
など、中古ゆえの問題点はいくつか出てきます。
このようなデメリットも発生することを踏まえて、ワークステーションを安価に入手できる手段として中古品の購入も考えてもよいと思います。
その他のスペック
モニタ:
作業性を考えて、モニタは2画面とするのが良いです。
私は画像のHP23インチディスプレイ×2画面で作業しています。
3-5万円程度のミドルエンドのモニタを、セールや中古品でもよいので購入するのが良いと思います。
CAE作業は画面を見る時間が長く、目に負担のかかりにくいハイエンドのディスプレイを選ぶことを強く推奨します。
データストレージ:
CAEソフトウェアの容量は大きいものが多い(10GB以上がザラ)なので、Cドライブが512GB以上あると安心です。欲を言えばI/Oが早くなるよう、CドライブにSSDを搭載した機種がお勧めです。
拡張性:
ハイエンドのワークステーションはカスタマイズできる場合が多く、後付けで性能向上を図れることも多いですが、ミドルエンドになると拡張性を犠牲にしている事が多いため、注意が必要です。
HPのワークステーションでいうと、Z8シリーズは拡張性が高く安心です。
以上、参考になれば幸いです。
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