CATLのナトリウムイオン電池とは何が凄いのか。Liイオン電池、全固体電池と比較

技術系読みもの

CATLとしてよく知られているContemporaryAmperex Technology Co.、Limitedは、中国の寧徳に本社を置く世界的なエネルギーソリューション企業で、市場の30%を獲得、リチウムイオン電池を、テスラやヒュンダイを含む世界中のEV自動車メーカーに提供している。

CATLは2021年7月29日、ナトリウムイオン電池(NIB)の商用化を開始する発表した。

この「ナトリウムイオン電池」のニュースの背景は、簡単に言うと「リチウムが獲れなくなるかもしれないので大量に取れそうなナトリウムで電池つくった」というものだ。決してLi系電池を凌駕する性能を持つものではない。

CATLが商用化を始めるナトリウムイオン電池について解説する。

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Na電池とLi電池、全固体電池の性能比較

各社プレスリリースをもとに当サイト作成

各電池の重量エネルギー密度を示す。

重量エネルギー密度は、重さあたりにどれだけ多くの電気を貯められるか。

特に車載用では重要になる。

見て分かるように、ナトリウムイオン電池(NIB)はニッケル系リチウムイオン電池(NCA)に対して劣っている

NCAは現在車載電池として最も用いられているもので、テスラの次期4680バッテリーセルは、300Wh/kgを超えるとも予想されており、NIBはこの半分しか容量を持たない。

QuantumScapeの全固体電池の重量エネルギー密度と比べても大きく劣る事がわかる。

つまり、NIBは性能面でのメリットは大きくない、ということだ。

CATLのNaイオン電池の何が凄いのか

今、なぜCATLがNIBを開発し商用化したのか。

NIBは、ほぼ無尽蔵ともいえるナトリウム(Na)イオンを使うため、中国での資源調達問題を解決する可能性がある

中国でのリチウム調達課題

中国でのリチウム調達課題は以下のようなものが挙げられる。

・LIB向けLiの国内自給率が20%と低い
・悪化する米中関係からLi安定供給に不安がある
・爆発的に増えるLIBの需要に対して、リチウム資源は偏在している
・Liイオン電池はコストを下げることが困難になってきた

これら課題に対して、NIBの原料Naはほぼ無尽蔵でコストを下げやすい。

つまり、CATLのナトリウムイオン電池は、国際的な電池用リチウム争奪戦から一人抜けできる可能性を秘めている。

バッテリーメタル価格急騰リスクへの対応

NIBは、リチウムを使わないことに加えて、レアメタルであるニッケル・コバルトをいずれも使わない。

そのため、バッテリーメタルの価格急騰によるリスクを回避できる。

バッテリーメタルの価格推移

今後の車載液系LIBの高容量化の手段はハイニッケル化(ニッケル添加量増)が主である。

EV化が進行し、ニッケルの価格高騰が見込まれる中で、ナトリウムイオン電池はリスク回避の意味も大きい。

技術的課題

LIBや全固体電池との比較で示したように、重量エネルギー密度が低いことがLIBの技術的課題と言える。CATLが開発した第1世代の ナトリウムイオン電池セルの重量エネルギー密度は160Wh/kgと低い。

CATLもこの課題を認識しており、第二世代として200Wh/kgを見据えて開発しているという。目標としている200Wh/kgは、現状CATLがテスラ向けに出荷しているLIB性能をベンチマークとしている。

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CATLのNaイオン電池戦略

CATLはNaイオン電池の低温耐性の高さを生かして、EV向け蓄電池をNIBとLIBのハイブリッド構造にする構想「ABソリューション」を発表した。

NIBとLIBのハイブリッド構造

ハイブリッド化によって、NIBは低温で高電力と性能を維持する。

一方で、より強力なLIBが、NIBのエネルギー密度不足を補う。

2つの弱点を補いながら、長所を活かすようにモジュール化するという戦略である。

CATLにとってのNIB競合

電池ビジネスは設備投資体力が最も重要で、どれだけ大規模なビジネスを手掛けるかで強さが決まる。

そのため、規模でCATLに太刀打ちできるような企業はいないわけだが、NIBに関しては先行者が存在する。

HiNa

2019年には中国科学院などと共同でエネルギー容量が100kWhの定置型蓄電池などを製品化した。2021年6月には、エネルギー容量が1MWhの定置型蓄電池を開発したと発表しており、Naイオン電池の開発で先行していた。

Natron

高価な金属元素を使わないことで、製造および利用のコストが低いNIBを開発。ただし、性能としては不十分で、重量エネルギー密度が最大でも33Wh/kgとLIBのセルの1/10近い。

不明瞭な点

CATLは、NIBの耐久性や充放電性能、量産規模を明らかにしていない。

自動車メーカーは3000回の充放電サイクルを基準として要件にすることが多く、商業的に量産するのであれば、耐久性能を含めたデータを示してもおかしくない。

商業化への取り組みとしては、2023年までに、部材などのサプライチェーンを構築するとしているので、耐久性などは未だ検証段階であると思われる。

耐久性に関する評価はどうしても時間がかかる。技術的に難しい部分でもあるので、続報を待つ必要があると考える。

CATLの全固体電池は?

CATLは、全固体電池開発に対して消極的だ。

今回のNaイオン電池の発表でも、全固体電池に関する質問が飛び交ったそうだが、全固体電池に関しては、商品化するのは2030年以降、現行の液系リチウムイオン電池を効率よく使いこなすことが、コスト面でも航続距離の面でも最善という姿勢を変えていない。

逆に全固体電池に関して積極的なのはトヨタ自動車や米QuantumScapeなど。以下の記事で解説している。

参考:全固体電池、一番進んでいるメーカーは?

中国の電池業界の進化はすさまじい。その内容は、中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図の第4章に詳しい。

日中の自動車メーカー、サプライヤー、電池・材料メーカー等、直近3年間で約300社にのぼる訪問を重ねてきた中国自動車界を知り抜いた著者による情報満載の本。

大変興味深いのでここで紹介しておく。

まとめ

以上のように、Naイオン電池(NIB)はリチウム資源不足を解決するための1つの技術にすぎない

革新的電池というより、サステイナブルな社会を実現する意味で必要な技術であり、この分野に投資しているCATLには好感が持てる。(もちろん自社ビジネスをうまく回すためのリスクヘッジであることもわかるが…)

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