CATLのナトリウムイオン電池とは何が凄いのか。Liイオン電池、全固体電池と比較

次世代電池

CATL(ContemporaryAmperex Technology Co.、Limited)は、中国の寧徳に本社を置く世界的なエネルギーソリューション企業です。

CATLは車載用バッテリー市場の30%を獲得しており、リチウムイオン電池を、テスラやヒュンダイを含む世界中のEV自動車メーカーに提供しています。

本稿では、CATLが商用化を始める次世代電池、ナトリウムイオン電池について解説します。

ナトリウムイオン電池とは

CATLは2021年、ナトリウムイオン電池(NIB)の商用化を開始する発表しました。この「ナトリウムイオン電池」を簡単に言うと「リチウムが獲れなくなるかもしれないので大量に取れるナトリウムで電池つくった」というものです。

活物は安価で、正極にはプルシアンブルーあるいは遷移金属を使う層状酸化物、鉄と硫黄を使うポリアニオン系が用いられます。負極はハードカーボンが主流です。

決してリチウム系電池を凌駕する性能を持つものではないことに注意が必要です。

ナトリウムイオン電池の性能比較

ナトリウムイオン電池の重量エネルギー密度は小さい(各社プレスリリースをもとに当サイト作成)

各電池の重量エネルギー密度を比較すると、ナトリウムイオン電池はニッケル系リチウムイオン電池に対して劣っていることがわかります。重量エネルギー密度は、重さあたりにどれだけ多くの電気を貯められるかを示し、特に車載用では重要な指標です。

ニッケル系のリチウムイオン電池は、車載電池として現在最も用いられているものです。テスラの次期4680バッテリーセルは、300Wh/kgに迫るともされており、NIBはこの半分しか容量を持ちません。全固体電池の重量エネルギー密度と比べても、大きく劣る事がわかります。

ナトリウムイオン電池は、性能面でのメリットは少ない

ナトリウムイオン電池の何が凄いのか

ナトリウムイオン電池は、リチウムの代わりにほぼ無尽蔵ともいえるナトリウム(Na)イオンを使うため、中国での資源調達問題を解決する可能性があり、各社が研究開発を進めています。

中国でのリチウム調達に関する課題は以下のようなものが挙げられます。

中国におけるリチウムの調達課題

  • チリウムの中国国内自給率が低い
  • 悪化する米中関係からリチウム安定供給に不安がある
  • 爆発的に増えるリチウムイオン電池の需要に対して、リチウム資源は偏在している

特に、リチウム資源の偏在は顕著です。

中国もリチウム生産国ではありますが、世界最大のリチウム生産国であるオーストラリアや、それに次ぐチリと比較すると中国の規模は小さく、輸入に依るところが8割を超えます。

これら課題に対して、ナトリウムイオン電池の原料であるナトリウムは、ほぼ無尽蔵でコストを下げられるという利点があります。CATLのナトリウムイオン電池は、国際的な電池用リチウム争奪戦から一人抜けできる可能性を秘めています。

ナトリウムイオン電池はリチウム資源調達のリスクを下げられる

バッテリーメタル価格急騰リスクへの対応

ナトリウムイオン電池は、リチウムを使わないことに加えて、レアメタルであるニッケル・コバルトをいずれも使わない点も利点です。そのため、ナトリウムイオン電池は、リチウムだけでなく、バッテリーメタルの価格急騰によるリスクを回避できます。

現在、液系リチウムイオン電池を高容量化するための手段は、ハイニッケル化(ニッケル添加量増)が主流になっています。当然、ニッケルの調達が必要になり、ニッケル価格も上昇傾向にあります。

世界での自動車のEV化が進行し、ニッケルの価格高騰が見込まれる中で、ナトリウムイオン電池はリスク回避の意味が大きくなります。

ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池に用いられる貴金属を利用せずに済む点でも利点あり

ナトリウムイオン電池の技術的課題

リチウムイオン電池や全固体電池との比較で示したように、重量エネルギー密度が低いことがナトリウムイオン電池の技術的課題です。CATLが開発した第1世代の ナトリウムイオン電池セルの重量エネルギー密度は160Wh/kgと低く、まだ改良が必要です。

CATLもこの課題を認識しており、第二世代として200Wh/kgを見据えて開発していると発表しています。目標としている200Wh/kgは、現状CATLがテスラ向けに出荷している液系のリチウムイオン電池の性能をベンチマークとしているようです。

最初の充放電サイクルで利用可能なナトリウムイオンが失われる

エネルギー密度が低い原因はいくつかありますが、全固体ナトリウムイオン電池の負極として用いられるハードカーボンの初期クーロン効率(ICE)が低い(電池の最初の充放電サイクルで、注入されたナトリウムイオンのうち、実際に電気エネルギーとして取り出せる割合が低い)ことがひとつの原因です。

具体的には、ハードカーボンのクーロン効率は、最適な合成条件でも80〜90%程度とされており、ナトリウムイオンの10~20%が最初のサイクルで「失われる」ことを意味します。結果、エネルギー密度が低下します。

最近の研究*では、ハードカーボンを事前に熱処理する、あるいはプレソジエーションと呼ばれる、事前にナトリウムイオンを注入する工程を挟むことで、ナトリウムイオンの損失を抑えることができる、という結果も得られています。従来83%であった初期クーロン効率は、熱処理とナトリウムイオンの注入により99%まで向上することが判明しています。

プレソジエーション(ナトリウムイオンの注入)は追加の工程を必要とするため、コストが増加する可能性がありますが、電池の性能、特に初期クーロン効率が大幅に改善されるため、十分に検討の余地があると考えます。

エネルギー密度が低い課題は、第二世代のナトリウムイオン電池で改善を予定

CATLのNaイオン電池戦略

CATLはNaイオン電池の低温耐性の高さを生かして、EV向け蓄電池をNIBとLIBのハイブリッド構造にする構想「ABソリューション」を発表しました。

ハイブリッド化によって、ナトリウムイオン電池で低温性能を維持し、より強力なリチウムイオン電池が、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度不足を補う、というコンセプトです。2つの弱点を補いながら、長所を活かすようにモジュール化するという戦略です。

CATLにとってのナトリウムイオン電池の競合は?

2023年EV用電池シェアは、CATL、BYDの2社で世界シェアの過半を占めている

CATLにとって、ナトリウムイオン電池での競合はどの企業にあたるのでしょうか。

車載電池ビジネスは設備投資体力が最も重要で、どれだけ大規模なビジネスを手掛けるかで強さが決まります。世界シェアの三分の一を握るCATLに対して、規模で太刀打ちできる企業はいません。ナトリウムイオン電池の開発も、研究開発で先行する企業があったとしても、量産規模でのビジネスに移った段階で、CATLと同等のコスト競争力を実現できる企業は現れないでしょう。

国内のナトリウムイオン電池関連特許出願状況

日本国内の特許を確認すると、トヨタ自動車がナトリウムイオン電池に関して多くの特許を出願していますが、トヨタ自動車からナトリウムイオン電池が市場に出るという情報はありません。

ナトリウムイオン電池ではCATL一強状態、トヨタ自動車が一部特許を出願

CATLの戦略と実用化目途

CATLのナトリウムイオン電池商業化への取り組みとしては、2023年までに、部材などのサプライチェーンを構築するとしているので、耐久性や量産性を開発中と思われます。CATLは、ナトリウムイオン電池の耐久性や充放電性能、量産規模を明らかにしていません。

自動車メーカーは3000回の充放電サイクルを基準として要件にすることが多く、商業的に量産するのであれば、耐久性能を含めた検証が進められていると考えられます。ナトリウムイオン電池は、実用的には2020年代中盤から市場投入されていくとみられており、実用化に向けて技術開発が進められています。重量エネルギー密度が低いため、車載ではなく定置用狙いのほうが向いているとの見方もあり、複数用途に広がるのではなかと考えられます。

2020年代中盤での実用化を目途に開発が進められている

2023.08.28追記:

中国の自動車メーカーChery Automobile(奇瑞汽車)のEVに、CATLのナトリウムイオン電池が採用されました。2023年4月に発表された内容で、当初の宣言通り、2023年に量産開始を実現した形です。

車両自体の販売時期は公表していませんが、早ければ2023年中、遅くとも2024年には販売が開始されるものと考えられます。量産を開始したとはいえ、2023年の生産は2-3GWh程度と生産規模は小さくなるものと見込まれます。

CATLの全固体電池は?

全固体電池も、2020年代後半の実用化がうわさされており、注目すべき技術です。しかし、中国電池大手のCATLは全固体電池開発に対して消極的です。

今回のナトリウムイオン電池の発表の場でも、全固体電池に関する質問が飛び交ったようですが、全固体電池に関しては商品化するのは2030年以降、現行の液系リチウムイオン電池を効率よく使いこなすことが、コスト面でも航続距離の面でも最善という姿勢を変えていません。

逆に、全固体電池に関して積極的なのはトヨタ自動車や米QuantumScapeなどが挙げられます。

まとめ

ナトリウムイオン電池は、リチウム資源不足を解決するための1つの技術です。

革新的電池というより、サステイナブルな社会を実現する意味で必要な技術であり、調達リスクなどを含めたリスクヘッジとして働くものと考えられます。

今後も動向を注視していきます。

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