【図解】実用化が期待される次世代電池11選

次世代電池

世界での自動車の電動化が進んでいます。

EV用電池の主流派リチウムイオン電池ですが、エネルギー密度に限界があり、安全性の観点からも、次世代電池の実用化が期待されています。

本稿では、リチウムイオン電池の次に来ると期待される次世代電10選を紹介します。

次世代電池の一覧

以下の表に、今後実用化が期待される電池を一覧で示します。

エネルギー密度実用化目途
リチウムイオン電池(従来品)250 [Wh/kg]2020年(実用化済み)
全固体電池400 [Wh/kg] 以上2026-2028年頃
バイポーラ型ニッケル水素電池140 [Wh/kg]2020年(実用化済み)
LFP電池160-175 [Wh/kg]2022年(実用化済み)
ナトリウムイオン電池160 [Wh/kg]2023年ごろ
全固体ナトリウムイオン電池170 [Wh/kg]2026年ごろ
リチウム硫黄電池400Wh/kg2030年以降
全固体リチウム硫黄電池500 [Wh/kg] 以上2030年以降
フッ化物イオン電池250[Wh/kg]
1500[Wh/L]
2030年以降
リチウム空気電池1000 [Wh/kg] 以上2030年以降
全樹脂電池250 [Wh/kg]2026年以降
半固体電池360-500 [Wh/kg]2024年ごろ

これら電池について、以下で詳しく解説します。

全固体電池

全固体電池は、現在最も主流の車載電池であるリチウムイオン電池の電解質を固体にしたものです。

高いエネルギー密度の実現と、安全性の向上が期待されています。

日本の自動車大手が開発を進めており、トヨタは2026年以降、日産・ホンダは2028年以降に車載電池として実用化することを宣言しています。

バイポーラ型ニッケル水素電池

バイポーラ型のニッケル水素電池は、トヨタが既に実用化した電池です。

ニッケル水素電池という、少し時代遅れな電池の構造を大幅に変更することで、リチウムイオン電池に迫るエネルギー密度を実現したものです。

バイポーラと呼ばれる技術は、電池の構造をシンプルにすることで体積あたりに蓄えられるエネルギーを高めるもので、ニッケル水素電池に限らず、リチウムイオン電池など様々な電池に応用が可能です。

LFP電池

中国の電池メーカーCATLが開発を進めている、LFP電池は、廉価版のリチウムイオン電池です。

従来のリチウムイオン電池は、ニッケルやコバルトなどの高価な素材を使います。

LFP電池は、代わりに鉄やリン酸といったありふれた材料を使用した廉価版リチウムイオン電池で、中国で生産されるテスラモデル3などの廉価モデルへの搭載を予定しています。

テスラが中国でのEV価格競争を繰り広げられる背景には、このLFP電池を含めたコスト低下を徹底的に進めていることが挙げられます。

今後、EVを全世界で普及させていくにあたり、必ず耳にすることになる電池です。

ナトリウムイオン電池

ナトリウムイオン電池は、今後リチウム需要が増えるリスクに備え、大量に取れるナトリウムで電池つくる、というコンセプトの電池です。

リチウムイオン電池は需要が急拡大しており、原料となるリチウムが不足することが懸念されています。

リチウムの代わりとして、ナトリウムを用いた電池がナトリウムイオン電池です。リチウムイオン電池と比べ、エネルギー密度は高くありませんが、調達リスクが少なく、ニッケルやコバルトといったレアメタルを使わない点にもメリットがあります。

中国CATLなどが開発を進めており、2023年には中国のEVへの搭載を発表しています。本格的な普及は、2020年代中盤ごろからとみられています。

全固体ナトリウムイオン電池

ナトリウムイオン電池の電解質を固体にしたものが、全固体ナトリウムイオン電池です。

エネルギー密度が低いナトリウムイオン電池の改良版で、電解質を固体にすることで、高エネルギー密度、高い安全性を実現しています。

日本電気硝子が2025年の実用化を目指して開発を進めており、リチウムイオン電池よりも安価で安全な電池として、まずは定置用などで利用されると想定されています。

EV用として利用されるかどうかは、LFPや従来のリチウムイオン電池とコストを比較して決定されるものと考えられます。

リチウム硫黄電池

リチウム硫黄電池は、全固体電池に並ぶ高エネルギー密度の電池として期待されています。

リチウム硫黄電池は、エネルギー密度が400Wh/kgに達すると期待されています。これは従来のリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度で、実現すればEVに搭載する電池重量を半分に減らすことができます。

英国のOXIS Energyは、2025年頃にリチウム硫黄電池を量産化すると発表しています。しかし、開発中の課題が多く、この時点では従来のリチウムイオン電池以下の性能しか出せないと考えられます。

2030年ごろから、リチウム硫黄電池、および全固体リチウム硫黄電池の実用化が本格的に進む可能性があります。

全固体リチウム硫黄電池

リチウムイオン電池とリチウム硫黄電池は、電解質を固体にすることで全固体電池とすることが可能

全固体リチウム硫黄電池は、リチウム硫黄電池の電解質を固体にしたものです。

安全性が向上し、エネルギー密度もリチウム硫黄電池の2倍以上となることが期待されています。

全固体リチウム硫黄電池に着手している企業は多くありません。トヨタ自動車は、全固体リチウム硫黄電池の特許を複数出願しており、実用化に向けて研究を進めているものと考えられます。

実用化は2030年以降との見方が強く、10年以上先を見据えた将来技術と言えます。

フッ化物イオン電池

フッ化物イオン電池とは、トヨタ自動車と京都大学が共同で開発している電池の一種であり、リチウムイオン電池に代わる新しいバッテリー技術のひとつとして注目されています。

フッ化物イオン電池は、従来のリチウムイオン電池と比較して、より高い体積エネルギー密度を持ち、車載用途などの分野での実用化が期待されています。

リチウム空気電池

リチウム空気電池は、従来の電池の概念を覆す電池です。

正極に白金触媒と空気を用いることで駆動し、エネルギー密度は1000-2000[Wh/kg]に達するともいわれています。従来のリチウムイオン電池のエネルギー密度が150-250Wh/kgであることから、リチウム空気電池は革新電池として、実用化が期待されています。

一方で、実用化に向けた課題も多く、特に劣化が激しいとされています。実用化は2030年以降、国内ではトヨタ自動車やスズキなどが特許を出願しています。

全樹脂電池

最後に紹介するのは、全樹脂電池です。

APBというメーカーが提唱する全樹脂電池は、電極や電解質をほぼ樹脂で作ることで、安全性とエネルギー密度の向上を図っているものです。

2026年ごろから大規模での量産を宣言していますが、こちらも技術的難易度が高いようで、開発は難航しています。

半固体電池

半固体電池は、電解質にゲル状の物質を用いるもので、全固体電池よりも製造課題の早期解決を実現する電池として期待されています。

液系の電池よりも高いエネルギー密度を実現しながら、安全性も向上させることのできる電池です。

既に、中国EVメーカーのNIOや、中国CATLが電池を実用化する目途を立てており、早ければ2024年頃から車載が始まると考えられています。

一方で、高いコストが懸念されるため、EVの一部高級車種や、航空機用として利用されるのではないかと想定されます。

まとめ

今後実用化が期待される次世代電池を紹介しました。

直近で実用化が待望されるのは全固体電池で、技術者や車好きには知られている電池です。

リチウム硫黄電池とリチウム空気電池は、桁違いのエネルギー密度を実現する可能性があり、期待が高まります。いずれも2030年以降に実用化されると見込まれる技術で、まだ先は長いですが、継続して動向を注視しいたい分野です。

また、低コスト電池であるナトリウムイオン電池やLFP電池は、早々に市場投入されることが期待されます。ニュース等でその名前を聞く日も近いのではないでしょうか。

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