Ganfeng Lithiumの全固体電池は何が凄いのか?

全固体電池

Ganfeng Lithium(ガンファンリチウム)は、炭酸リチウムや水酸化リチウムといった多角的な「リチウム原料」を扱うビジネスを展開しています。そんなGanfeng Lithiumは電池開発まで事業を広げており、高いエネルギー密度と安全性を兼ね備えた新世代の全固体電池も開発しています。

この記事では、Ganfeng Lithiumの全固体電池の技術に焦点を当てて詳しく解説します。

Ganfeng Lithium(ガンファンリチウム)とは?

Ganfeng Lithium(ガンファンリチウム)は、中国の大手リチウム企業であり、特にリチウムの製造と加工において非常に強い存在感を持っています。この会社は、リチウムの原料であるスポジュメン(石鹸石の一種)や塩水を高品質の水酸化リチウムや炭酸リチウムに変換するプロセスを得意としています。

ガンファン・リチウムは世界でもトップのリチウム採掘量を誇る

2020年のリチウム採掘量の世界ランキングでは、ガンファンリチウムは世界第1位の位置にあり、中国でのリチウム原料の供給サプライチェーンのなかでも重要な役割を担っています。

第一世代全固体電池は「半固体」

Ganfeng Lithiumは、全固体電池の第一世代をエネルギー貯蔵用途に主眼を置いて開発しました。この第一世代の全固体電池は、エネルギー密度が最大で260 Wh/kgとされています。エネルギー密度とは、単位体積あたりまたは単位質量あたりに蓄えられるエネルギーのことを指します。

エネルギー密度の他電池との比較。テスラ内製のNCMリチウムイオン電池にも劣っている

260 Wh/kというエネルギー密度は、既存の液体リチウムイオン電池と比べて大きな進歩ではありません。むしろ、液系のリチウムイオン電池の性能が向上しているために、テスラの内製セルに比べると見劣りする電池になっています。

第一世代の全固体電池は、酸化物電解質と固体隔膜を使用しています。ただし、一部液体成分が含まれており、厳密には「半固体電池」とも言えるかもしれません。第一世代の全固体電池は、年間生産能力が4 GWh(ギガワット時)とされ、これは年間最大で約80,000個のEVバッテリーパックに相当します。

モデル7289C0584G2N07B7A0Y09B7A0Y44
定格容量 / Ah12425056
サイズ / mm89*125*7.216*2227*8.4318.5*100.1*11.7353.5*100.1*11.7
定格電圧 / V3.653.653.653.65
運転電圧範囲3.0~4.253.0~4.253.0~4.253.0~4.25
標準充放電率
@25℃
0.33C/@0.33C0.33C/0.33C0.33C/0.33C0.33C/0.33C
連続最大充放電率1C/1C@25℃1C/1C@25℃1C/1C@25℃1C/1C@25℃
エネルギー密度
Wh/kg
@0.33C
235 ±5 240 ±5240 ±5240 ±5
サイクル寿命
@0.33C/0.33C
≥1000≥1500≥1500≥1500
動作温度 / ℃-30~70-20~60-20~60-20~60

上記の表は、Ganfeng Lithiumのホームページに掲載されている第一世代全固体電池(実際は半固体)のスペックです。エネルギー密度は235-240Wh/kgとされており、電池セルとしてはパナソニックの円筒電池などと変わらない性能です。

全固体電池を電池パックとしても販売している
モデル355390
アプリケーションセルモデルB7A0Y09B7A0Y44
モジュールサイズ355*151*105mm390*151*105mm
シリーズ・パラレル接続モード2P6S
3P4S
4P3S
2P6S
3P4S
4P3S
定格容量102Ah
153Ah
204Ah
112Ah
168Ah
224Ah
定格電圧21.9V
14.6V
10.95V
21.9V
14.6V
10.95V
標準充放電率0.33C/0.33C0.33C/0.33C
パルス放電率3C3C
定格エネルギー>2.20kWh>2.50kWh
モジュールエネルギー密度205Wh/kg210Wh/kg

電池セルを充填した電池パックでは、エネルギー密度が205-210 Wh/kg程度まで落ちます。

(電池セル・モジュール・パックの違いについては、以下の記事が参考になります。)

Seres 5 SUV

これら電池は、2023年頃から車載電池として中国で出回っています。Huaweiが展開するEVブランドのSeres(セレス)は、容量90kWhの半固体電池パックを搭載し、WLTP航続距離530kmを備えた新しいSeres 5 SUVを発表しています。

第二世代全固体電池は「完全な固体」

Ganfeng Lithiumは、「完全な」全固体電池の実用化に向けて、第二世代の全固体電池も開発しています。この新型電池は、高ニッケル正極を採用することで、420 Wh/kgのエネルギー密度を備えています。

正極材料は、ニッケル比率を高めることでエネルギー密度を高くすることができると知られており、テスラの液系リチウムイオン電池セルの正極は、ニッケル含有量が81.6%と非常に高く、272-296 Wh/kgという非常に高いエネルギー密度を実現しています。

リチウム金属負極を使用している点も特徴です。リチウム金属負極は、リチウム金属を負極に用いることで高いエネルギー密度を実現するもので、同じくリチウム金属負極を開発するエンパワー社は、質量エネルギー密度 389Wh/kgを実現しています。

筆者の目線

正極に高ニッケル材料、負極にリチウム金属を用いることで、高いエネルギー密度の電池が実現できることはよく知られています。一方で、ニッケル比率が高くなるほどコストも高くなり、リチウム金属負極は充放電による膨張やデンドライト成長による短絡で耐久性が不十分であることでも知られます。これら課題を解決し、実際に製品として車載されるのは2027年以降との見方が有力です。Ganfeng Lithiumの第二世代にあたる完全な全固体電池も、2020年代後半の実用化となることが想像されます。

まとめ

Ganfeng Lithiumは、リチウムイオン電池から全固体電池へとその技術を拡大しています。特に第二世代の全固体電池は、EVの航続距離を大きく伸ばす、高い性能が期待できます。電動車の進化と普及において、全固体電池の実用化は大きな一歩と言えるでしょう。

それゆえに、Ganfeng Lithiumの動きは今後も注視される存在となることは間違いありません。

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